ロサンゼルスの学習塾「優塾」の元塾頭のブログ

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カリフォルニア州において生徒数1位だった学習塾「優塾」の元塾頭による教育と子育てに関するコラム

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勉強できる、学力が伸びる性格(性質)ってなんだろう。

子供に勉強を教えているといつも思います。

 

いくつか挙げると、

向上心がある、

努力を厭わない、

知的好奇心が強い、

いろいろなものに興味を持つ、

負けず嫌い、

勉強に対して自信がある、

素直・・・などなど。

たくさんあると思いますが、

いくつかの性格について書いていきます。

 

まずは「向上心がある」、「努力を厭わない」。

勉強ができて当たり前ですよね。

ただ、「向上心を持ちなさい」って言っても持ってくれないし、

「努力をしなさい」って言っても、

なかなか努力してくれないから困ってるんで、

これは今回は考えないことにします。

 

「知的好奇心が強い」 

間違いなく勉強ができる子に多い性格です。

いや、性質ですかね。

だから子供をそうしたいんですが、ただ問題は、

好奇心が強いか弱いかは持って生まれた資質であり、

親や先生が「好奇心を持ちなさい」と言っても

そうなってはくれないことです。

よってこれも除外。

 

「いろいろなものに興味を持つ」

ここでは興味の対象を知的なものに限り、

スポーツや娯楽は除きます。

興味を持つというのは、

好奇心が強いと似ていますが私の感覚としては、

好奇心よりももうちょっと

後天的なニュアンスが入っているような感じです。

子育ての本なんかによく書いてありますよね。

子供がそれに興味を持つような環境においておくことが大事。

そうすると子供は自然に興味を持つようになる。

そうかもしれませんが、そうでないかもしれない。

きちんとした統計が出ているわけではないので、

どこまで正しいのか定かではありません。

 

私の母は、子供を理系に育てたかったようで、

家には「はじめてであう数学の絵本」、

「πの話」などの数学系の子供向けの本が何冊もありましたし、

パズルの本もたくさんありました。

結果、4人兄弟のうち、

3人が理系で1人が文系の道に進んだので、

もしかしたら効果があったのかもしれませんが、

ただ父親も理系ですから

その血を引いただけなのかもしれません。

 

「負けず嫌い」

これについては思い出があります。

もう何年も前のことですが、

勉強ができる何人かの子が負けず嫌いなことに気がつきました。

勉強できる子全員が負けず嫌いというわけではありませんが、

負けず嫌いな子に勉強ができない子はいないのです。

ある子は100点を取れなかったときに悔しがり、

ある子は簡単な問題を間違えてこっそりと涙を流し、

ある子ははっきりと「私、負けず嫌いなの」と言いました。

そこで考えました。

じゃあ、子供を負けず嫌いにすれば

勉強ができるようになるのではないか、と。

そして、授業中に子供たちのテストが悪かったときに

「こんな点数とって、恥ずかしくない?」と言ったり、

生徒が間違えたときに

「だめじゃん、こんな簡単なの間違えて。

自分で情けないと思わない?」と言ったり、

そのほかにも叱咤激励ではなく、

軽く貶したり嘲ったり罵倒したりして、

子供に悔しいという気持ちを持たせようとしました。

でも、それで子供を負けず嫌いにすることは

なかなかできませんでした。

 

そんなことを悩んでいたある日、

プライベートでテニスをやっている時、

とてつもなく運動神経が良く、

めちゃくちゃテニスが強い友人

(彼は20歳でテニスを始めて3年後に

インカレ ベスト4の選手に勝ったんです)

が、ぼそっと独り言

「スポーツじゃ負けず嫌いなんだけど、

なんで勉強でそうならんかったんだろ」

(彼は勉強が苦手だったそうです)と言うのを聞いて、

はっと気がつきました。

そっかぁ、実力がある人が負けず嫌いになるのであって、

負けず嫌いだから実力がつくのではないのだと。

よく考えてみれば当たり前の話で、

しょっちゅう負けているのに負けず嫌いだったら、

嫌いなことばかりが起こってストレスが溜まって大変です。

勉強ができる子はテストで悪い点数を取ることが

ほとんど無いので、

悪い点数を取ったときは悔しくなり負けず嫌いになるけれども、

しょっちゅう悪い点数を取っている子は、

それに慣れてしまって悪い点数を取っても悔しくなくなるんだと。

それが分かってからは、

子供を負けず嫌いにしようという試みは止めました。

 

「勉強に対して自信がある」

自信については以前この教育通信で書いたので

簡単に書きます。

これは負けず嫌いと同じで、

勉強ができるから自信がつくのであって、

自信がつくと勉強ができるようになるわけではないのです。

さらには、学力以上の自信がつくと

それに安心してか全然伸びなくなるので、

過度に子供を励ましたり褒めたりして

自信をつけさせるべきではありません。

むしろ、自信は学力よりもほんのちょっと低いくらいが良く、

その方が自分の今の状況に不安を覚え、

努力をするようになります。

 

「素直さ」

勉強ができる子には素直な子が多く、

そして何より素直な子は伸びます。

これは、優塾の先生全員の意見が一致しましたし、

ある日本の予備校の先生も

「これからの受験は素直な子が成功する」と言っていました。

ホンダの創業者の本田宗一郎は、本の中で

「人間素直が一番」と書いていましたし、

ある有名な経営コンサルタントも、

経営者で伸びる人の条件の一つに

「素直であること」というのを挙げていました。

子供に限らず素直な人間は成長するようですね。

素直な子とは、人の話をよく聞き、

間違ったときはそれを素直に認め、

言い訳をせず、文句などは言わず、

やれと言われたことをやる、そんな子です。

 

素直じゃない子の例をいくつか挙げると、

先生が解き方などで

「こうやった方が、いいよ」とアドバイスしても

「でも、私この方法で慣れてるから」とか、

「その方法だと・・・」と自分のやり方に固執する子や、

先生が間違いを指摘したとき

「なんで間違ってるの? 絶対合ってるよ」と、

素直に自分の間違いを認めることができない子。

あと、宿題をやってこなかった時にいろいろと言い訳する子

などがそうです。

やって来なかったときはまず、

「やってきませんでした」と言い、

その後に先生が理由を聞いたら、理由を言えば良いんです。

それをうだうだ言い訳してはだめです。

 

以上、性格について書いてきましたが、

これらの中で一番もってもらいたい性格は、

勉強に対する積極性であり、素直さです。

好奇心が強い、努力を厭わない

などももちろん重要ではありますが、

これらはある程度持って生まれた素質でもあり、

また内面から沸きあがる感情という要素もあるので、

変えようと思ってもなかなかうまくいきません。

その点、積極性や素直さは、

根本から変えることは難しいかもしれませんが、

普段の言動や態度を変えることによって

ある程度は変えることができます。

ナポレオンは「人はその制服通りの人間になる」と言ったとか。

これは、制服を着てそのように振舞っていると、

内面までもその制服に合った人格になっていくということです。

 

 

積極性に関しては、子供たち、

特に中学生以上の子供たちには、

授業は先生が教えてくれるもの、と捉えるのではなく、

分からない所があるから訊きに行く、

先生はサポートしかしてくれないもの、

と考えて積極的に授業に臨んでもらいたいのです。

格言の「天は自ら助くる者を助く」ではないですが、

どこの先生でも自分で賢くなろうと思って努力する子を

優先して助ける、のです。

 

 

素直さに関しては、間違ったときは素直に認める、

ぶつぶつ不満を言わない、言い訳をしない、

褒められたら喜ぶ、言われたことはしっかりやる、

などを継続的に行い習慣にしてしまえば、

素直になっていきます。

それに、素直になると

人が優しく接してくれるようになってくるので、

楽しくなってますます素直になっていきますよ。

 

上に挙げた本田宗一郎や

経営コンサルタントの言葉からも分かるように、

素直な性格というのは、

子供のときだけでなく大人になってからも

大いに威力を発揮する、一生の財産になります。

 

 

親の役割は、子供に一生の財産を授けるべく、

子供の日ごろの受け答えおよび行動を見守り、

言い訳などをしたら注意し、

褒めるべきときは褒め、

素直な子になるべく育てていくことだと思うのですが、

いかがでしょうか。

 

今月も2本立て+おまけです

 

オンライン里親

先日、テレビで『オンライン里親』というものを観ました。

『オンライン里親』とは、

『みらいこども財団』というところが主催している、

月に1人1万円を支援することで、

児童養護施設出身などで財政的に恵まれない子供を

大学に行かせようという運動です。

 

その里親が何人か集まり、一人の若者をサポートするのです。

3カ月に一度、

援助を受けている若者とのZoomを使った交流会も行われます。

 

実を言うと私の究極の夢は、

『大金持ちになって、

才能はあるけど財政的に恵まれない子供の

大学の学費と生活費を出す』

ことだったのです。

学費と生活費で少なく見積もって年間ざっと250万円。

4年間で1000万円ほど援助する必要があります。

10人の面倒を見たら1億円! 

