星はなにも答えない | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


昔、自分が子供の頃に「星の子チョビン」というアニメがあった。
石森章太郎原作の冒険ファンタジーで、自分はリアルタイムで見ていた。
あれは星の王子様の話だが、映画「星の子」は本当の星の子の話ではない。


撮影当時15歳の芦田愛菜さん主演、宗教にハマってしまった両親を永瀬正敏さんと原田知世さんが演じる。
14年前に「紙屋悦子の青春」で我々を号泣させたあの二人の二度目の共演である。


奇跡の水を長年信じて宗教にどハマりしている両親が、世間から奇異の目で見られ、戸惑いながらも教師に恋をし、成長していく主人公。


大森立嗣監督はこれまでも問題作やキレッキレの衝撃作を提供してきた。
今年公開された祖父母殺害事件から着想を得た「MOTHER」や去年公開の「タロウのバカ」、「さよなら渓谷」、秋葉原殺傷事件を元に作られた「ぼっちゃん」等、他の監督が敬遠するような作品を発表してきた。


過激さこそ抑えめだが、宗教という難しい題材と大森監督は真っ向から向き合っている。
宗教によって娘が翻弄されても、この映画は決して答えを出さない。
両親は宗教に走るが、娘への愛情も深い。
何が正しいのか、答えを出すのは難しい。


子役の時から芦田愛菜さんの読解力は有名だが、この映画でももちろん彼女の演技は揺るぎない。
フランソワ・トリュフォーの「大人は判ってくれない」で主人公は海に辿り着くが、「星の子」でも主人公は海を見に行く。
ラストの星もそう。
夜空や海、大自然には、スマホにはない何かがあるのだ。