
往年の名作「市民ケーン」でも、主人公の心にはずっと母があった。
伝説の俳優ジェームズ・ディーンも、若くして亡くなった母を引きずり、スクリーンに想いを投影させた。
母親は偉大だ。
「ザリガニの鳴くところ」でも、主人公は出て行った母の帰りを待ち続ける。
暴力父親に耐え、他に誰も住んでない湿地帯の一軒家で暮らす。
夫の暴力に耐え切れず、気が触れたように去った母親。
全世界で1500万部を売ったディーリア・オーエンズのベストセラー小説を映画化。
面白くないわけがない。
ビッグネームのキャストは出ていないが、宣伝と口コミ効果か、ヒットしている。
湿地帯での遺体発見から始まり、容疑者となる女性、ここまでテンポ良く進む。
ちょっと前に観た「渇きと偽り」を思い出した。
こちらもベストセラー小説だし。
彼女の過去が語られていく。
過去のエピソードの積み重ねがサスペンス映画として秀逸。
物語を引っ張る孤独な主人公の魅力も、成功の大きなひとつだ。
母親が去り、兄弟も去り、父親と二人だけになった主人公の己との戦いは、誰もが共感せずにはいられないだろう。
そして、成長の手助けとなる男性との出会い。
彼女は自然と共存し、自然の中で生き抜くことを覚える。
そんな中で手を差し伸べてくれる異性と出会い、共に成長していく。
ここにもドラマがあり、感動がある。
優れた法廷劇は数多くある。
古くは「情婦」や「十二人の怒れる男」、「告発の行方」、最近では「否定と肯定」に「オフィシャル・シークレット」。
思い浮かぶのは名シーンの数々。
今回の弁護士の台詞も、間違いなくそこに加えられるだろう。
そこからはもう涙、涙。
まさかの上出来のサスペンスで、こんなに心が掴まれるとは思わなかった。
リース・ウィザースプーンを含む制作陣の大勝利だろう。
映画は彼女の人生を一気に駆け抜ける。
最後まで観逃すなかれ。
この映画の仕掛けに、清々しく騙されたまえ。
傑作!