でも大金持ちになれば、

きっとそれくらいチョロいものなのでしょう。

 

しかし、どう考えても今から私が大金持ちになるとは思えず、

夢は夢のまま終わるのか、と諦めていました。

そんなとき、この『オンライン里親』の運動を知り、

月にたったの1万円でいいのか、

とさっそく3月に申し込みました。

 

つい先日、だれを支援するのかも決まり、

来月くらいから支援が始まるようです。

月に1万円のお金で、一人の若者の人生が

良い方向に変わるであろうことを手助けできるなんて、

こんなに嬉しいことはありません。

今から楽しみです。

 

興味のある方は、

YouTubeで「オンライン里親」で検索してみてください。

 

 

 

優塾特製『現地校のテスト対策Tシャツ』新発売

何年も前から「こんなのあったらいいのに」

と考えているTシャツがあります。

それは、数学の公式が主にひらがなやカタカナで書いてある

Tシャツです。

 

例えば、

 

台形の面積は

台形のめんせきは、(上たす下)かける たかさ わる2。

 

円の面積は

円のめんせきは、はんけい かける はんけい かける さん.いちよん。

 

三平方の定理は

「あ」の2乗たす「い」の2乗は「う(しゃへん)」の2乗。

 

解の公式は

xは マイナスビー プラマイルート

(びー2乗マイナス4エーシー)わる2エー。

 

三角関数の角の和の公式 sin(A+B)=sinAcosB+cosAsinBは

サイン(愛たす恋)は サイン愛コサイン恋 たす

サイン恋コサイン愛。

 

こんな感じで、公式や覚えておくべきことが主に日本語で、

Tシャツに上下逆に書いてあり、

テスト中にそれを見て確認できるというすばらしいものです。

 

日本語で書いてあるので、

現地校の先生や日本人以外のクラスメイトには

何が書いてあるのかわかりません。

背中側にも書いてあり、

前後のリバーシブルでサイズはXXLですので、

テスト中に脱ぐことなく前後をひっくり返すこともできます。

 

そして数学だけではなく他の教科のものもあります。

化学なら化学式や定数が、

物理なら物理の公式が書いてあり、

テストごとにTシャツを着替えるのです。

 

いかがです? 

ロサンゼルス・エリアでは日本人が多すぎて、

噂になってしまうかもしれないので

そんなTシャツ着れないでしょうが、

日本人が学校にほとんどいないテキサスだったら、

十分に有効かと思います。

先生に何が書いてあるのか聞かれたら、

「お経です。仏教では…」と適当に説明しておけば、

宗教に関しては、制限することがタブーなアメリカのこと、

まったく問題なくスルーされるでしょう。

 

素晴らしいTシャツだと思うのですが、ほしい子いますか?

 

 

 

どうでもいい話

どうでもいい話を2つばかりご紹介します。

 

私の手料理

私井沢は、

まったくと言っていいほど料理をしたことがありません。

リンゴの皮を剥いたことがないくらいです。

 

数年前の話ですが、妻が料理しているところに、

「なんか手伝うことある?」と聞いたら、

「じゃあ、この大根の皮剥いてくれる?」と言われて、

「え? 大根に皮ってあるの?」とびっくりしました。

 

だって、スイカやリンゴのように

皮がはっきり違う色をしているならまだしも、

大根の皮ってまったく同じ色なんですもん。

ちなみに、その時に知ったのですが、

ニンジンにも皮があるそうです。

ご参考に。

 

 

そんな私が、男子高校生の生徒の一人と張り合って、

お互いに何か料理をしようということになりました。

その生徒は、マイ・出刃を持っているほど料理が得意なんです。

 

私はナポリタンを作ることに決め、

いくつものYouTubeを観て研究し、

作り方もほぼわかりました。

そして妻に言いました。

「じゃあ、この材料買ってきてくれる?」

そうしたら妻は、

「はぁ? 買うことから料理は始まってるのよ!」

 

そうなんだ。

知らなかった。

だってYouTubeでは、

材料がすべてそろったところから始まってるんですもん。

 

 

次は、ずいぶん昔に私が聞いたジョークです。

 

「姑」

娘と息子が立て続けに結婚した夫人に、

知り合いが聞きました。

「娘さんのご結婚おめでとうございます。

お婿さんはどんな方なんですか」

 

その夫人は、目をキラキラさせて、

「それはそれは素晴らしい青年で、

娘に苦労はさせないと、

朝は遅くまで寝かしてくれて、

掃除もプロを雇って家に来てもらって、

しょっちゅう外食して、

娘にはいつまでも美しくいてほしいってことで、

フィットネスジムに通わせてもらって、

美容院にも毎週行かせてくれているのよ」

 

 

それを聞いた知り合いはさらに聞きました。

「それは素晴らしい方ですね。

そう言えば息子さんもご結婚おめでとうございます。

お嫁さんはどんな方なんですか」

 

その夫人は、途端に顔をしかめて、

ため息をつきながら、

「それがもう最悪の嫁で、

朝は遅くまで寝てるし、

掃除もろくすっぽやらなくて、

料理もしないからしょっちゅう外食して、

フィットネスジムに入り浸って、

美容院にも毎週のように行ってるのよ」

ロシアによるウクライナ軍事侵攻

自分が生きている間に、

まさかこんな大規模な戦争が始まってしまうとは、本当に驚きです。

こんな暴挙が許されていいのでしょうか。

ロシアが国連常任理事国5か国の1国ということで、

何もできない国連の存在意義が大いに疑問です。

だいたい常任理事国っていったいなんなんでしょうね。

先の大戦の戦勝国ってことでしょうが、

常任理事国だけ「拒否権」とかいう特権を与えられ、

どんなに世界中の国が糾弾しても拒否権を行使して、

ないことにできる制度っておかしくないですかね。

その常任理事国には独裁国家が2か国もあり、

それが牛耳っている国連って

本当に世界平和のために役立っているのか、

と思わずにいられません。

 

中東やアフリカとかの内乱や紛争で

彼らが使っている武器、機関銃やミサイル、地雷なんかは

どこの国製だよ。

中東やアフリカの国々が作ったのか? 

違うだろうが。

どこかの先進国だろうに。

ちなみに、世界の武器輸出総額の80%が

常任理事国5か国によるものだそうです。

 

すみません、熱くなってしまいました。

ウクライナに話を戻します。

 

侵攻される前の美しい街並みが

めちゃくちゃに破壊されている映像を見ると、

戦争の悲惨さを実感させられます。

ちょっと前まで普通に生活していた人たちが、

わずかな荷物を持って国から脱出しなきゃいけなかったり、

避難所で不便な生活を余儀なくされていたり。

まったく変わらない生活を送っている自分に

罪悪感さえ覚えてしまいます。

 

亡くなった人たちのニュースにはやりきれない気持ちになります。

なかでも子供たちが亡くなったニュースを見るたびに、

その子たちにもいろいろな可能性があったのに

それが突如終わってしまったのかと思うと、

そして親の心情を考えると胸を締め付けれる思いで、

本当に涙が出ます。

 

何か自分にできないか、空いている部屋に

避難民の1家族くらい受け入れたいのですが、

いかんせんそんなわけにもいかず、

寄付くらいしかできることがないので、悶々(もんもん)としています。

 

この戦争は将来教科書に載るでしょう。

中高生諸君はこの戦争をしっかりと記憶し、

後世に伝えてほしいと思います。

私井沢がこの教育通信を書くようになってから、

今までにもいろいろな歴史の教科書に載った、

載るであろう世界的な災害・事件が起きてきました。

 

ぱっと思いつくものだけを書いても、

阪神大震災(1995年)

同時多発テロ(2001年)

東日本大震災(2011年)

新型コロナ流行(2019年~現在)があります。

阪神大震災や東日本大震災は、

もしかしたら親御さんに当事者だった方が

いらっしゃるかもしれませんね。

 

