来月11日からハワイで開催されるTPP(環太平洋連携協定)。
それに日本が参加するのか、しないのか決めなければならない。
TPP、環太平洋連携協定とは、シンガポール・チリ・ニュージーランド・ブルネイの
4か国が提唱した経済連携協定で、加盟国間の貿易で
農産物、工業製品、金融、医療サービスなど
全品目の関税を原則全面撤廃し、貿易自由化を実現しようとするものだ。
そして、これらの国の他にアメリカ、ペルー、マレーシア、ベトナム、オーストラリアが
参加することを表明し、これら9か国が
APEC(アジア太平洋経済協力会議)で交渉妥結を目指している。
それまでに日本は態度を明らかにしなくてはならない。
ところが現在
まだその決定にもめている。
民主党内でも積極派と慎重派の溝が埋まらない。
もともと昨年10月、菅前首相が
所信表明の中でTPP参加への検討を示唆していた。
そして今年6月までに交渉参加の是非を判断する方針だった。
しかし、東日本大震災や政局の混乱で十分な議論ができないまま
先月の日米首脳会談で野田首相は、早期に結論を出すことを約束した。
だから急がなければというわけだ。
そうしたなか国内の状況はどうかと言えば
TPPに参加し、加盟国(特にアメリカ)との間に関税障壁をなくしたほうがよいとする経産省。
日本がTPPに参加すれば関税障壁がなくなり安い価格で製品を輸出できるようになる。
逆にTPPに参加しないでいると、他国企業との競争で不利になるとみている。
そういった懸念を経団連をはじめ経済会は考えているようである。
しかし、TPP交渉参加に反対する意見も多い。
農業関係者や医師会まど既得権益を持つ団体
そして民主党や自民党のなかでも農水族議員の反対が強いようだ。
TPPに参加すれば日本から輸出する製品の関税が取り払われるだけでなく
日本が輸入する製品の関税もなくなる。
つまり農産物が安く入ってきて農業は壊滅的ダメージを受けるとの見方だ。
また医療関係者等、自由競争になれば所得によって医療格差が生じて
国民保険が崩壊しかねない。という理由やTPP参加によって
医師法や薬事法、商法、年金制度などさまざまな法律や制度を変える必要がでてくる。
と反対する人。その他いろんな立場から懸念される声も多い。
その他にも、TPPはアメリカの再占領政策だという見方を示す人もいる。
もしアメリカとの関税障壁をなくすのが目的であるとすれば
TPPでなく、FTAといいう選択肢がある。
FTAであれば例外品目を設けることができる。
なにもアメリカの戦略に乗ることはなかろうと主張する反対派だ。
評論家やジャーナリストのなかには、TPPを日本にメリットがあるとか
損得として考える問題ではなく、アメリカのアジア戦略の一環として捉えるべきだ。
と指摘する人もいる。
つまり、経済成長著しい中国は、2020年代はじめにはアメリカを抜いて
世界一の経済大国になるという予測もある。
さらに海軍を中心とした軍備増強を図り、周辺海域への進出をうかがっている。
だから、TPPを単なる経済の問題と捉えると大局を見誤ってしまう。
TPPは、そうした中国の動きを牽制するためのアメリカのアジア戦略の一環だからである。
アメリカの狙いは、日本を含むASEANの国々を取り込むことだ。
経済において連携を深めれば、政治的関係も強まる。
当然、安全保障の局面にも影響をおよぼす。
つまり、TPPは、経済・貿易の問題のみならず
外交・安全保障の問題でもあるという。
日本の最大の輸出国相手国は中国である。
今後も中国を中心としたアジア諸国の市場は拡大していく。
中国を含めたアジアとの交流を深めていかなければならないとき、アメリカのアジア戦略に
そのまま乗ってよいものか。
またアメリカが課してくる厳しいルールや規制を果たしてかわすことはできるのか。
アメリカのアジア戦略に関わりつつ、良好な対中関係を模索する。
これがTPPの本質的な問題であり
日本にとってもっとも大事なことであるという見解である。
本日は以上です。