黒澤明監督 モノクロ 110分
シェイクスピアの 『マクベス』を
ほとんど、そっくり
戦国時代に置き換えた お話。
面白い、面白い、
書きたいことがいっぱいで 困ったな。
さっそく、お話。
戦国時代。
蜘蛛巣城の城内では 今
北の館(きたのたち)の主・藤巻の謀反に合い
打つ手なく、籠城の覚悟を決めていた。
そこへ 早馬の使者が駆け込み
一の砦の 鷲津武時(三船敏郎)と
二の砦の 三木義明(千秋実)が 敵を破ったとの報告。
鷲津武時・わしづたけとき （三船敏郎）
三木義明 （千秋実）
喜ぶ主君・都築国春(佐々木孝丸)に 召し呼ばれ
武時と義明は 蜘蛛巣城へと馬を走らせますが
晴れた空には 雷鳴がとどろき
慣れているはずの「蜘蛛手の森」で ふたりは道に迷い
森の中で もののけの老婆に出会った。
老婆は二人に こう予言する。
もののけの老婆 （浪花千栄子）
「武時様は 今宵、北の館(きたのたち)の主になり
やがては、蜘蛛巣城の城主様」
「義明様は 今宵、二の砦の大将様。
そして、あなたのお子様は 後の蜘蛛巣城のご城主様」
この予言に
それは、夢のまた夢じゃと ふたりは大笑いするが
その夜、主君・国春が ふたりに与えた褒美は
武時を 北の館の主に
義明を 一の砦の大将に任ずるものであり
ふたりは 老婆の予言が当たったことに驚く。
しかし、これを聞いた
武時の妻・浅茅(山田五十鈴)は
もし義明が老婆の予言を 主君・国春に漏らしたら
国春は やがては蜘蛛巣城の主になるという
貴方の命を狙うでしょうと
武時に ここで謀反をそそのかす。
浅茅・あさじ （山田五十鈴）
「貴方の行く道は ただふたつ。
じっとこのまま 大殿に切られるのを待つか
大殿を殺して 蜘蛛巣城の主になるか」
数日後、折しも主君・国春が
隣国の敵を討つ為 この北の館を訪れた。
「大殿がお泊りになる、このような機会はまたと無い。
大望を抱いてこそ 男子ですぞ！」
浅茅は警護の侍たちを 眠り薬で眠らせ
妻にそそのかされた武時は この夜、国春を刺殺
国春の臣下に 主君殺しの濡れ衣を着せた。
こうして遂に武時は 蜘蛛巣城の城主となりますが
自分たちには子が無いため
長年の友・義明の嫡男を 養子に迎えることにする。
ところが、このタイミングで
妻・浅茅が懐妊を告げた為 武時は心が変わる。
しかし、あの折り この後、蜘蛛巣城の主となるのは
義明の息子だと 告げた老婆の予言を武時は恐れ
遂に義明親子を手にかけるが
息子を 取り逃がす。
義明の亡霊を見て 錯乱する武時。
そして
身籠った浅茅が 死産により発狂する場面。
大殿を殺めた夜、手に付いた血が
洗っても洗っても 取れない・・・
作品の構成、人物の動き、表情に
能の様式美を取り入れ
特に 五十鈴さんの演技は
能の形式を生かし フルショツトを多用し
全身の動作で 感情を表現したという。
主君・国春を殺める 場面の
五十鈴さんの身のこなし、所作は
笛と鼓の音に乗り まさしく能の舞台を観るようです。
義明の亡霊に悩まされ、子は死産、妻は発狂し
取り乱す武時の元に 遂に隣国の敵が
攻め込んで来る、という報が入る。
武時は 嵐の夜、森へ行き
もののけに 意見を求める。
もののけは こう予言した。
「『蜘蛛手の森』が 動かないかぎり
貴方様が 滅びることはない」
これを聞いて 森が動く筈がないと
安堵し、高笑いをする 武時でしたが
ここがまた、ほんとに素晴らしい。
本当に森が、大木を揺らして動いて来るのです。
そして 大衝撃のラストシーン。
またもや
黒澤監督のスクリプタ－だった 野上照代さんのご本から。
逃げ回る三船さんに 向かって
バシャバシャと 大量の矢が飛んでくる この場面。
特撮じゃない。
トリックは 最後の一本の矢だけ。
本当に三船さんに向けて 矢が放たれているのだ。
しかも 矢を射っているのは
那須与一でもなければ、弓矢の達人でもない。
ただの、普通の、大学の、弓道部の学生が十人ほど。
監督は飛んでくる矢が 山形になるのを嫌い
至近距離から 射ってもらったそうだ。
撮影風景
三船さんは恐怖で 眠れぬ夜が続き
アルコールの量が 倍増したといいます。
衝撃のラストシーン、お借りしました。
（終わると別の動画が 勝手に流れて、すみませんです。）