月並みな言葉ですが、一刻も早くこの戦争が終わり、

ウクライナに平和が訪れ、

復興に向かってくれることを心からお祈りします。

 

 

お母さん大好き

コロナが流行る前、3年ほど前までは、

私は毎年夏に2~3週間ほど日本の児童養護施設に

勉強を教えるボランティアをしに行っていました。

 

児童養護施設は昔で言う孤児院ですが、

今では孤児はほとんどおらず

大抵の子が親からの虐待、

もしくは親の育児放棄(ネグレクト)による親からの隔離のための

入所だそうです。

 

そんな子供たちに共通して言えることがあります。

それがちょっと信じられないのですが、

その子供たちは親を大好きだということです。

ですから、子供に親の悪口「ひどいねぇ」などは

絶対に言ってはいけないそうです。

なかには虐待を受けたことがトラウマになり、

今でも夜中に目を覚ます子もいるのに、

それでも親を好きだというのです。

 

虐待を受ければ受けるほど、

親に放置されればされるほど、子供は

「良い子にしていたらお父さん(お母さん)は、

きっと僕(私)を愛してくれるはず」と考え、

もっと親を好きになろうとするとのことです。

その子の心情を考えると泣けてきます。

 

 

翻(ひるがえ)って普通の家庭に育っている子を見ると、

親を好きだという子はそれほど多くなく、

なかには親のことを鬱陶(うっとう)しいと思っている子さえいます。

半年ほど前、ある高校生の生徒が

「あ~、親、まじ殺してぇ」なんて物騒なことを言っていたので、

物騒なアドバイスをしておきました。

「殺したい」は冗談でしょうが、

高校生の男の子で親をうざいと思っている子は多いようです。

 

一方は親に虐待されたり放置されたり

金づるとして利用されたりしているのに親のことが好きで、

もう一方は愛情たっぷりに育てられているのに

親をうざいと思っている。

「親の心子知らず」とは、よく言ったもんだなぁと思った次第です。

 

もののありがたみは

無くなって初めてわかるとも言います。

親のありがたみを子供に分からせるために、

お母さん、プチ家出をしてもいいかもしれませんよ。

 

 

おまけ

あまりに暗い話ばかりで気が滅入ってきたので、ま

ったく関係ないですが、

最近のニュースで明るくなったことを書きます。

 

それは、大リーグ・オープン戦の大谷翔平選手の活躍です。

去年もコロナ禍で、日本やアメリカで暗いニュースが多いなか、

大谷選手の活躍(だけ?)が明るいニュースでした。

私などは大谷選手の顔だらけTシャツがほしいがあまり、

ロス郊外のアナハイム・スタジアムまで大谷の試合を観に行きました。

より多くもらうため、

2人しかいないのにシートを4つ予約して、

しっかり4つゲットしました。

イエィ! (^^)v

 

その大谷選手が今年も活躍してくれそうです。

楽しみですね。

優塾の保護者で、IRS(日本でいう税務局)に勤めている方が

いらっしゃいます。

その方に聞いた話です。

 

その方のチームと言うか、

税務署の職員が大金持ちの所に査察に入ることもあるのですが、

そのお金持ちは査察に入っている職員よりも

払っている税金が少ないことが多々あるそうです。

そのIRSの方は、

お金持ちの人たちのことをこんな感じにおっしゃっていました。

「あの人たちって、みんなすごく勉強してるんですよー」と。

その勉強が税金を合法的に払わないためなのか、

自分でやっているビジネスのためなのか、

そこまでは聞きませんでしたが(まあ両方でしょうね)、

勉強の大切さを実感した次第です。

 

お金の話ばっかりって? 

でも、勉強をする目的が、

理論的な思考を身につけるためとか、

視野を広げるためとか、

創造力を養うためとか、

人間として成長するためとか、

そんな美しいことを言っても、

子供には理解できないんです。

頭で分かっても「なるほど!」とはならないのです。

 

それに福沢諭吉も

「ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、

無学なる者は下人となり貧人となるなり」

と書いていますし。

 

 

この際ですのでお金がらみでもっと書きます。

勉強をする身も蓋(ふた)も無い超現実的な、

そしておそらく一番の理由は、

高学歴を取得するかレベルの高い大学に行って、

より多くお金を稼ぐためでしょう。

 

以下はあるサイトに出ていた、

アメリカにおける最終学歴と平均年収の関係を表したものです。

(サイトによって若干の違いはあります)

 

学歴                       平均年収

No High School Graduate         $30,784

High School Graduate              $38,792

Some College but not Degree    $43,318

Associate Degree                  $46,124

Bachelor Degree                      $64,896

Master Degree                     $77,844

Professional Degree              $96,772

Doctorate Degree                 $97,916

 

これを見ると明らかなように、少なくともアメリカにおいては

収入が最終学歴によって大きく異なるようです。

正直言って、ここまで露骨な数字は

あまり子供に見せたくはありません。

しかし、努力をしなければ得るものも少なくなる、

とは教えたいのです。

やりたくないことでも、嫌なことでも我慢してやって、

努力をしろとは言いたいのです。

 

最終学歴や卒業大学で

その人の価値が決まるわけではありませんが、

しかしレベルの高い大学を出たということは、

それだけでもその人が人生のある期間、

なんらかの努力したことの証拠にはなります。

現に優塾の生徒を見ていると、

アメリカの大学に進学する生徒で

カリフォルニアではUCLA以上、テキサスではUT Austinなどの

いわゆる上位校を目指している生徒は

例外なく努力していて、

就寝時間が毎日午前2時という子もざらにいます。

大学に提出する書類のためとは言え、

夏休み中ずっとボランティアをしていた子もいました。

 

ただし断っておきますが、

だからみんな大学に行くべきだと言いたいわけではありません。

自分のやりたいことがはっきりしているのなら、

それが大学には関係ないのなら

その道を進むのが一番良いでしょう。

 

無理をして大学に行って、

将来本当に使うかどうか分からない学問を勉強するよりも、

自分のやりたいもっと実践的な学問を勉強した方が良いのです。

 

十年以上前の生徒に高校卒業後、

音楽のミキシングの専門学校に行き、

今ではその分野で活躍している子がいます。

美容(髪をカットするほう)が大好きで、

高校時代に毛の生えたマネキンの頭みたいなのをいくつも買って、

しょっちゅう髪を切る練習していた子も、美容学校に進みました。

余談ですが、カットの練習をしていくと

マネキン頭の髪がどんどん短くなるので

だんだんショートカットの練習になっていくそうです。

 

高校を卒業してすぐに働くのもいいでしょう。

私の知り合いに高校を卒業した後、レストランで働き、

今では東京に何軒もレストランを持ち成功している人もいます。

そう言えば、先月宇宙に行ったZOZOタウンの創業者 

前澤友作氏の最終学歴は高卒ですね。

でも、将来やりたいことが分からない人は、

とりあえず大学に行っておいても損はないでしょう。

じゃないと、将来の可能性を狭めることにもなりかねません。

大学を卒業していないと就けない仕事もありますし。

ちなみに、大学卒業じゃないと優塾の先生にはなれません。

 

 

学問を薦めるのはお金のためだけなのか。

いえいえ。

それだけではありません。

見栄もあります。

やはり有名大学を出たらそれなりの見栄を張れます。

それは親にとっても同じです。

昔の優塾の女子生徒で東大に入った子の親御さんが、

その当時、東大合格者の名前が週刊誌に載っていたのですが、

その子の名前の載っている週刊誌を何十冊も買った

という話を聞いたことがあります。

 

東大の入学式は、

親や家族の出席率が他の大学のそれに比べて格段に高く、

新入生の数よりも多いそうです。

私も東大だったら親として参加したいなと思います。

叶いませんでしたが。

 

余談を一つ。

その東大に通っている女の子が言っていましたが、

合コンで東大だということが相手に知れると、

男の子の会話がいきなり「今の金融政策じゃ…」、

などと時事問題になるのだそうです。

東大というブランドは相手にまで見栄を張らせてしまうようです。

 

と言うわけで、『学問のすすめ 優塾版』の学問を勧める理由は、

「お金」と「見栄」のためでした。

福沢諭吉の『学問のすすめ』をご存知でしょうか。

かの有名な「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」

で始まる書物です。

正直に申し上げると、私は今まで読んだことがありませんでした。

あの冒頭の文で、

「あー、『人はみな平等』っていう、よくある思想のやつね」

と勝手に思っていたんです。

しかし最近、あの本を読む機会がありまして、

あの本に『学問のすすめ』というタイトルがついている意味が

ようやく分かったんです。

あの有名な冒頭の文の続きにはこう書いてありました。

(ところどころ飛ばし、一部現代語に直しています)

