僕が所有するギターの中でも異色の存在が、この『フレットレス・ギター』。
中学卒業時に両親に買ってもらった人生で初めてのエレキ・ギターをフレットレスに改造したもので、実際に作ったのは20代の前半頃で、フレットレスならでは…の音の輪郭がぼんやりとした民族楽器のようなサウンドを入手したいという明確な意図があって作ったのですが(実際のところは一番の理由は野呂さんに対する憧れが高じて…ですが^^;)、実は『フレットレス・ギター』という発想そのものは、高校生の頃から持っていました。
その奏法というのが、まさにここ数日に渡って書いてきた“スライド奏法”でした。
あのスコアを買ったおかげで、“スライド奏法”という演奏方法があるということを知ったものの、その演奏方法で実際に演奏しているところ…というのは当時は雑誌などで正面から写した写真でしか見たことがなく…。
『左手の指に“スライド・バー(ボトルネック)”をはめている』ことは確認できたものの、具体的にそれをどんなふうに弦に当てて演奏しているのか…?まで確認することができませんでした。(ギター教室で質問したときも、奏法の存在を教えてもらっただけで、具体的な技法まで教えてもらったわけではなかったのです)
ニュアンスをお伝えするため実際に、“スライド奏法”時の左手を写真で撮影してみると…
↑ 正面から見たらこんな感じ。ちなみに“スライド・バー”をしていない人差し指で弦に軽く触れてミュート<余分な弦振動を防ぐ)しています。
これを演奏者からの目線で撮影すると…
ただ、こんなふうに弦に軽く当てている状態だというのは、先ほどの正面から見た写真では判断できません。
ギターは指で弦をしっかり押さえ、弦がフレットにあたることで正確な音程を得ることができる楽器です。なので、当時の僕は…
↑ こんなふうに、“スライド・バー”で、弦を指板(フレット)に押し付けているのだ…と勘違いしていました(^^;)。
それゆえに「“スライド奏法”をするときって、フレット邪魔なんじゃね?ベースにはフレットレス・ベースなるものがあるらしいから(当時は実物を見たことがありませんでした)、ギターのフレットレスってのが、あってもおかしくないじゃん!むしろ、そのほうがスライド奏法するのにラクじゃん!オレ、すごいこと思いついちゃったッ!(^^)」なんて思ったのです。
ただ、当時は1本だけしかギターを持っていませんでしたし、フレットを抜く道具もなけりゃノウハウもない。それに“スライド奏法”をそこまで極める気もなかったので(だいたい今でも上手じゃないしねぇ…自慢になりませんけど)、結局作るまでは至りませんでしたが、「この偉大な発想はギター界に大きな影響を及ぼすであろう!」くらいのことを本気で思っていました(^^;)。
そんな偉大なる(?)発想が、実は僕のオリジナルじゃなかった…というのを知ったのは大学に入ってから。
入部した軽音楽部で知り合ったベーシスト(彼はフレットレス・ユーザーでした)に、「あのさぁ、オレ、フレットレス・ギターってのを思いついたんだけどね…」なんて話をしたときに、「あぁ、フレットレス・ギターならカシオペアの野呂さんが使ってるよね。独特の音でさぁ…」なんてあっさりと返答されまして。(ちなみに当時の僕はロック・ギタリストにありがちな「ギターはテクニックじゃねぇ!魂だ!」なんて思ってるヤツだったので、フュージョンというジャンルを毛嫌いしており、その代表格が実は「カシオペア」でした…^^;)
「え…!そうなんッ?」ってな感じで…思いっきり意気消沈しました(^^;)。
その後。
“スライド奏法”については、先日のブログで書いた、高校時代からの友人ギタリストが演奏を見せてくれたおかげで正しい弾き方を知りましたし、大学で知り合った友人ベーシストが「Jakeもさぁ、いろんな音楽聴きなよ。知っておいて損はないんだからさ!」なんて感じで色々紹介してくれたおかげで(ちなみに彼は高校時代からロックはもちろん、ジャンルを問わず様々な音楽を聴いていました)、カシオペアを改めてちゃんと聴く機会を得て、その音楽性に感化されるとともに、正しい(?)フレットレス・ギターの使い方を知りました。
(もう“1ネタ”行きますッ!)
☆余談
さらにその後、フレットの干渉を多少なりとも回避するために“スライド奏法”用に弦高を高めにセッティングしているギタリストも多く、高校生のときの「“スライド奏法”をするときって、フレット邪魔なんじゃね?」という感覚そのものは間違いではなかったらしい…ということを知りました。