(連載小説『実録!巨人学園』第4話だか5話ぐらい)
クワタ :(やたら甲高い声で)ボクにいい考えがあるヨ
クドウ委員長:何だ?クワタ、云ってみろ
きょうは放課後に行われている巨人学園野球部の投手委員会の日である
ハラ先生は生徒たちの自主的な活動に目を細めて、窓際でことの成り行きを見守っている
クワタ :要するにネ、シンノスケの機嫌を損ねることなく、
打たれないよーにすればいいんでしょ?
ウエハラ :無理ッスよ、やつがサインを出してリードしている限り・・
クワタ :(ウエハラくんのほうを向いて得意そうに)だ・か・ら・ネ、
サインを出すのはあくまでもシンノスケなんだヨー、
そーしないと機嫌損ねちゃうからネ
いちおうそれなりの実績もあり、口も達者な先輩の提案に耳を傾ける一同・・
クワタ :だからネ、そのシンノスケをボクたちがリードするの
ウエハラ :云ってることがわからないんですけど
クワタ :つまりネ、ぼおるを放る前に、ボクたちがシンノスケに、
例えば“次は内角低めのスライダーを放れ、のサインを出せ”、
っていうサインを送るんだヨ!
(一 同) :(すげー・・、さすがクワタ先輩!あたまがいい!)
翌日から巨人学園は絶好調になった
ウエハラもハヤシもマエダも皆んな、少なくてもいままでのようには打たれなくなった
シンノスケも機嫌を損ねることもなく、打撃絶好調で目下首位打者を突っ走っている
そしてその日、新戦法の発案者であるクワタ自身が先発の阪神中学戦を迎えた
クワタ :(よしっ、シンノスケ、外角低めのストレートのサインを出せ)
シンノスケ :(はあい、外角低めのストレートのサインですう)
クワタ :(よしっ)
ぴしゅ、カキーン!
“アカホシ、外角低めのストレートを打ったあーっ! 2塁を廻って3塁打ーっ!”
クワタ :(ん?あれ?おかしいナ・・ 次も左のフジモトかー、
んじゃあ、次は同じく外角低めだけどカーブにしてみようか)
シンノスケ :(あいあーい、外角低めのカーブのサインですう)
クワタ :(よしっ)
ぴしゅ、カキーン!
“フジモト、外角低めのカーブを打ったあーっ! アカホシ、ホームイン!”
クワタ :(おかしいナー・・ けど、次はシーツだナ、右だナ、
よしっ、シンノスケ、思い切って内角高めのストレートだっ)
シンノスケ :(無謀だと思いますけど、クワタさんがそう仰るなら・・
内角高めのストレートのサインですう)
クワタ :(よしっ)
ぴしゅ、カキーン!
“シーツ、内角高めのストレートを打ったあーっ! 入った!入った!ホームラン!”
ウエハラ :あれ?おかしいッスね?
ちゃんとクワタさんがサイン出してるのに・・
クドウ先輩 :たまに力がなければ、結果は同じなんじゃないの?
だれがサインを出していたとしても
ハラ先生 :(何だかんだ云っても、皆んな、やきゅうがわかってきたようだな・・
うん、よしよし)
※クドイようですけど、この小説はあくまでもフィクションであり、
実在する球団や選手、及びその実状とは一切関係ないかも知れません