 

生まれながら貴賎(きせん)上下の差別なし。

されども今、広くこの人間世界を見渡すに、

賢き人あり、愚かなる人あり、

貧しきもあり、富めるもあり、

貴人もあり、下人もありて、

その有様雲と泥との相違あるは何ぞや。

その次第はなはだ明らかなり。

『実語教』に、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。

されば賢人と愚人との別は、

学ぶと学ばざるとによって出来るものなり。

また世の中に難しき仕事もあり、易き仕事もあり。

その難しき仕事をするものを身分重き人と名づけ、

易き仕事をする者を身分軽き人という。

すべて頭を用い、心配りする仕事は難しくして、

手足を用いる力役(りきえき)は易し。

ゆえに医者、学者、大なる商売をする町人(現代の企業家か)などは、

身分重くして貴き者と言うべし。

されば前にも云える通り、

人は生れながらにして貴賤貧富の別なし。

ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、

無学なる者は貧人となり下人となるなり。

 

なるほど! だから、『学問のすすめ』ってタイトルだったんだ! 

と初めて知りました。

何十年もずっと、

この本は人の平等を説いている本だと思っていました。

もっと早く、子供のときにこの本を読んでたら、

勉強をやる気になった…かもしれないのに。

 

『学問のすすめ』を知らなかった私は、

子供のときに勉強をやる意味が分からず、勉強が大嫌いで、

学校に行きたくなくて風邪を引くように

わざと布団をかけずに寝たこともありました。

(おかげで丈夫になりました)

 風邪を引こうもんならもう大喜びで、頭が痛いのを我慢して、

寝てるなんてもったいない、

さらには「風邪よ長引け!」とばかりに、

起き出して漫画読んだりゲームやったりして遊んでいました。

ついでに言うと、学校では授業もろくすっぽ聴かず、

自分の字が汚すぎてどうせ後で読み返さないからと、

中学以上大学卒業まで、

ノートというものを取った記憶もありません。

字の汚さは折り紙つきで、

高校のときに友達に出した年賀状を友達のお父さんが見て、

そのお父さんが「お前、ずいぶん小さい子に知り合いがいるんだなぁ」

って言ったとか。

 

えっと、なんの話でしたっけ。

そうそう、『学問のすすめ』です。

だから子供のときにこそ、この『学問のすすめ』を読ませて、

勉強する意義を子供に教えるべきなのです。

 

ただこの本はこの後で、

「学問とは、唯むずかしき字を知り、解し難き古文を読み、

和歌を楽しみ、詩を作るなど、世上に実のなき文学を云うにあらず」

などと、実用性の無い学問では意味が無いと書いています。

申し訳ないのですが、それには賛成しかねます。

確かに、今の子供たちがやっている勉強、

国語の「主人公の気持ちを答えなさい」といった問題や、

短歌や俳句を詠むことは実用性はありませんし、

理科で習う二酸化マンガンにオキシドールを加えると酸素ができる、

などは知っていても何の役にも立ちません。

百人一首を暗記することは、

他人に知識をひけらかすときに役に立つという点では

まだ意味があるかもしれませんが、

三角形の合同証明に至っては、

彼女に「ほら、この三角形とこの三角形は合同なんだよ」

なんて説明しても惹かれるどころか引かれるだけで、

なんの役にも立ちません。

 

証明問題をやることにより理論的思考を養う、

という意見もよく聞きますが、

その勉強をしていなかった江戸時代以前の先人が

理論的思考ができていなかったわけではないので、

説得力はありません。

ましてや虚数や三角関数などの高等数学は、

仕事で使う人は100人に一人もいないでしょう。

以前、元優塾の生徒で東大で原子力の研究をしている子が

こちらに遊びに来たとき、「ねえ、虚数って使う?」と訊いたら、

「ええ。原子の×××を計算するときに使ったりしますよ」

と言っていました。

(×××は、よく分からない難しい言葉を言っていました。)

 

これをお読みの方で、もしも高校数学の内容、

虚数、数列、行列、対数、三角関数、微分・積分などを

仕事で使っている、という方らいらっしゃいましたら、

お教えくださいますか。

 

つまり、今の子供たちが勉強している内容は、

ほとんどが将来使わない、実用性のないものばかりです。

しかし、これに関しては先月のこの教育通信で書いたように、

一見将来役に立たないような勉強も、

その勉強をするという行為自体に実用性は十分にあるのです。

 

勉強が嫌いな子供(たいていそうですが)に、授業中に

「勉強嫌い? そっかぁ。先生も子供のころ、

勉強が大っ嫌いだったからなぁ」と言うことがあります。

すると生徒は必ずこう訊いてきます。

「勉強が嫌いなのに、どうして先生になったの?」

 それに対してはこう答えています。

 

「勉強ってさ、国語や算数や英語だけが勉強じゃないんだよ。

塾の先生じゃなくても、

普通の会社に入っても勉強ってしなきゃいけないんだよ。

例えば、会社で昇進するときにテストがあるかもしれないだろ。

そしたらそのテスト勉強しなきゃいけないし、

会計士とかなんかの資格を取るときにも勉強しなきゃいけないし、

英会話だってもちろん勉強だし、

コンピューターの技術者になったら、

どんどん新しい技術が出てくるだろうし、

弁護士になったら法律も毎年変わるから、

いつも勉強してなきゃいけないんだよ。

どんな仕事を選んでも、結局は勉強なんだって。

そんでもって勉強をたくさんしなきゃいけない仕事ほど、

なるのが大変で、だからもらえるお金は多いし、

社会的な地位も高いんだよ。

例えばお医者さんになるには相当勉強しなきゃいけないし、

なってからもずっと勉強だよ。

だから普通の人よりもお金がもらえるし、

人からは尊敬されるんだよ。

それに同じ仕事でもさ、例えば会計士になったとしても、

なってから一生懸命勉強して、

いろいろな知識を持っていてお客さんに法律や税金について

アドバイスできる人と、

お客さんからもらった数字をそのままただコンピューターに入れて

税金を計算する人と、

どっちの方が成功するか分かるだろう。

だから勉強って子供の時だけじゃないんだ。

仕事に就くために勉強、

就いてからも勉強、

大人になってもずっと勉強、

死ぬまで勉強なんだって」

 

たいていの子はこれで納得してくれます。

しかし、「そっかぁ、勉強って大事だね。僕も頑張ろ!」

とはならずに、

「ふーん」って感じになるだけですが。

 

来月に続く

先日、「戦力外通告(クビ)を宣告された男達」という番組を観た。

日本のプロ野球で戦力外通告を受けた選手は、

最後の望みの綱である12球団合同の入団テスト

「トライアウト」を受けるんだけど、

そのうちの数人に密着取材した番組なんだ。

オリンピック代表にも選ばれたことがある有名な選手がいたり、

ほとんど1軍で活躍したことのない無名な選手がいたり、

私生活では彼らを支える奥さんがいて子供もいたり、

新婚ほやほやだったりと、壮絶なドラマばかりだった。

イチローや大谷翔平が活躍する華やかな世界の裏で、

こんなにももがき苦しんでいる選手たちがいるのかと、

プロスポーツの厳しさを見せつけられた。

 

考えてみれば当たり前で、

プロのスポーツの世界で活躍できる選手なんて、ごく一部だもんね。

野球なんか、日本で一番のピッチャーやバッターでも、

プロになって2、3年で消える選手がいる世界だし、

普通に考えたら、毎年10人の新人が球団に入ってくるってことは

10人がクビになるってことだから、

スポーツで食べていくのってほんとに大変だよ。

 

以前優塾にも、リトルリーグでホームラン記録を塗り替えて、

野球で有名な州立ロングビーチ大に

スカウトされて入った子がいたけど、

大学に入ってみんなのレベルの高さに

1年で野球を止めちゃった子がいた。

 

サッカーでカリフォルニアでベスト11に選ばれて

ワシントン大学に推薦で入った子とか、

テニスでは高校で全米で3位の子になった子とか、

フロリダ州で2位になった子とか、

ゴルフでカリフォルニア州で一桁のランキング持ってた子とか、

いろいろいたけど結局みんなプロにはなれなかったなぁ。

そう言えば、小学生でバタフライ全米1位だった子は、

今どうしてるんだろう。

 

厳しいのはスポーツだけじゃないよ。

日本に帰ってラップ歌手目指していた子はどうなったかなぁ。

身長177cmで日本人離れしたスタイルの素晴らしい女の子で

モデルを目指してた子もいたけど、

一回ファッション誌には載って、

テレビでも一回見たことあるけど、その後は聞かないなぁ。

俳優目指した子は今まで優塾にはいないけど、

僕は学生時代にドラマ「ふぞろいの林檎(りんご)たち」で

中井貴一や時任三郎と共演したけど、俳優になれなかったしなぁ。

え? そのときの役? 

