『私のお母さん』

   四谷八じ組　やまこしみき

私のお母さんはとても自由な人です。
この前の3月で84歳になり、
心臓、腎臓、糖尿と体のあちこちが悪いのに、
朝からステーキを食べてしまうくらい自由な人です。
私のお母さんは車の運転が大好きです。
私がお家に帰る時はいつも車で駅まで送り迎えしてくれました。
お母さんの車に乗る時は、まるでジェットコースターに乗ってるみたいにドキドキしました。
自由で車の運転が好きなので、自分のお誕生日前に事故を起こし、お兄ちゃんに免許証を取り上げられてしまいました。
様子を見にお家に帰った時、駅前には当然ですがお母さんの車はありません。
「あぁ、お母さんはもう私を迎えに来てくれないんだなぁ。」と思ったら、
何だか鼻の奥がつーんとなって、涙がこぼれそうになりました。
あれから2か月たち、
お母さんはお医者さんも「奇跡だ！」と言うくらい元気になりました。
元気になったので、週末は公演の稽古に集中しようと思ったら、リハビリがキツイと電話がかかってきました。
4月になって、また様子を見に行ったら、お母さんはリハビリ室で、若いかわいい男子の療法士さんに、まるでオリンピック選手の様にメンテナンスしてもらって、ニコニコ楽しそうにリハビリしていました。
「かわいい先生でしょ？」とか言っちゃって。
きっと私に自慢したかったんだと思います。
 何かイラっとしました。 

昨年の公演はお母さんが見に来てくれましたが、今年はこれません。
くやしいので一生懸命稽古して、「今年の公演は凄かったよ！」と自慢してやると思いました。
私は、お母さんは実は人間じゃなくて妖怪なんじゃないかと思います。
じゃあ、私は何なんだろうと悩んでしまいました。

おわり