刈谷日劇のスクリーン1で10時上映開始の『おとぎ話みたい』を見終えると、そのまま隣のスクリーン2へ移動。こちらの2本立て企画は「山下敦弘監督  過去作特集」である。10年前の2005年公開の『リンダ リンダ リンダ』と、2007年公開の『松ヶ根乱射事件』の2本立てはいずれもスクリーン未見ですから、実にありがたいフィルム上映であります。

ここ最近、映画見に復活した私は山下監督の作品では『マイ・バック・ページ』(2011年)と『もらとりあむタマ子』(2013年)の2本しか劇場鑑賞をしていません。『もらとりあむタマ子』で軽い失望感を味わっていますので、それ以降の山下監督作品は見ていません。『味園ユニバース』も今のところ未見です。刈谷日劇スクリーン2(2本立て800円)。

 

作品の舞台は、とある地方都市の男女共学の芝崎高校。高校生活最後の文化祭に向けて、オリジナル曲の練習を重ねて来た軽音楽部のガールズ・バンドの5人組。本番まであと3日と迫った日、ギターの萠(湯川潮音)が指の骨折で離脱し、ボーカルの凛子(三村恭代)もメンバー間の喧嘩で抜けてしまう。困り果てる残されたメンバー3人。

しかし、高校最後のステージを諦めないメンバー、ドラムの響子(前田亜季)、キーボードの恵(香椎由宇)、ベースの望(関根史織)の3人。たまたま通りかかった韓国からの留学生ソン(ペ・ドゥナ)の適当な返事(?)のお陰で、彼女をボーカルに迎えることになり、ステージではオリジナル曲ではなくTHE  BLUE  HEARTSのコピーを演ることに決める。

 

早速にキーボードの恵はギターの練習、ボーカルのソンも“ひとりカラオケ”でボーカルの練習に励む。文化祭3日目のステージ本番までに限られた時間しかない。メンバー4人が揃って練習をするために、恵の元カレが手配してくれたスタジオや、深夜の学校に忍び込み猛練習を行う4人組。恋愛話なども交え、次第に4人の絆も深まっていく。

そして文化祭3日目の本番当日、スタジオで最後の練習をしていた4人は、連日の疲れがピークに達し“爆睡”してしまう。目覚めて学校に急ぐ4人だが、彼女たちの出演時間には完全に間に合わない。時間稼ぎをしてくれる友人たちのお陰で、ギリギリ持ち時間内にステージへ。その頃には急変した雨模様で、体育館には多くの“聴衆”が…。

 

地方の高校のガールズ・バンドの奮闘を描いていますが、さわやかな感動作かというと、そんな感じではない。クライマックスのTHE  BLUE  HEARTSの「リンダ リンダ リンダ」を歌うシーンなどは、最初から“聴衆”が盛り上がっていて、映画を見ている“観客”側の心を揺さぶろうという意図の演出とは思えません(少なくとも私は感動はしませんでした)。

そもそも4人の女子高生が揃って“爆睡”してしまい、ステージに遅刻する設定自体が、かなり強引なストーリーに思えます。そのことによって、手を怪我しているギターの萠がステージで“独唱”して時間稼ぎをするわけです。どうも山下監督は、こうしたストーリー展開のメインではない“枝葉”の部分で演出を楽しんでいるような気がしてなりません。

そのような“ポイント外し”の脱力的な作品世界が、山下監督の持ち味かもしれませんが、それを気に入るかどうかは観客次第です。最近発表されている作品も、かなり高い評価を得ている印象があります。それなりに映画を見られている方には、受けとめられやすい世界なのかもしれません。私がその世界を好きかどうかは、あえて明言はしません。

(2005年、監督・脚本/山下敦弘、脚本/向井康介・宮下和雅子、撮影/池内義浩、音楽/ジェームス・イハ)
 


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