タイミングを見計らって画面右から左へ歩いていくという難しい役で、

英語で言うとエキストラって言うんですが、なにか?

放映された日の番組終了後、実家の親に

「僕が映ってるところ見た?」って電話したら

「どこにいたのよ」とか言われちゃって、

10年くらい前にこっちのビデオ屋でDVDでシリーズを見つけたから、

全巻借りてきて3回もくり返し観たけど、

DVDではカットしやがったのかどこにも映ってなくて、がっかり。

 

このように、華やかな世界であればあるほど、

その陰では挫折した人たちが多くいるんだよね。

どんなに努力しても報われないことの方が多いし、

肩とかを痛めて選手生命が終わっちゃうかもしれないし。

「クビを宣告された」の番組でも、小学生のときから野球一筋で、

すごくたくさん努力してきたのに、

ケガをしてから成績不振になって28歳でクビを宣告されて、

結婚して1年で子供もまだ幼いから仕事を見つけなきゃいけないのに、

でもそれまで野球しかやってこなかったから

何をするのかまったく分からずって途方に暮れてた人がいたな。

 

一方の勉強だけど、

「今まで勉強しかしてこなかったから…」

って言葉は聞いたことがないんだ。

つまり、勉強しかしてこなかったから仕事がなにもできない、

ってことがないんだ。

なんでかって言うと、勉強ってすべての仕事の基本になってるんだよ。

たしかに、今やっている勉強の内容は将来まず使わない。

お母さんが分数の計算してるの見たことないよね? 

方程式解いてるの、見たことないでしょ?

 

でも勉強すること、

つまり本を読む、

資料を調べる、

メモを取る、

記憶する、

問題を解く、

解答を書く、

要点をまとめる、

わかりやすく書く、

レポートを書く、

宿題をする、

期日を守ってプロジェクトを提出する、

発表する、

じっと座って集中する、

好きなことを我慢する、

好きじゃないことを我慢してする…。

これらのことは、将来どんな仕事に就こうとも、

絶対に必要なことなんだよね。

 

スポーツや芸術では10努力したことが大人になってから、

イチローや大坂なおみみたいに

とてつもなく才能があれば100くらいになって返ってくるけど、

そこそこの才能だと20努力しても0や1になっちゃうこともあるんだ。

 

でも勉強は10努力すれば、才能に関係なく誰でも

大人になったときに20にも30にもなって返ってくるんだ。

それが今月のタイトル「勉強は裏切らない」の意味なんだよ。

そう、勉強は裏切らないんだ。

やったらやっただけ、いや、それ以上にちゃんと返ってくるんだ。

みんなは、机に向かって単語を覚えたり、

計算をしたり、読みたくもない本を読んだりしながら、

毎日「チャリン、チャリン」って貯金してるんだよ。

それが大人になった時に

貯金したよりももっとたくさんになって返ってくるんだ。

 

だから今は、「将来これ何かの役に立つの? 将来使うの?」

なんてことは考えないで、

お父さん、お母さんや先生が言うとおりに、

勉強して、たくさん貯金すればいいんだよ。

そうしたら、大人になった時にそれが何倍にもなって返ってくるから。

それが「勉強は裏切らない」ってことなんだ。

 

先日、高校まで優塾に通っていた元生徒、

木村和香ちゃん(仮名)が、

就職が決まったと報告がてら遊びに来てくれました。

和香は5歳でアメリカに来て、高校時代には日本語よりも英語が強く、

日本語で話していてもいつのまにか英語になることもありました。

大学は同志社の国際教養学科に行きましたが、

アメリカで働きたいということで、

数年前にボストン・キャリア・フォーラムで就職活動をしたのです。

ボストン・キャリア・フォーラムとは、バイリンガルの学生を求めて

日米の企業が出展する就職活動の場です。

企業は200社以上、参加する学生は4000-5000人。

おそらく世界最大のバイリンガル学生のための就職イベントでしょう。

 

そのフォーラムでは会社説明や面接などがあり、

日本での2次面接へと進んだり、うまくいけば内定が決まったりします。

3日間のイベント期間に和香は、

いくつもの会社から日本の面接を経ることなく

その場で内定をもらいました。

その中の一つ、みなさんも名前を知っているような

一部上場会社では、専務に大変気に入られ、

直々に「内定! うちで働きなさい」と言われたそうで、

そこの社員が「専務が内定を出したのを初めてみた」

と驚いていたとか。

和香は結局そこを蹴り、ある有名な日本のIT会社を選びました。

 

一方で、何社受けても内定がもらえない子もいたそうで、

最終日ともなるとトイレで泣いている女の子が

たくさんいたとのことです。

和香は、そんな落ち込んでいる1人の学生に、

「楽しんだらいいじゃない、緊張しすぎだよ」とアドバイスし、

後でその子に

「和香ちゃんの言う通りしたら、内定もらえた! ありがとう」

と感謝されたそうです。

和香はよほど楽しんだようで、

「来年も学生装って面接だけ行きたい!」

と言っていたそうです。(親御さん談)

 

フォーラムには大阪大学やUCバークレイなどの

有名な大学の学生が何人もいましたが、

ほとんどの学生が面接官に、

「では次は日本で面接を受けてください」

と日本での2次面接を言い渡されたそうです。

なぜそれほど優秀というわけでもない和香(失礼!)だけが

その場で何社からも内定をもらったのでしょう。

和香の良さを一言で言うと屈託のないところです。

礼儀正しい優等生タイプではまったくなく、

なんか今一礼儀がなってないけど憎めないな、という子です。

そう、ローラがため口を利いても許されるみたいな感じですかね。

この教育通信の下書きを確認のために和香に送ったら、

「ボストンでは礼儀正しくしたよ!!」と、

礼儀のなってない返事が来ました。

 

優塾に通っていた時も、

私とテストの点数で賭けをして

私が負けて眉毛をマジックで太くする罰ゲームをされた時、

彼女は「あ、右が太くなっちゃった。あ、今度は左が」

などと言いながら調子に乗って

私の眉毛を星飛馬ばりの極太にしていました。

 

和香の話を聞いて、

帰国子女受け入れ校の面接を担当している方に以前聞いた、

印象に残っている受験生についての話を思い出しました。

その受験生の女の子は、「こんちは~」と面接室に入ってきて

ドカッと座ったと思ったら脚を組み、

戸惑う面接官の「お名前をどうぞ」の質問に、

にこっとしながら「まりな。おじさんは?」と聞いてきたそうです。

度肝を抜かれた面接官は自分の名前を言いながら

「あー、人と人の出会いというのは、一方通行ではなく、

こうでなければいけないのか」と、思ったそうです。

いやいや、面接は出会いの場ではないから

一方通行で良いんじゃないですか、思ったんですが、

その面接は面接官にそう思わせてしまったその子の完全勝利でした。

ただ、その子も計算してやったわけではなく、

それが自然に出たのでしょう。

 

これは礼儀を重んじる中で育ってきた日本の子ではできません。

ですので、優塾で面接の練習をする時も、

礼儀作法をしっかり教えるようにしています。

 

アメリカ生まれ育ちの子たちと接していると、

日本人にはない良さを実感します。

日本人の子にももちろんアメリカ人にはない良さがあります。

日本人の子と比べてのアメリカ人の子の良いところを簡単に言うと、

年上にも物怖じしない、

自分の意見をはっきり言う、細かいことを気にしないところでしょうか。

 

一方でアメリカ人と比べての日本人の子の良いところは、

礼儀正しさ、その場の空気を読む、

細かいことを気にするところでしょうか。

これら一方の国民の良いところは、

他方の国民にとっての短所でもあります。

日本人は自分の意見をはっきり言わない、

細かいことまで気にする、

アメリカ人は礼儀という言葉さえない、

空気は読まない、などなど。

アメリカ人と日本人の良いところは、

ほとんど対極にあるように思えます。

 

以前、こんなことがありました。

あるアメリカ生まれの子が、Mathで初めてDを取ってしまったと、

焦って優塾に来ました。

案の定、全然わかっていなくて最初の1か月は週に2回来てもらい、

徹底的に指導しました。

 

2か月後のテストで、

その子が私に「Sensei, I got an A!」、

私「おー、すごいね。おめでとう」と言い、

続く定番の会話、

「先生のおかげです」、

「そんなことないよ。がんばったもんね」を想定していたら、

次に出てきたその子の言葉は

「Yeah, you should be proud of me.」。

そう来るのか! 

