Torino!2 | 元祖!ジェイク鈴木回想録

元祖!ジェイク鈴木回想録

私の記憶や記録とともに〝あの頃〟にレイドバックしてみませんか?

 
 ぼくはたぶん、17年前よりもトシをとったのかも知れない

 3月29日、1日でも長く母猫(まろん)からの授乳期間を延ばす必要性を、
保護団体のかたに薦められたため、とりのは3日遅れて我が家に到着した

 着いたその日はぼくは在宅していなくて、翌30日の朝方、
ソファにかけてあるカバーの中でうずくまっている彼女に、我が家では初めて会った
 ただ、その日もぼくは忙しく、黒い上着、黒いシャツ、黒いジーンズに着替えて、
月末恒例の銀行廻りに出掛けたのだが、うちに戻ってみると、
相変わらずうずくまっていたとりのが、みゃあみゃあ云いながら出てきた
どうやら黒いいろだけはわかるらしく、それでぼくたちは打ち解けた(ようだ) 

 17年も前のことだから、実は明確には憶えていないのだが、
茶々丸は初めてうちに来たときに、こんなに小さくはなかったような気がする
 とりのはさすがにビリっかす(4兄弟姉妹の末っ子)だけあって、
発育が芳しくなく、あとで調べたら寄生虫だの膀胱炎だのにも罹患していた
それでも、そのゴルフ・ボールぐらいの小さなあたまを撫でてやると、
生意気にも咽をごろごろごろごろ鳴らす・・ おりこうさんだ
ちなみに身体全体を丸めても、ソフトボールくらいの大きさしかないのに

 その3月30日(折しも故茶々丸の誕生日)からは緊張もほぐれたのか、
保護主様から頂いた缶詰のごはんも、うにゃうにゃうにゃうにゃ云いながらよく食べた
うにゃうにゃうにゃうにゃ云いながらめしを喰うのは、故うたえもん以来である
 めしを喰い、我が家にもすぐに慣れたのか、とりのは一気に元気になった!
いちばん心配していた、母猫を恋しがる様子もまったくなく

 ねこ1匹1匹にも明確な個性がある

 我が家にはかつて延べ13匹のねこが存在し、
13種類の個性をみてきたとずっと思っていたものの、それは全然甘かった
2匹めのうたえもんは茶々丸の夫であり、残り11匹は彼らの子どもたちである
性格が穏和な両親の子どもたち故に、イヌキチのような破天荒者もいたにはいたものの、
いまこうして、全然別の両親や出生環境を持つとりのと観較べて思い返してみると、
茶々丸の一族は一族故に、13匹に共通する性格や肉体を皆が持ち得ていた

 が、とりのは全然違う
まず、だいたい運動神経が圧倒的に上回り、動きひとつひとつがもの凄く機敏だ
さすがトリノ・オリンピックの(開会式の日に生まれた)子!イナバウアーの子!(笑)

 骨格や顔の造りも当然ながら全然違う
いちばん目立つのは腕(前脚)で、何故か腕だけが異様に発達して太く、大きく、
何かをはたく際には両手とも手の平を目一杯大きく広げる
茶々丸一族よりもはるかに、末端まで神経が発達しているようだ
 顔は鼻が前方に突き出ているため、
耳がもっと小さかったら、まるで、くまの子である(笑)
また何故か、ねこのくせにひげがほとんどナイ(笑)

 いまはリヴィングひと部屋しか、基本的には活動区域を与えていないものの、
そこにひとがだれもいなければ、まあほとんどは大人しく寝ているようである
従って、食事も運動もひとがいるときに限られている
もちろん、いつでも食べられるように、食事は常に盛ってはあるのだが・・
 ひとの生活に合わせているんか?(笑)
そう云えば、夜はぐっすりよく寝ているみたいだし・・
また、一度寝てしまうと、ちょっとやそっとじゃ起きナイ(笑)

 性格的には意志が強くて強情っ張りだ

 先日、虫下しか何かの都合で、1日食事を与えられない日があったのだが、
その日だけは食卓(座卓)によじ登ってどうしようもなかった
茶々丸たちは一度叱れば、それでしばらく(最低でも小一時間ぐらい)は済んだものの、
とりのはまったく訊く耳を持たず、同じこと(悪さ)を繰り返し繰り返し繰り返す
何しろ運動神経が活発なので、食卓から離しても、
またすぐにやって来て、さささささーっとよじ登ってしまう
 んー・・、見習いたいところではあるけど(笑)

 家に帰ってそのまま書斎に入って、それだけでは当然暮らしていけないから、
便所なり、洗面所なり、或いはお湯を沸かしにキッチンに入ったりすると、
どこやらから、みゃあみゃあみゃあみゃあ云いながら出てくる
 かと云って、何か要求しているわけでもなく、ただぼくをおもちゃにしたいのか、
或いは、何の理由もなく“ここにいろ”とでも云っているのか、
リヴィングの扉を閉めて出てくると、みゃあみゃあみゃあみゃあ後を追って鳴く
けど、5分ぐらい放っておくと、諦めて寝てしまっているようである

 って、ひと懐っこいのかと思えば、抱き上げられるのを異様に厭がる
最初に会ったときとまったく変わらず“放せよー、降ろせよー”と、
やっぱし手脚をばたばたさせて、みゃあみゃあみゃあみゃあ泣き喚く
 束縛されるのは嫌いなんだな、うん、それもわかる(笑)

 3月31日、フィンランド(かどこか北欧系の)の小学生ぐらいの3姉妹に会った
その3姉妹は英語やフランス語ではない言語で会話をしていたものの、
引率していたエスキモーみたいな風貌の中年のおばさんは、その言葉がわからないらしく、
アリスと呼んでいた長女とだけ、英語で話しをしていた
 反対に、3姉妹の中で英語が話せる(と云ってもマイケル・シェンカー・レベル)のは、
そのアリスだけだったようで、彼女は先生と妹たちの通訳を担っていた
会話の中に始終“ハナミ”という言葉があったので、どうやら花見に行くらしい(笑)

 アリスはまだ10歳ぐらいに見えたけど、人間の女の子は10歳、
つまり10年で英語(母国語以外の言葉)を喋れるようになったりもする
くろねこの女の子は10年経っても英語も日本語も喋れないものの、
せめてその少女たちのように、健やかに成長してくれることを願う
 彼女の存在で、ぼくの人生は少し変わったな

 とりのは我が家に来て、実はまだ10日くらいしか経っていないものの、
そんな実感は全くなく、既にもっと長く一緒にいるような気がしている

 こーいう出会いは貴重なんだ


※文中敬称略