雑誌・1 | 元祖!ジェイク鈴木回想録

元祖!ジェイク鈴木回想録

私の記憶や記録とともに〝あの頃〟にレイドバックしてみませんか?

 
 つい最近思い出した過去に、こんな過去がある

 当時、横須賀を出ていた伯母(母の姉)は、年に数回、
だいたいいつも泉屋のクッキーを手土産に、我が家に泊まりがけで来ていた
白地に紺色の帯が入った、四角い缶に詰め合わせられたその洋菓子は、
横須賀くんだりのくそガキにしてみれば、それはそれは大層ハイカラなお菓子だった

 母親はその空き缶のひとつの側面に、マジックで“ゆうびん”と書いて、
長い間、未使用の切手だの、ハガキだの、封筒だのの保存に再利用していた
クッキーを湿気らせない缶を、切手や封筒の保存に活用していたわけだね

 泉屋のクッキーは“我が家へ”の手土産だったが、伯母は時折、それとは別に、
“よっちゃん(ぼくの幼名)へ”のお土産を持って来てくれることもあった
それは泉屋のクッキーのように高価ではなく、基本的には不要品や廃品だったものの、
常にぼくが喜びそうなものが厳選されていた
 いま、当時の伯母以上の年齢になってみても、
離れて暮らす甥っ子へのきめ細やかな心配りは、とても真似できるものではない

 ある日、伯母は3冊の未使用の手帳を持って来てくれた

 生命保険会社が毎年、加入者に配っている類の手帳で、
表紙に箔押しされている金色の文字の年号(西暦の略)が異なっている以外は、
厚さや大きさはもちろん、デザインや装丁もほとんど変わらない3年分の手帳だった

“よっちゃんもほら、そろそろ、手帳を持って・・”などと、云われたような気もするが、
学習机の上に並べた3冊の手帳へのぼくの着眼点は、もっと別のところにあった

 即ち、その3冊の手帳は、ほとんど同じ“かたち”であること

 ちなみにその机は、幼稚園の年長時(1967年)に買い与えられ、
1988年に結婚して上野毛に移るまで使用していた、イトーキ社製の学習机である
 その机でぼくは、小泉 純一郎の後輩になるがための勉学に励み(笑)、
松任谷 由実や竹中 直人の後輩になるがためのデザインの基礎的な習練に励み、
或いは学級日誌だの班ノートだのをちょねちょねちょねちょね書きまくり、
アメリカの航空母艦やランボルギーニ・ミウラのプラモデルを組み立てたり、
『修毎ライダー』だの『侍!ウンチーズ』だの『ちるちるミチル』といった、
くだらない自作まんがを描いてみたり、「ワカノさんはどこへ行ったの?」だとか、
「あんまりだるま」といった自画自賛でしかない楽曲を書いてみたり、
ああ、そうそう、AEROSMITHの『PERMANENT VACATION』のレビューも書いた

 その机が小学校に入学する1968年ではなく、
前年の1967年に買い与えられたのはたぶん、学習机の時価を考慮した両親の知恵に依る
学習机は3月ぐらいが当然いちばんの売りどきだが、
6月くらいになれば、売れ残りが多少安く出廻る・・
翌1968年には、弟という新家族がひとり増える都合もあったことから、
前年の6月頃に買っておいてしまおう、という算段だ
 そう云えば、その1968年の冬に父親はたばこをやめている

 その学習机は当初、2畳の次の間に置かれていた
次の間と云うのは、古い日本家屋に於ける、玄関から居間や客間に至る間にある小部屋で、
それが初代“ぼくの部屋”である
 ただし、小学生時代をその薄暗い部屋で過ごした憶えはまったくないので、
伯母から手帳を頂いたのは、やはり幼稚園の年長時、即ち1967年のことと思われる
表紙の箔押し数字も確か、'65、'66、'67だったような・・

 で、同じ“かたち”の“冊子”である
しかも未使用の手帳なので、何でも好きなことを書き込める(編集できる)

 既に幼稚園の頃から、両親から、ふんだんと云っていいほど多くの本を買い与えられ、
また、父親が持ち帰って来た、勤め先の小学校の図書室の廃本なども多々あった
ただ、如何んせん子どもの本故に、それらの出版社やシリーズものの巻数はばらばらで、
全巻統一や全巻制覇の夢は、当時からの目標であり理想でもあった

 父親はぼくなんかとは較べものにならない蔵書家で、それもまた当時以前からで、
ぼくは父親の留守中に書斎に入っては、それらを眺めて楽しんでいた

“おまえ、きょう、おれの部屋にまた勝手に入っただろう?”などと、
無断入室がバレてしまうことがよくあったのは、
例えば、全6巻の書籍が1、2、3、4、5、6とちゃんと並んでいればいいものの、
そのうちの4巻と5巻が逆に並んでいたりすると、勝手に並べ直していたからである 
それは現在でも変わりなく、それが他人の部屋であれ、本屋であれ、古本屋であれ、
或いはCDショップなどでも、正しい順番に並んでいないと気持ちがわるい(笑)

 巻数がある代表的な書籍に百科事典がある
それは通常、第1巻:日本の歴史、第2巻:日本の地理、第3巻:日本の産業などと、
項目や内容に依って分巻されている
 しかし、ぼくの興味は、最初の巻を読むと次の巻もまた読みたくなるような、
続きもの・・、しかも定期的に連続して刊行されるもの、にあった

 とりあえず手元には、装丁が揃っている未使用の手帳が3冊ある・・
よし!雑誌を創ろう!


 つづく

※文中敬称略
※参考:“泉屋東京店”http://www.izumiya-tokyoten.co.jp/index-frame.html