いいねぇ、この気にしなさ。と、感動しました。

 

日本人は、目上の人・年上の人に対して

礼儀正しいことを美徳としていますが、

私はそれが気の遣い過ぎにつながり、

果ては実力を十分に出せないことにつながっているような

気がするのです。

 

だから日本人の期待されている選手がオリンピックで

思ったような成績が出せないことが多いのではないか、

とまで考えてしまいます。

私の知り合いのプロのテニス・コーチが、

フロリダにある有名なテニス・アカデミーで研修を受けた時、

アメリカ人のジュニアがコーチと激しく言い争っているのを見て、

羨ましく思ったと言っていましたが、

私もその気持ちがわかります。

日本人の目上の人に対する態度は素晴らしいと思いますが、

一方で、目上の人にも平気で自分の感情をぶつけるアメリカ人の

姿勢も頼もしく思うのです。

ただ、なんでもぶつければいいというわけではなく、

最低限の礼儀はあったほうが良いでしょう。

最悪なのは、日本人メンタリティの子が

無理してアメリカ人の真似をして、

目上に対して礼儀のなっていないただの失礼なやつになることです。

 

きっと、アメリカ人と日本人の良いところを両方兼ねそろえていたら、

最高の人格が出来上がるのでしょう。

すなわち、礼儀正しいけど目上の人にも必要以上には気を遣わず、

空気を読んで控える時は控えるけど自分の意見をはっきり言い、

気を遣うべきところは気を遣うけど細かいことは気にしない。

そんな子に躾けや教育で育てることってできるんですかね。

難しいかなぁ。

 

すみません、建設的な意見が書けなくて。和香が来て、

以前から思っていたアメリカと日本の子の良いところを再認識し、

書きたくなりました。

先月、ノーベル賞受賞者が発表され、

日本(現在はアメリカ国籍ですが)からは

眞鍋叔郎さんが物理学賞を受賞しました。

 

1969年から始めた気象に関する研究が

今回のノーベル賞受賞の決め手になったとのことです。

なんでも40年間で研究費用として150億円を使ったとか。

気の遠くなるような期間と費用ですね。

 

2014年にノーベル賞を受賞した中村修二教授は

青色発光ダイオードの開発に10年以上の歳月をかけたそうです。

彼らのようにノーベル賞を受賞する方たちの研究・開発期間をみると、

10年20年は珍しくもありません。

その間にはきっと何万回もの失敗や試行錯誤があったことでしょう。

 

あの掃除機で有名なダイソンも、

社長が最初の紙パックレスの掃除機を作ってから

商品として世に出すまでに、

実に5127台もの試作機を作ったそうです。

途中にはお金が足りなくなって破産寸前までいったというのですから、

その根性には感嘆しますが、

試作機を毎回数えていたその執念もすごいですね。

ここまで来ると、失敗を楽しんでいたんじゃないかとさえ思えます。

 

今世界中で累計10億本以上売られている

擦ると消せる(フリクション)ボールペンは、

高温になると消えるインクが発見されてから、

それを商品として実用的にするまでに

30年近くの開発期間を要したそうです。

30年というと、新入社員で入ってすぐに研究を開始したとしても

成功したときは50歳以上です。

きっと企業にはこんな話がたくさんあるのでしょうね。

 

そう言えば、以前『プロジェクトx』という番組がありました。

あの番組で紹介された人で、

失敗を経験していない人はいませんでした。

番組のほとんどの時間、お金が尽きたり、人に騙されたり、

火事に遭ったりという失敗ばかりを紹介していました。

最後に大逆転で成功し、流れてくる中島みゆきの

エンディング・テーマに涙を流したお父さんも多いと思います。

 

その点、優塾は新しいクラスやイベントの構想を練るのはざっと30分。

実際やってみてちょっとダメだとわかると、さっさと止めてしまいます。

今までいくつもの企画がそうやって終わってきたので

大失敗はありませんが、それゆえにか大成功もありません。

「もっと失敗して『プロジェクトx』に出るぞー」

と思ってたら番組が先に終わってしまいました。

 

私の知り合いに、早くから成功していたのに26歳の時に

自分の会社で火事を起こし、

なんと6億8000万円もの借金を背負った人がいます。

しかし彼はそこから見事に復活し、

今はまた億万長者になっています。

彼も本当に諦めない精神の持ち主でした。

そんな彼の言葉を紹介します。

「私は人にものを頼んで、断られたことがないんです。

1回断られても諦めないから。

『100回断られたら諦めよう』と決めていますが、

今まで最高に断られたのが74回でした」。

 

これらの成功した人たちに共通して言えることは、

普通の人なら完全に諦めるような失敗でも諦めずに

チャレンジしているところです。

それを何回も何回も繰り返し、最後には成功を勝ち取っているのです。

 

やはり、物事を為すためには

それが研究であってもビジネスであっても、

失敗しても決して諦めず、

一つのことに集中して長い間取り組む必要があるのでしょう。

この人生においてもっとも大切な要素の一つ、

失敗しても諦めない気持ち、我慢強さ、忍耐力を養うには、

どうすればいいのでしょう。

 

 

その精神を養うのに最適なのが、勉強だと思うのです。

勉強は地味でつまらないことが多いです。

スポーツの練習、例えば野球の素振りや

サッカーのリフティングの練習などは地味であまり面白くありませんが、

それでも椅子に座って漢字を何回も書く、

英単語を覚える、計算をひたすらやるのに比べたら

はるかに派手でかっこよくて楽しそうです。

 

YouTubeに、リフティングの練習のビデオはあるでしょうが、

漢字の勉強をひたすらやっているビデオはありません。

(と思って調べたらあるじゃん…)

こんな失敗にめげてはいけません。

気を取り直して続きです。

 

誰だって何時間も椅子に座り、漢字を書いたり

計算したりすることなんか楽しくありません。

誰だって遊びたいです。

しかしその楽しくない勉強をすることによって

我慢強さが身につくのです。

 

そうやって一生懸命頑張って努力したのに、

報われないことが多いのも勉強です。

必死に努力してもテストで良い点数を取れなかったり、

合格できなかったりなんてことは日常茶飯事です。

その時です、人間の真価が発揮されるのは。

失敗して落ち込んで、

もうだめだと投げやりになるなんてのは最悪で、

失敗した時こそチャンスです。

それを肥やしにしてステップアップしていけばいいのです。

そうしたらそれは失敗じゃなくなり、

次に進むためのきっかけになります。

 

ゴルフの有名な名言で

「勝った試合からは何も得ないが、

負けた試合からは多くのものを得る」

がありますが、的を射ていると思います。

ただし、努力をしないで失敗するのは、

失敗ですらありません。

ただの怠慢です。

それでは何も得るものはありません。

 

ところで、勉強の対極にあるのがゲームです。

勉強やスポーツ、

音楽ならある程度のレベルに達するのに何年もかかるのに、

ゲームだったらどんなに難しいものでも、

1日1時間もやれば達人になるのに1年もかからないでしょう。

簡単なゲームでは3ヶ月もあれば十分です。

しかも、失敗してもリセットを押せばまた最初からできます。

我慢強さ、諦めない精神を養う上で

ゲームは百害あって一利なしです。

ゲームはやはり、やるにしてもほどほどにしましょう。

 

 

