日本人の距離感を表す「察する」という文化
実は呉先生ご自身も、外国留学生特有の“二年目問題”
で悩まれたそうです。例えば
韓国人は初対面でも「気が合うな」と思えば、すぐに腕を
組んだり、手をつないで歩きたがる。
また、初対面でも親しくしたいと願う相手には、自分の悩み
を簡単に打ち明けてしまう傾向がある。
すると相手の方ほうも、「あなたの悩みはたいしたことない
のよ。私も彼氏に裏切られて・・・」 と打ち明けてくれる。
いわば、悩みを共有することによって、ストレスを解消する
しくみになっているのだそうです。
これが、韓国人の人間関係における典型的なあり方。
そこで日本人ともっと仲良くなりたいと願う当時の呉氏は、
クラスで知り合った友人とトイレに行くときも、キャンパス
で歩くときも腕を組んで歩こうとするのだけれど、いつも
スーッと逃げられてしまい、「日本人はなんて冷たい人た
ちなんだ・・・」「私が韓国人だから差別されているんだ・・」
と、ずいぶん悩み、辛い思いをした経験があったそうです。
また、これも相手と親しくなろうという気持ちから、日本人
の友人相手に悩みを話そうとすると、まだ話の途中にで
あるのにもかかわらず、「分かりました」と遮られることが
多く、呉氏は「全部聞きもしないで、なにが分かったの?」
と、悲しいやら、情けないやらという気持ちになったそうです。
今でこそ私は、淡く長い関係を続けていこうとするのが、
日本人の人間関係だということが分かりましたが、日本
に来る留学生のほとんどがこの壁を乗り越えられずに、
二年目、三年目で国に帰ってしまうのですと、話される。
そして、日本人はなんておかしな民族だと、やたら周りに
吹聴してしまうのです。
だからこそ、呉氏の講義では韓国や中国からの留学生、
またほかの国からの留学生も、日本人の独特の距離感
のあり方について、ぜひ理解してほしい・・・・と。
身近な自分の問題を見つめることでしか、外交問題をは
じめとする大きな問題は解決できないと・・・。
日本人の距離感のあり方を象徴するものとして、相手
のことを「察する」という文化があります。
そもそも、日本人は聞き手の心に負担をかけまいという
思いから、気安く自分の悩みを他人に打ち明けることは
しませんが、一方で聞き手の方も「それ以上は言わなく
てもいいんですよ」と、できるだけ相手の悩みを察しよう
と努めます。
では、そもそもなぜ日本人が「察する」という文化を持つ
ようになったのか、外国人から見れば曖昧だと思われて
しまう日本人の国民性が生まれた理由を考えてみましょう。
※「歴史街道」呉 善花氏「日本文化史」講座より
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今日のボクのお昼は、大江戸かつ丼¥490
・・・・でした。