P→★ | 元祖!ジェイク鈴木回想録

元祖!ジェイク鈴木回想録

私の記憶や記録とともに〝あの頃〟にレイドバックしてみませんか?

(2022:NTV/Hulu)
 
 
 折しも1年でもっとも寒い時期。自宅の玄関を出てバス停に着いて、スマホをイジくる指先の準備運動として、一旦開いた左手の指をいっぺんに全部、くねくねくねくねと動かすと、たちまち若きダンス芸術家、P→★(ぴー)のダンス・パフォーマンスと、Da-iCEという5人組のボーイズ・ダンス&ヴォーカル・グループが唄って踊る「DREAMIN' ON」(2020)が脳内リフレインして、元気な1日が始まる・・。
 
 P→★を観たのは『YOSHIKI SUPERSTAR PROJECT X』(NTV/Hulu)という、X JAPANのYOSHIKIが主催しているオーディションTV番組だった。往く往くは世界に通用する、日本のボーイズ・ダンス&ヴォーカル・グループ&バンドをプロデュースしていくという、壮大な企画らしい。

 そこに急遽(?)参加してきた彼は、他の参加者達とはまったくの別枠で、そのためにYOSHIKIは現在の居住地のロサンゼルスから、わざわざ自家用ジェット機で来日したらしい。(ホントかよ?笑)
 普段は3〜4人居る審査員も、かつてMADONNAのバック・ダンサーを務めていたことがある、TAKAHIROというダンサー兼ダンス評論家1人だけだった。このTAKAHIROの批評が、ダンスなんぞ、とてもとても門外漢の私なんぞにも判り易く、それもこのTV番組を楽しめる魅力の1つになっている。

 P→★単独の審査は約1ヶ月の間合いが置かれて2回開催された。その1回目の課題曲が「DREAMIN' ON」で、人気TVアニメ『ONE PIECE』の主題歌だったこともあるらしい。


 生憎、Da-iCEにも『ONE PIECE』にもまったく縁がないが、同アニメ作品が子供向けの冒険活劇であることくらいは知っている。P→★は、その主題歌を自らのダンス・パフォーマンスで表現した。唄モノなので、当然、歌詞も含めて。
 ハッシュ・タグを掲げれば、元気!勇気!仲間!冒険!辺りか。まさしく週刊『ジャンプ』! 50年前から、ちっとも変わっていないな。(笑)

 約1ヶ月後に収録されていた2曲目は、自身で用意した和風の楽曲というかBGMで、〝忍者〟をイメージしたようなダンス・パフォーマンスを披露。

 TAKAHIROは思わず、顔を綻ばせていた。演技ではない。講評も「短い映画を観せて頂いたような」で始まり「ダンスは・・、グッドです!」と大絶賛!
 そこまで彼を喜ばせた参加者は、他に1人の半分もいない。

 更に彼の「自己流だけではなく、普通のダンスは出来ますか?」という注文に応えて、短いダンスを披露したところ、やっぱしP→★はP→★でしかない強烈な個性を発揮。
 YOSHIKI曰く「僕もそうなんです。何を叩いても結局、X-JAPANのYOSHIKIになっちゃう」。
 だろうな! よく知ってるよ!(笑)

 YOSHIKIが求めている才能はよく解ったが、彼もまた、そのパフォーマンスに巡り逢えた驚きや喜びを、どんな言葉で表現すればいいのか判らず、「・・・・・・・・。」で数秒間、画面を止めた挙げ句、「合格です」の唯一言のみ。そうだろう、そうだろう。まさに絶句の域。(笑)

 恐っそろしく撫で肩で、クビが異様に長い独特の体型は、まるで歌舞伎の女形。その中性的な風貌は、如何にも視聴者の大半を占める婦女子が喜びそう。本人もまた「日に依って性別が入れ替わったり・・」と語っていたが、ンな単純なキャラクターではない。むしろ、そのダイナミックなダンスには、男性的な力強さが溢れていた。
 そりゃそうだろ? 女形が女形らしく女形を演るのはアタリマエ。P→★は、女形が演っている勧進帳・・、は、褒め過ぎか。