最後に、断られても諦めない関連で、

私の大学時代の友人の話を書きます。

その彼は大学4年生のとき

必修科目のファイナルで失敗してしまったため、

このままでは卒業できず留年してしまうと焦りました。

そこで、そのテストの結果が発表される前に、

高価なワインを持って教授の所に押しかけ、

「機械工学科4年の山田と言います。

この前のテストなんですが、なんとか合格にしてください。

これ、つまらないものですがお受け取りください」

とワインを差し出しました。

教授は、「なんだ君は! こんなもの受け取れるわけないだろ!」、

「そこをなんとか」、

「だめだ! 帰りたまえ!」、

「そこを…」と何回かの押し問答の末、

ワインを無理やり置いて逃げるように部屋を出たそうです。

結果、そのワインが決め手になったのかどうかはわかりませんが、

ぎりぎりのDで合格し大学を無事4年で卒業しました。

その不屈の精神で、いま彼は外資系の会社の

アジア地区総括の社長として活躍しています。

 

私はその不屈の精神がなかったため

大学を5年で卒業し

(まあ私の場合、ワインが10本くらい必要だったんですが)、

現在日本から遠く離れた地方の私塾の先生として奮闘しています。

 

ワイン1本でこの差。

我慢強さ、諦めない精神がいかに大切か

お分かりになったと思います。

 

以上、失敗しても諦めない精神を養うためには

勉強が最適だという話でした。

私は、アメリカに来て最初の3か月間、

UC Davisの英語学校に通いました。

その間、農業で大成功された日系アメリカ人の家に

ホームステイしました。

家には何台ものトラクター、自家用セスナ、

そしてガソリンスタンドまであり、

庭は広くゴルフの打ちっぱなしができるほどでした。

 

ご主人のヒロは相撲が大好きで、

夜放送していた大相撲のダイジェスト番組は欠かさず観ていました。

その番組の電波を受信するためだけに、

高さ3メートルの自作の塔にアンテナをつけていました。

私が勉強していても番組が始まると、

「おーい、真吾君、相撲が始まるよ。一緒に観ないかね」

といつも誘ってきました。

彼の家族は誰も相撲に興味がなかったので、

私だけが相撲について語り合える相手だったのです。

 

「千代の富士は、なんだね。

体がこまいのに6尺半300貫(かん)の大男をなぎ倒してすごいね」

とフィートを尺に、ポンドを貫にそのまま変換し、

感心しきりに話していました。

 

ヒロは若かりしころ、

日系人相撲トーナメントで優勝したこともあるほど相撲が強いのです。

白人にもよく相撲を挑んでは打ち負かし、

「映画に出てくる日本人はいつも情けない役ばかりだが、

日本人は本当は強いんだ。わかったか」

と言っていたそうです。

彼は国籍ではアメリカ人でしたが、

大和魂を持ち日本人であることに誇りを持った人でした。

 

ヒロと一度、討論になったことがあります。

テレビで日本のニュースを見ていると、

そこに当時の社会党の党首の土井たか子が映りました。

そのときヒロは

「この女、日本の悪口ばかり言って、引っ込んでろと言いたくなるよね」

と憤った口調で言いました。

その頃は左寄りで社会党、共産党支持者だった私は、

「そんなこと言っても日本が過去に悪いことをしたんだから

しょうがないでしょう」。

「日本がどんな悪いことをした!」。

そこからは、激しい言い争い。

最後には「君がそんな考えだとは知らなかった。

もう泊めたくなくなるよね」とまで言われてしまいました。

奥さんのジュンの「宗教と政治の話はしないの」

という一言で、その場は何とか収まりました。

 

あれから何年もアメリカに住み、

自分なりに知識と経験を積んだ今となっては、

ヒロの言っていたことが正しかったと理解できます。

あの時のこと思い出すたびにヒロに申し訳なく思い、

謝れなかったことに胸が痛みます。

 

ジュンはいたって陽気な人で、人を呼ぶのが大好き。

私の滞在中もしょっちゅうパーティーを開いていました。

お付き合いが広かったので、30人以上集まることもありましたが、

料理はすべてご自分で作っていました。

ボウリングが趣味で、

私にも初日にボウリングボールとシューズを買ってくれました。

 

 

そんな2人の歩んできた道は、

小説や映画に出てくる日系人の歴史そのものでした。

太平洋戦争が始まると、

2人はアメリカ生まれのアメリカ人であったにもかかわらず、

日系人ということで、強制収容所に入れられました。

 

ある日、アメリカ政府は収容所にいた日系人全員に、

「忠誠登録」と題した質問状を配りました。

その中に、日系人の間で答えが分かれた2つの質問がありました。

 

No.27 アメリカ軍兵士として従軍する意思があるか。

No.28 アメリカ合衆国に無条件に忠誠を誓い、

日本の天皇への忠誠を否認するか。

 

この2つの質問に「イエス」と答えた人は、

収容所から出ることができました。

しかし、「ノー」と答えた人たちは「ノーノー組」と呼ばれ、

危険分子ということで、カリフォルニア州の北のほうにある、

より過酷な環境のツールレイク収容所に送られました。

2人が出会ったのはその収容所でした。

 

 

戦争が終わり、収容所から出た2人はすぐに結婚。

当時の日系人のもっとも一般的な仕事、農業を始めました。

収容所に入れられる時に、ほとんどの財産を手放していたため、

土地など持っているわけもなく、地主から土地を借りての出発でした。

いわゆる小作農です。

あるとき、別の小作人と話しているとき、

土地の借り賃が自分たちだけ高いことに気づきました。

それを地主のところに

「なぜ私たちだけ借り賃が高いのか」と抗議しに行ったところ、

「お前たちがジャップだからだ。嫌なら出ていけ」と言われたそうです。

 

黄色人種というだけで差別される時代に、ましてや日本は敗戦国。

日系人に対する差別は日常茶飯事だったのです。

日系人だというだけで差別された2人は、

「自分の土地を持たなければだめだ。これからは土地を買っていこう」

と決心し、それからはちょっとでもお金が貯まると、

どんどん土地やビルなどの不動産を買っていきました。

ビジネスが順調に伸び、

彼のもとには投資をしてほしいと何人もが訪ねてきたそうです。

 

そのなかの一つを紹介します。

ある日、映画の脚本を持って

「これで映画を作りたいから投資してくれ」という人が訪ねてきました。

脚本を読んだ彼は、

「こんなの当たるわけがない」と思い、断ったそうです。

しかし、しばらくするとその映画、大ヒットしているではありませんか。

映画のタイトルは『カラテ・キッド』でした。

 

農家の組合の会長などもこなし、

レーガンの大統領選挙では多額の寄付をしたとのことで、

家には彼とのツー・ショットの写真が飾ってありました。

 

 

ヒロは10年ほど前に亡くなったのですが、遺産が主なもので、

 

・ビジネス・ビルが3つ

・大型ショッピング・モールが1つ

・土地が3800エーカー

 

3800エーカーと聞いても、ピンとこないですよね。

LAディズニーランドが300エーカーだそうです。

つまり、ディズニーランドのおよそ13倍の土地ということになります。

家にセスナがある理由が分かります。

車では回り切れないのですから。

 

その成功に関してジュンが言っていた心に残っている話があります。

白人は私たちがお金がない時は

いろいろなことですごく助けてくれた。

でも、逆転しちゃうと途端に冷たくなっちゃうのよね」。

まあ、アメリカ人じゃなくても、日本人にもありそうな話ですね。

 

ヒロが言った忘れられない言葉もいくつかあります。

「そうか。君はアメリカでがんばるのかね。

それはすばらしいことだ。

ところで、君は

『男子、志を立て郷関を出ず。

学もしならずんば死すとも帰らず』

という言葉を知っているかね」

 

「いいかね。

ここアメリカでは、白人が悪いことをしたら、

アメリカ人はそいつのことを悪く言う。

スティーブがやったら『スティーブは悪いやつだ』、

マイケルがやったら『マイケルは悪いやつだ』と。

でも、日系人が何か悪いことをしたら、

たとえそいつの名前がマイケルでも、

『日本人は悪いやつだ』ってことになるんだよ」

 

「差別されるのは当たり前なんだよ。

成功するには、白人の倍働かなければだめだ」

 

成功している人が語る言葉には重みがありました。

私は今でもヒロの言葉を思い出し、自分を省みる時があります。

 

ヒロの話を勉強に置き換えると、

 

「Aをとるまで帰ってくるな」

 

「お前ができれば『さすが日本人は頭が良い』って言われるんだ。

お前がバカだと日本人全員がバカだと思われるんだ。

日本人が尊敬されるかバカにされるかは、お前にかかっているんだ」

 

「学校の先生がアメリカ人をひいきする? 

