続きです。
前回
今回は普通鉄道との技術的な違いについて解説します。
まずシステムについて。
普通鉄道と異なりダイヤや時刻表の類はありません。全て工場の都合により走ります。
また、高炉は24時間365日体制で稼働しますので終電や始発の概念もありません。
運転者は工場勤務者と同じく交代制で勤務しています。
鉄道の運行に関しては鉄鋼メーカー本体ではなく、子会社やグループ会社の物流部門が担当しているところが多いようです。
例えば高炉の場合はトーピードカーが満タンになった時点で連結しスタートします。
また工場や製品の都合で行き先の変更や一時的な留置なども発生します。
そのため信号所によるポイント操作では対応できず、運転者がポイントを操作して行き先に向かう方法が取られます。
またそれらの都合からATS等の保安装置は無く、低速であるため運転者の目視や無線でのやり取りで他列車との衝突を防止しています。
分岐(対向)ポイントについてはこのような転換スイッチを走行中に身を乗り出して操作することで切り替える事ができます。
また合流(背向)ポイントに対しては手前に設けられたスイッチを車輪で踏むことで、踏まれた方に開通するようになっています。
分岐器には表示灯が着いており、夜間でもどちらに開通しているのか一目で分かるようになっています。
似ていますが入替信号ではありません。
また故障時はレバーにより手動で転換することができます。
(上記3枚 峰製作所ホームページより)
次に車両の説明から、
機関車についてです。
上記の設備類を操作したり頻繁な連結・解放、折り返しを行うため運転者は腕を出したりすぐに降車する必要があります。
そのため機関車・貨車は低い位置に乗車する仕様となっており、操作を容易にしています。
また、低い運転台には運転するための操作部はなく、運転者がリモコンを身につけて遠隔操作により走行します。
神戸製鋼所のディーゼル機関車
(withnewsより)
運転時の乗車姿勢の例
肩紐にリモコンを掛けて手で操作しています。
(神戸新聞NEXTより)
また前回でも触れましたが貨車にブレーキが無いため、ブレーキホースは装備されずに機関車の単独ブレーキにより減速します。
高温物の運搬のために架線を張ることができず、基本的にディーゼル機関車により運転されています。(くろがね線は完成品輸送のため例外)
最近では電気式DLやハイブリッドDLも登場しています。機関車の製造は基本的に鉄道車両製造メーカーや保線車両製造メーカーが製鉄所向けに設計して製造しています。
こちらのページの下の方でテレコン操縦形として紹介されているものが製鉄所向けになります。
リモコン運転の利点としては、工場間輸送が主なため貨車を連結して引き出した後途中でスイッチバックして貨車を先頭に次の工程へ配車します。
そのため運転は機関車乗車時もリモコン運転がメインとなります。故障時に備えて車上から運転できる装置もあるようです。
貨車についてです。
重量物運搬のため普通鉄道に比べて車軸が多く、軸重を軽減しています。
途中スイッチバック後は推進運転にて次の工場へ向かいます。そのため貨車に電話ボックス状のゴンドラがついており、ここからリモコンでの操作で運転できます。
トーピードカーについてはWikipediaに記事がありますので参考にしていただけたらと思います。
貨車を先頭にリモコン操作で走行するスラグ鍋車。
ゴンドラ内に運転者が乗車しています。
(千葉県立中央博物館PDFより)
https://www.chiba-muse.or.jp/SCIENCE/files/1518491068713/simple/058.pdf
連結器は普通鉄道と同じ自動連結器ですが、位置が高くなっている事が多いようです。
軌条については重量列車が走るためレールも新幹線クラスの重レール、枕木も鉄枕木が多く使用されていたりと普通鉄道より頑丈になっています。
軌間については製鉄所により様々ですが、過去に国鉄線と接続していた場所は狭軌であったり、独立している場所は標準軌やそれ以上の広軌が主流のようです。
鉄製枕木の交換作業
(日鉄テックスエンジホームページより)
また構内には踏切も多く、工場内という事もあり警報ではなく音楽踏切となっている事が多いです。
場所によっては工業用水や河川、海岸を跨ぐため橋梁も存在します。
JFE千葉地区の航空写真
踏切と橋梁が隣接しています。
(Googleマップより)
以上となります。またお伝え出来ることがあったら追記していきます。