この物語はツルの祭典1・2 の続きです。

 

 


1   http://ameblo.jp/izumiutamaro/entry-11711678210.html
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西の風に導かれ、

南の雲に支えられたツルは最後の峰を越え、
その聖なる谷の上空を旋回しました。

 
 
 


広い緩やかな谷は、白銀の草むらと、雪と、氷。
そしてゆるやかな川の流れがありました。
神聖な静寂さに覆われています。
 
 
 
 


ツルたちは夕暮れのわずかな光の中で、
穏やかに羽を休めていました。
 
 
 
 


最後に到着したあのツルも、
群れの端に降り立ちます。

じきに夕闇に満たされました。
風は止まり、皆 静かに眠りに落ちます。
 
 
 


ツルの祭典は明日、日の出とともに始まるのです。
 
 
 
 
 
 
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***





翌朝、谷に一筋の金の光が届いた瞬間、
一羽のツルが踊り始めました。
他の者たちは優雅な首をぐっと上げ、
そのダンスを見つめています。





遠くから来たあのツルも、
群れの間から精一杯首を伸ばして見ておりました。






凍りついた藍色の空の透明な大気の中で、
ツルは一羽ずつ舞台に出ます。
そしてそれぞれが踊りに何かを込めていました。






耳では聞こえない音楽が、
心を通じて流れています。






凛々しいオスの大きなツルの踊りには「友情」が表現されていました。
音楽は軽快で力強く、高らかでした。
皆の心には誇らしさが満ちてゆきます。
 
 
 
 
 
 
 
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祭典は優劣や順位を決めるものではありません。





ダンサーの表現した何かが皆の心に伝わり、
世界中の、鳥という鳥たちに発信されるのです。





大きなツルの「友情」は、
瞬時に遠くの国のペリカンにも届きました。






そのペリカンは友人を亡くした悲しみにくれていました。
けれど【ツルの祭典】から送られたものを受信した時、
彼は亡き人の優しい声を聴くことができました。






≪ああ、俺は・・・・≫
そのペリカンは思いました。
 
 
 
 
 

≪今だってあいつと話せるんだ≫
 
 
 
 
 
 
そう気づくと、重かった悲しみが癒えました。
 
 
 
 
 
 
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***




谷では次々と踊りが披露されていきます。
 
 
 


太陽は遠くで弧を描き、風は興味深げに谷を見下ろし、
氷の嵐は息をひそめて遠慮しました。
 
 
 
 


カップルのツルが舞台に出ました。
彼らは「夫婦の愛情」を躍っていました。






妻のツルはしなやかに、
夫のツルはやさしげに踊っています。
 
 
 
 

翼は金色銀色の薄雪を舞い上げ、
体は時にフワリと浮いて二羽は優美に舞いました。





それはすぐに全世界の鳥族に伝わりました。




南の国の青いカワセミは、
妻のカワセミと喧嘩して家出している最中でした。
 
 
 
 

けれども【ツルの祭典】から送られてきたものを感じると、
 
 
 
 

≪俺も大人げなかったな・・・≫
ふと、イライラが消えました。




彼はこっそり帰ります。
幸い妻は留守でした。
 
 
 

≪今度の週末は家族で
どじょうレストランにでも行こうかな・・・≫ 
 
 
 
 

彼の心はほぐれていました。
 
 
 
 
 
 
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***
 
 



神聖な谷では夕暮れまでツルの踊りが続いています。





そして・・・闇が迫った時、最後に踊るのは、
西の風と南の雲に連れられてきたあのツルでした。






 
 
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