ひいきされても関係ないくらい良い点とればいいじゃないか。

2倍勉強しろ」

 

こんな感じでしょうか

 

 

移民が努力されたのは、アメリカだけではありません。

私のブラジリアン柔術のブラジル人の先生が

「ブラジルで貧乏なジャパニーズを見たことがない」

と言ってくれたときは、胸が熱くなりました。

その先生は日本人を過剰評価しているところがあり、

ある日私に

「シンゴ、日本人の子供を養子にしたいんだけど、どうすればいい」。

理由を聞くと、

「日本人なら格闘技ができるから、柔術の世界チャンピオンにしたい」、

「いやいや、センセイ、

僕みたいに格闘技のセンスがないのもいるけど」、

「ノー・プロブレム。だったら頭が良いからサイエンティストにする」。

ブラジルの移民の皆さんはよほど優秀なようです。

 

 

昔、移民はあらゆる面で差別に遭遇してきました。

しかし彼らはその差別というハンディを補ってあまりある努力をして、

成功、評価を得るに至ったのです。

私たちが今、ほとんど差別されることもなく、

日常生活をなんの支障もなく過ごせるのは、

こうした先人の努力があってこそなのです。

 

先人に感謝し、

遺してくれたものをしっかり受け継いで次世代に渡していくのが、

私たちの役目だと思うのです。

日本の児童養護施設の子たちと接していると、

その明るさに驚かされます。

とても親に育児を放棄されたり、

虐待を受けたりなどの不幸な経験をしてきたとは思えません。

 

もちろん、私の授業に来るのは希望者だけですので、

勉強をまったくやる気のない子や、

心に深く傷を負った子は来ません。

ですから、施設のすべての子を見たわけではありませんが、

少なくとも私の授業に来た子たちは、

明るく元気で賑やかで楽しそうで、

でもちょっとうるさくてわがままで時に言うことを聞かない、

それは優塾の子たちとまったく変わらない、

普通の子供たちでした。

 

その施設『Cの家』の子供たちと優塾の子供たちでは、

親の愛情の注がれ方、

恵まれ度で言うと対極にあると言っても過言ではないだろうに、

でも結局同じように育つんだ。

親の役割って何なんだろう、

と考えさせられ、

同時にことわざ「親は無くとも子は育つ」を思い出しました。

 

知能的にも同じで、地頭の良さ、飲み込みの早さや、

私の説明に対する理解力、子供によって差はあるものの、

施設の子たちと優塾の子たちで違いはありませんでした。

 

ただ以前も書いた通り、

学力に関してははっきりした違いがありました。

小3ではたいていの子が、そして小5、小6にも

九九をすらすら言えない子がいました。

九九を言えないと、その後のわり算や複数桁のかけ算、

通分約分などは完全にお手上げです。

今回何人に九九を唱えさせたか。

ただ、九九を唱えるというこの単調な作業は、

子供にとっては面白くありません。

何人かの子供はそれが嫌でか、来なくなってしまいました。

そりゃそうですよね。

自分の学年の勉強ができるって思って来たら、

基本中の基本の九九をやらされるんですから。

例えれば、美容クリニックに行ったら、

「あなたは毎日1キロランニングしなさい」

と言われるようなものです。

この時つくづく、

「やっぱり勉強とダイエットって似てるなぁ。

どれだけ辛抱するかだよなぁ」と思いました。

 

こんなところで、親の役割ははっきりと出てきます。

子供にとってやりたくないことや嫌なことでも、

やらなければいけないことをやらせるのが、

親の役割だと思うのです。

 

おそらく、施設にいる子は親に「勉強しなさい」

と言われたことがないでしょう。

施設の人も子供たちに勉強を無理強いはできません。

ですから、勉強が嫌いな子はまったく家庭学習をしません。

そして、学校で先生の言うことが分からず、

学校がつまらなくなり、不登校になってしまう。

実際、その施設の子たちの中には、

中学生に不登校の子が何人もいるとのことでした。

 

親は無くとも子は育つが、

ほとんどの子供にとって

面倒で嫌いな、できればやりたくない勉強に関しては、

親がいつも近くにいて優しく見守り、厳しく監視して、

口で言って多少無理やりにでもやらせないと、

学力は伸びないんだと強く思いました。

 

 

あまり真面目な話ばかりではなんですので、施設の子から聞いた楽しい話を書きます。

 

もう一つの施設『K学園』でのことです。

 

最初の授業の時、中3の女の子、佳代(仮名)ちゃんは

「人権についての作文」という、

いかにも日本の先生が書かせそうな題材の宿題をもってきたので、「『人権は大切だと思う』

などのありきたりの意見じゃつまらないから、

世界には人権という考えさえないところがたくさんある。

人権って必要か、って意見で書いたら?」

とアドバイスしたら、「面白そう」と乗ってくれました。

 

その子に

「世界には、お風呂に入れないところなんかもざらにあって」

みたいなことを言ったら、

その子が「1週間お風呂入らなくても大丈夫」。

子供らしい強がりだなと思って軽く流し、

その後も「ろくに食べ物もない地域もたくさんあって」という話に、

「ヘビ、食べたことある」、

「カエルのお尻の穴から空気を入れて破裂させると面白い」など、

とても中3の女の子とは思えないことを言うのです。

 

本当は施設の子にこんなこと聞いちゃいけないんですが、

興味本位で「佳代、ここに来る前はどこにいたの?」と聞くと、

「八丈島」。

「あ~、そうなんだ。そんな遠くから。八丈島ってどんなところなの?」、「八丈島の海はすごくきれいで、

それに比べて伊豆や湘南の海は汚くて入ることができない」、

「へー、そうなんだ」、

「家出して、1か月くらい山に潜んで生活したこともあるの」

から始まり、その子の言うことが驚きの連続でした。

話を要約するとこんな感じです。

 

 

家出した時は、木の洞(うろ)を見つけて、

地面をきれいにして葉っぱを敷いてそこに寝ていた。

お風呂代りに川で体を洗っていた。

 

カエルはよく食べた。

捕まえるとき手でつかむのが気持ち悪いから葉っぱでつかんで

(手でつかむのが気持ち悪いものを食べるなよ…)、

ごみ捨て場で拾った鍋で茹でて食べた。

最初は皮を取らないで食べたらおいしくなかったから、

次からは皮を剥いで食べたら鶏肉みたいでおいしかった。

オタマジャクシはかわいそうだから食べなかったけど、

卵は結構食べた。

(その基準がわからん)

 

ヘビは、二股になってる木の枝で首根っこを押さえて

ナイフで首を切り落とし、

ナイフでうろこを取って輪切りにして

木にさして、火であぶって食べた。

でも、うろこが取り切れなくて、

それが喉に引っかかったりして困った。

 

いろいろな虫を食べた。

アリは酸っぱい。

一度ミミズを鍋で焼いて食べたら、カリカリになっちゃて、

全然おいしくなかった。

 

釣りはよくした。

魚は好きじゃないから食べなかったけど

(いや、ヘビやアリよりはおいしいと思うけど)、

良い魚が釣れると売りに行ってた。

キタマクラやゴンズイを釣ったときは売れないから、放した。

 

キタマクラなんて不吉な名前の魚がいるのか、

と思ってあとでグーグルで調べると、

「毒を持っている魚で、食べると死ぬこともあることから、

キタマクラという名前になった」とのこと。

ひぇぇぇ~。

 

最後は警察に捕まり、1か月の逃亡(?)生活も終わり。

私「マジで? 1か月も山で寝て、危険はなかったの?」、

「山で危ないと思ったことはなかった。

家のほうが危険だった。

お姉ちゃんがヒステリーおこすと包丁でぶっ刺すから、

ゆっくり寝てることができなかった」。

さらに、ひぇぇぇ~。

 

結局、初日の授業2時間のうち1時間くらいは

その子の話で終わってしまいました。

あまりの面白さに、

「このこと、アメリカで発表していい?」と聞くと、

快諾してくれたのでここに書いています。

ちなみに、彼女は何回か家出をしたことがあり、

家出には秋が一番いいそうです。

なんでも食べ物が豊富にあるとか。

そう言えば、そろそろ秋。

 

というわけで、

この秋に優塾の新イベント

『サバイバル・イン・マウンテン』

を考えました。

参加者には事前にナイフ1本、鍋1つが渡され、

食べ物や寝るところは自分で調達です。

私井沢が責任を持って山の中まで連れて行きリリース、

5日後にピックアップします。

 

さあ、君もこのイベントに参加して、

サバイバルの術を身につけよう!