不毛地帯 (1976) 東宝 | ゆうべ見た映画

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懐かしい映画のブログです。
ときどき、「懐かしの銀幕スター」「読書」など
そして「ちょっと休憩」など 入れてます。

 

山崎豊子原作  山本薩夫監督 


山崎豊子さん原作の映画は

どれも非常に見応えがあって好きです

 テレビでも

『山河燃ゆ』『大地の子』『沈まぬ太陽』など

夢中で見ました

 

お話、完全ネタばれでご免

 

終戦後、シベリアで11年間 抑留生活を送った

元陸軍中佐の 壱岐正 (仲代達矢)は

 

昭和34年

一流総合商社である 近畿商事に入社した

 

それは 近畿商事の社長・大門一三 (山形勲)が

かつての大本営参謀としての

壱岐の作戦力・組織力を高く評価し

誘いをかけたからだった

 
今、近畿商事は FX (時期戦闘機)の買い付けをめぐって

ライバルの東京商事と

し烈な戦いを繰り広げていた

 

1機4~5億の戦闘機を 250~300機、買い付けるという

恐ろしくケタの大きい取引である

 

大門にとって 壱岐は 

この戦略にどうしても欲しい人材だった

 

壱岐は筆舌に尽くし難い、過酷な抑留生活の体験から 

二度と戦争に関わる仕事は したくないと決意し

 

防衛庁からの誘いも蹴って 近畿商事に入社したのだが

皮肉にもここで 

自衛隊の戦闘機選定を めぐる争いに巻き込まれ

また、壱岐自身も この商戦にのめり込んで行く

 

ライバル・東京商事の推す戦闘機は

グランド社製・スーパードラゴンF11

 

近畿商事の推す戦闘機は

ラッキード社製・F104という設定

 

「サンデー毎日」に 本作が連載されていた最中に

ロッキード事件が起こりましたが

映画はフィクション作品であると一応、断っています

 

やがて、社の意向で 渡米した壱岐は

ラッキード社の基地で F104を見学するが

 

そこで 

防衛庁・防衛部長の川又(丹波哲郎)と再会する

 

壱岐と川又は 陸軍士官学校からの親友だった 

 

 

終戦時、満州で川又は 壱岐に一命を救われ 
それに対し川又は 

壱岐がシベリアに抑留されていた 11年間のあいだ 
壱岐の家族の面倒を 見続けていた


さて、こうして

近畿商事の推すラッキード社 VS 東京商事のグランド社の

商戦は 

総理、副総理、大蔵、外務、通産といった
各大臣への根回しやら 

競争相手の追い落としに 壮絶なものとなっていく

 

ライバル・東京商事の

航空機部長・鮫島辰三 (田宮二郎)

 

ここいらへんは凄い

政界の大物を 味方につける為 

巨額なリベートの受け渡しや 

百万、二百万の現金や小切手が 
大臣たちのポケットに お小遣いのように渡され

 

目的のためには 手段を選ばない商社と

私利私欲に走る 政治家の姿が描かれている

 

やがて防衛庁による 

莫大な予算折衝が 最終段階に入ると

 

壱岐は 最後の手段として 

元防衛庁職員を使って 防衛庁に提出されている
ライバル・グランド社の価格見積書を盗み出させる 

という手段をとるが


この時、盗まれた見積書は 

図らずも、川又のものだった



上層部の限られた人物しか持っていない 

見積書のコピーには ナンバーが打ってあり 

誰の物か判る仕組みになっている

結果、川又は 

近畿商事へ 見積書類を流したととられ

もともとソリが合わず 衝突を繰り返していた

 

上司の貝塚官房長 (小沢栄太郎)から 解任された


その夜、川又は壱岐の家を訪れた

 

見積書の盗み出しを指示した壱岐は 

結果、自分が川又を追い詰めたことを謝罪し


川又の身の振り方など 深く心を痛めるが 

 

川又はそれには触れず 

お酒を酌み交わし、語り合い

そして、別れて行った

 


 

走り出す電車の窓から 笑顔で敬礼する川又

 

しかしこの後、川又は 

大型貨物列車に 身を投げ自殺する

 

この映画の丹波さんが もの凄く良くて

泣かされます

 


この映画には 大勢の男優さんが出演していますが

 

主だった女優さんは 三人しか出ていない
この女優さんたちが みんないいんです



壱岐の妻の八千草薫さん


大人しく従順である彼女が 

危ない仕事にのめりこんでいく夫に 激しく反論する場面



娘役の秋吉久美子さん

 

仕事にのめり込んで 変わって行く

大好きだった父親に抗議する
「私たちは二度と戦争なんかしたくない!」
「ジェット戦闘機なんて誰も欲しくないのよ!」


そして 川又の妻の藤村志保さん


後半、登場場面は少ないのですが 

非業の死を遂げた 夫の亡骸を前に

真に迫った演技です 

 

      クローバー

 

仲代さんが演じた 壱岐正のモデルは

後年の伊藤忠商事会長の 瀬島隆三さんだそうです

 

 

昭和19年 

現・京都女子大を卒業した山崎豊子さんは

毎日新聞社に入社 

 

学芸部に所属した際の 学芸部長は井上靖で

記者として特訓を受けるかたわら 小説を書き始め

 

生家の昆布問屋をモデルに 『暖簾』で作家デビュー

出版後すぐに映画・ドラマ化され

翌年は吉本興業を創業した 吉本せいをモデルに書いた

『花のれん』で直木賞受賞

 

       クローバー

 

22歳の仲代さんが 俳優座の舞台『幽霊』で

新人賞を受賞したとき 

「サンデー毎日」でのインタビューを

山崎さんがしたそうで

 

開口一番

「舞台観たわよ、へえ、あれが新人賞ねぇ」

 

仲代さんは絶句したそうですが

でも頭の片隅では 覚えてくれていたらしく

後の映画には よく推薦してくれたそうです

 

       クローバー

仲代さんは どこの映画会社とも契約を結ばず

フリーで活躍されましたが

丹波哲郎さんもフリーだったので共演作が多かった

 

(仲代達矢・談)

霊界や霊魂の話を よくしてくれて

それが非常に面白かったけど 嘘もいっぱいあって

「それ、嘘でしょ」と言うと

「あ、なんでわかった」って・・天真爛漫で大好きな人だった