 まあ、ダンスなんぞ至って門外漢の私が、観慣れないものをたまたま観て、必要以上に喜んでいるだけなのかも知れないが、他の参加者と較べて、その動きが恐ろしく速い。また、冒頭の指くねくねや表情の作り方等、盛り込まれている芸がやたら細かい。
 試しにDa-iCEの「DREAMIN' ON」のオリジナルPVを観てみたら、「何、こいつ等、ちんたら演ってんだ?」って感じ。もっとも、就職(:合格)を懸けて命がけで演ってるヤツと、既に仕事が保障されている連中が、その仕事の一環で演っているパフォーマンスでは、伝わってくる意気込みも気迫も違っていて当然なんだけどな。

『YOSHIKI SUPERSTAR PROJECT X』は昨年中に#12(:第12回)まで放映されていて、その配信特性から、現在もHuluで何度でも繰り返して視聴することが可能だ。
 唯、残念ながら、NTVとHuluが鉄壁の守りを堅めているため、現時点でP→★のパフォーマンスをご視聴戴くには、Huluに正式にご加入戴くか、2時間のお試し無料で#5をご選択戴くか。

 もの凄く長尺の#5では、彼もまたちょっとおもしろい、歌舞伎町のホスト上がりのカルマ(Vo.)や、ズバ抜けた才能を観せつけてくれたのも束の間、番組出演から数ヶ月後に単車事故で早世してしまったYOSHI(Vo.)が出揃う。P→★の出演は終盤15分辺りで、YOSHIの後。

※#5の部分。そのダンス・パフォーマンスがちょっとだけ観られる。

 

 ボーイズ・ダンス・グループなんぞ、門外漢以前にまったく興味がなくても、観続けていれば多少なりとも興味が湧いてくる。何しろ、それだって〝創作〟には違いないんだからな。参加者1人1人のパフォーマンスに「こいつは上手いんじゃね?」とか「こいつは落ちるんじゃね?」と、観る眼が肥えていくのも楽しかったりして。(笑)

 そうそう。この番組を何度も観ているのは、主催者でメイン審査員のYOSHIKIが比較的近い世代であることにも起因している。あんな奇抜な恰好(なり)をしていても、彼だって57歳の初老のオッサンには違いないのだ。番組中、それでも言葉を選んで丁寧に講評する度に「うん!おれもそう思う!」や「YOSHIKIならそう思うだろうな。」、或いは「YOSHIKIならそれを云っていい。」が頻繁だった。
 何だかんだ云ってもファン。ああいうヘンなやつこそ、おもしろい。

 15〜28歳の参加者達は、その実力からAチーム・・、あ、ごめん、間違えた。team A(ティーム・エーと読む。)と、team Bに分けられて合宿に入る。励まし合い助け合い、ダンスが得意な者は苦手な者に手ほどきしていく渦中、P→★の突然の合流は、それまでは指導的な立場にあった参加者の1人を大泣きさせるほど衝撃的だった。
 要するに、YOSHIKIプロデュースだけあって、同じ梶原 一騎世代を感じるスポ根ストーリー。まさに週刊『少年マガジン』! こちらもまた、60年前から変わっていなかったりして。(笑)
 
 他の出演者達同様、P→★にも楽屋に於ける短いインタビューがあった。パフォーマンス終了直後の収録だったのか、その恐っそろしい撫で肩を激しく上下させながら、息をはぁはぁぜぃぜぃさせていた。
 それだけ一生懸命に演ったのだろう。演れたのだろう。演り抜いたのだろう。その満足感なのだろう。その飛びっきりの笑顔に飛びっきり感動した。
 
 心底、世界に羽ばたいていってほしいと願う。
 
「今時の若え者(もん)は・・」と嘆く爺イは哀れなだけだが、どうやら私は若者の汗に素直に感動出来る、幸福な爺イのようで助かった。

 才能があり、工夫があり、努力家であり、人柄もいい。また何と云っても、その振付のセンスには、日本が世界に問いたい日本の美を盛り込める可能性が非常に高い。要するに視野が広い。顔もタレ目の和顔だし。(笑)
 
 唯、子供の頃にサッカーをやっていた割には肺活量が少ないようなので、世界を目指すなら、それこそミック・ジャガーやMADONNAのような厳しい基礎トレーニングが必須だろう。彼等のライヴを1公演分、踊りも含めて全部、完コピしてみろ。たぶん10,000m走るほうが圧倒的にラクな筈だ。
 ダンスはスポーツなのだ。だって小学校時代、ダンスは音楽ではなく、体育だっただろ?


※文中敬称略