超高層のあけぼの (1969) 東映 | ゆうべ見た映画

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懐かしい映画のブログです。
ときどき、「懐かしの銀幕スター」「読書」など
そして「ちょっと休憩」など 入れてます。

菊島隆三原作 工藤栄一脚本 関川秀雄監督  

こちらも何度か 観ているのですが
これは本当に 優秀な映画です。

 

昭和48年に完成した 日本ではじめての超高層
36階建て・霞が関ビル建設に 携わった人々のお話

ビル建設の様子が もの凄く丁寧に描かれてます。


撮影には 

当時、実際に建設中だった 世界貿易センタービルも使われましたが

他に、隼町や三宅坂にも 撮影用のビルを建設したそうです。 


でも映画を見ていると 

撮影の為に 霞が関ビルをもう一個 
建てているとしか 思えないくらいです。

 

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貿易センタービルの 建築現場の撮影。

合成画面じゃないですよ、下を車がびゅんびゅん走ってる。

 


お話。

大正12年・9月1日 関東大震災の際

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帝大生の古川(山本豊三)は


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崩れ落ちた、おびただしい瓦礫の中に 

堂々と君臨している 上野の五重塔を見て 

祖先の残した 耐震技術の偉大さに感動する。

 

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その構造は 柱や梁が細かく、複雑に組み合わせてあり

地震の力があちこち、いろんな方向に吸収され

それはこれからの 耐震建築に大きなヒントだった。

 

40年後
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古川(中村伸郎)は 母校の東大教授となり
耐震建築の第一人者と 言われるようになった。


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そんな折 鹿島建設会長 (佐野周二)は 

日本の増加する 都市問題の解決には 

超高層ビル以外にないと考え

 

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三井不動産社長 (松本幸四郎)の 決断を仰ぎ

そして、古川にその夢を託す。

ここからが 凄いです。
下調べだけでも 並々ならぬ苦労が 伝わって来ます。

 

電子計算機による 膨大な数字のチェック

細かい実験と 議論に議論を積み重ねる。

 

当然、パソコンの姿は 見当たりません。

 

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まず地震国である 日本において

超高層ビル建築の 文字通り屋台骨として 

 

揺れにしなやかに対応する

H型の鋼鉄を 採用することになり

姫路市の製鉄会社との交渉、依頼。


しかしこのH型鋼は 従来よりずっと 

精度の高い物を 要求される為


製鉄工場の 装置・システムまで 

改造しなくてはならず それによるコスト高の問題。

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実際に試作されるH型鋼。


試作されたH型鋼の強度、精度の実験に継ぐ実験。 
この場面も 非常に丁寧に描かれているので

実際の苦労が伝わって来ます。


こういった 苦難の末――
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晴れて 姫路の港から出航する H型鋼を積んだ大型船を
岸壁から数百人の作業員が 見送るシーンは感動します。

またその他 厚板ガラスの風圧、耐火テスト 
速度・1分300mの エレベーターのスピード実験

耐久力、安全性・・・

 

こういったところも 実に臨場感があるんです。 

 

そして、いよいよ着工。

 

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作業員たちへの こまごまとした注意、心構え

 

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工事所長 (池部良)

「何より、一人の犠牲者も出すことは許されない」

 

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建設社長 (菅井一郎)

「誇りを持て 地上147mの鉄骨を組んだトビは、まだ一人もおらんのだ」

 

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高所をすり足で歩く、命綱を必ず付ける。

 

そして、鉄骨を吊り上げる クレーンを操るのは

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テストを受けて入って来た オペレーターの島村 (田村正和)

 

元気いいです。

「どうだい俺の腕前、鉄骨がしずしずお姫様みたいに上がって行くぜ」

 

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若い正和さんの ロマンスもチラッと。

お相手は 新人の藤井まゆみさん。
 

しかし、工事が進むと 次々と難関が押し寄せる。


天候、自然の力には勝てず

雪に、強風に、雷に 悩まされ

 

特に、鉄骨組み立ての作業は 台風シーズン前までに
どうしても 終わらせなければならない。

そしてまた 終盤近くに来て
ビルのテナントが 思うように集まらず
いっそ、30階建てに変更する話まで 出て来たりもするが

 


遂に 昭和43年4月18日
三十六階建て霞が関ビルは 完成したのです。

 

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     黄色い花

 

この映画が クランクインするまでは 

監督、俳優さんの交代が相次ぎ 大変だったそうです。

監督さんの名前だけでも 深作欣二、内田吐夢、降旗康雄、

最後は工藤栄一さんが脚本にまわり

関川英雄さんに 落ち着いた。

 

また俳優さんも 

鹿島建設会長役は山村 聰→佐野周二

田村高廣→二谷英明→木村功

三橋達也→池部良・・・などなど 

まだまだ、交代劇があったそうです。

 

ハリウッド作品『トラトラトラ!』の撮影と重なったため
そちらへ移った俳優さんも多かったとか。


一部と二部に分かれている ほぼ三時間のお話ですが

夢中で見入ってしまい 長さなどまったく感じず

もの造りの素晴らしさに 感動します。

他、出演者の顔ぶれも凄い。
渡辺文雄 丹波哲郎 平幹二郎 根上淳 小林昭二 内田朝雄 
鈴木瑞穂 寺島達夫 柳永二郎 南廣 二本柳寛 新珠三千代 佐久間良子 
三宅邦子 丹阿弥谷津子 北林谷栄 伴淳三郎・・書ききれません。