「裸族」 | 元祖!ジェイク鈴木回想録

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私の記憶や記録とともに〝あの頃〟にレイドバックしてみませんか?

(2023年1月31日:幽体離脱体験)

 

 

 その16〜7歳くらいの少女を私は全く知らない。
 
 上半身裸だったのは、たぶん前夜、アフリカの少数民族(裸族)の撮影に出掛けた日本人の女性カメラマンが、自らも裸になって同民族の女性達の歓待を受けたという、TV番組からの単なるフラッシュバックなのだろう。
 制服のスカートは履いていた。最近の極端に短いやつではなく、'70年代の一般的なやつで、プリーツも入っている。
 
 場所は実家で、中学3年の夏まで私が過越していた部屋のようだが、父は他界していて、妹や弟も所帯を持ち、暮らしているのは母1人。私もそこで暮らしているのではなく、母の様子を伺いに、泊まり掛けで訪れていただけの模様・・。
 滅茶苦茶な時代考証だが、現実のその日には、確かに訪問する予定があった。
 
 少女は近所の6丁目に、私が実家を出てから創立されたという、ミッション系の高校へ通っているらしい。先程から甲高い声で自らの不幸な生い立ちや現状の不満をぺらぺらぺらぺらと間断なくまくし立てていて、かなりうるさい。鬱陶しい。
 どうでもいいけど、取り敢えず服を着ろ!
 
 とにかく、眼のやり場に困るので、彼女に背中を向けてしゃがみ込んで、手持ち無沙汰なるが故に、彼女が脱ぎ捨てた服を折り畳む。「何で俺が!?」と、かなりムカつきつつ!
 ミッション系の高校の制服は棒タイだったが、糊もアイロンも効いていなくて、ふにゃふにゃだった。ネクタイが固いとクビが痛くなりがちな私の特に会社の制服のネクタイは、わざわざ使い古してふにゃふにゃになった数本を使い廻している。折しも前日、そのふにゃふにゃの1本を洗濯交換で自宅に持ち帰るため、会社のロッカーの前で折り畳んでいた。無論、何の感慨も無く。
 
 ともあれ、そのシチュエーションは拙い。圧倒的に拙い! 母が起きてきた時の説明に困る。時刻は午前6時頃で、部屋の中も外も既に相当明るい。
 
 その恰好のまま、彼女は何の臆面もなく実家を徘徊し始める。壁には最近、めっきし見掛けなくなったグード図法の世界地図が貼ってあり、「何?このぐでぐでの地図は?」と質問してくるが、私は「いいから、服を着ろ!」の一点張りだ。
 極々一般的なメルカトル図法の世界地図だったら、南側の廊下の押入の引き戸に貼ってあった時期があった。中学ではなく小学校低学年の頃で、バングラデシュは未だ東パキスタンだった。
 
「ぐでぐでなんだど。グード図法。」等という、試験用の暗記法を伝授しようとしていたら、彼女はその横に掲げてある、タテ3mヨコ2mくらいの馬鹿デカい額縁入りの絵を見上げていて、「誰?この人?」。
『愛と誠』の早乙女邸じゃあるまいし、そんな馬鹿デカい絵を飾れる壁そのものが単なる古民家の実家なんぞに在る筈もないものの、絵はどうやら、ネロとパトラッシュがその下で死んだ、ルーベンスの『キリスト昇架』のようだった。
 
「知らないのか?ミッション系のくせに。」と、嫌味を云おうとしていたら、彼女の姿は既にその絵の下にはなく、何と!起きてきてしまっていた母と2人で、玄関のほうで何やら仲睦まじく語り合っている。私が居る場所と玄関の間には4畳半の茶の間が在って、彼女達の声は聞こえても、姿は観えない。
 
 私の足許には相変わらず、ミッション系の制服のブレザー、ブラウス、棒タイ。あと、何やらよく判らない女性?女子?女児?特有のぴらぴらした下着類が散乱している。

 なるようになれ!もう知らん!と独りで自暴自棄っていると、玄関は異様に盛り上がっている。
 そうだ!
 
 2年前に父、つまり夫を亡くして母は大変寂しがっている。少女はその不幸な生い立ちの中で、「家には居場所がない!」とか云っていた。だったら、お婆ちゃん・・、つまり母の退屈しのぎに、実家に居続けて貰ったら、どうだろう!?
 うん!我ながら、いい考えだ!
 
 現実でも実際にあった体験だ。もっとも、お婆ちゃん・・、つまり祖母の退屈しのぎに祖母宅に置いてきたのは、16〜7歳くらいの少女ではなく、0歳でオスの仔猫だったんだけどな。(笑)
 
 
 
※文中敬称略
※発端は昨今、頻繁に観掛ける、このTV-CF辺りかと、テキトーに探してみたら、何と!棒タイだ! そんなディテールまで観ていた記憶は皆無だが、人間の視覚や記憶なんぞ実に曖昧で、且ついい加減なもの。

因みに画像の白鳥 麗子・・、否、宮沢 りえは16〜7歳ではなく、14歳らしい。