乗れない鉄道 製鉄所の専用鉄道について解説① | IWASOK綜合車輌

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皆さまは製鉄所内に専用鉄道が走っていることはご存知でしょうか?


今回は製鉄所の鉄道についての役割や仕組みを鉄道趣味的な視点から解説いたします。


鉄鋼関係に詳しい方からすると拙い点や余計な点もあるかと思いますが、鉄道趣味者に分かりやすい解説を目的としています。


まず、鉄道好きな方に有名なのは日本製鉄八幡地区と戸畑地区を結ぶ「くろがね線」でしょう。


最近YouTubeで取り上げられたり、敷地外を走行することもあって知名度もあります。最近では4軸機関車として最重量の新車が導入された事でも話題です。

(くろがね線 Wikipediaより)


しかしこちらの路線、敷地外を走行する事や電化されている事、完成された製品を輸送している事など、一般的な製鉄所の鉄道とはかなり離れ、普通鉄道に近い特殊な部類でありますので今回の構内鉄道の解説では割愛させていただきます。

ちなみに新型車両もディーゼル化された事で、電気機関車の引退後は非電化になる事が予想されます。


まず構内鉄道の目的ですが、簡単に言うと製鉄所を一般の工場と見立てると、ベルトコンベアの代わりに鉄道車両を用いている製造ラインと言えます。


主に黄色◯した部分で使われます。

(ダイアモンドオンラインより 一部編集)


製鉄所での製造工程は高温・溶融物・大量等の理由で一般のベルトコンベアやパイプラインが使えない場面が出てきます。そこで鉄道車両を使うことで解決し、また貨車上での一時的な貯蔵も可能です。


それでは分類ですが、製鉄所構内では主に溶融物を運ぶ「溶銑」ラインと鋳造後の半製品を運ぶ「鋼片」ラインに分かれています。

溶銑ラインは高炉を持つ製鉄所には必須ですが、鋼片ラインはトラック輸送でも代用できるため無い製鉄所もあります。

また、溶銑ラインで使われる貨車はかなりの特殊形状や特殊装備ですが、鋼片ラインの貨車は普通鉄道の無蓋車に近い親しみのある雰囲気が特徴です。


溶銑を運ぶトーピードカー

(日本製鉄Xより)


スラブ(鋳造後の鉄板状の半製品)を運ぶ鋼片台車

(東海バネホームページより)


それでは溶銑ラインの概要です。


製鉄所の目玉設備である高炉は、簡単に言うと自然から取れた鉄鉱石にコークス(石炭)と石灰を入れて高温の酸素を吹きつけることで銑鉄(鉄の原料)と高炉スラグ(余りの鉱物)に分けて排出します。


高炉の光景

(日本経済新聞より)


鉄道の解説なので詳しくはお調べいただけるとありがたいですが、主に銑鉄(溶けた状態を溶銑)と高炉スラグを生産しています。



高炉の下には線路が敷かれ、その下でトーピードカーやスラグ台車(鍋車)で注いでいます。

左から3つ目のトーピードカーに注がれている様子です。

(日本製鉄Xより)


溶銑は必ずトーピードカーに注ぎ次工程へ運ばれますが、スラグについては高炉で低温まで処理できる設備もあるため常に注がれているわけではありません。その設備のメンテナンス時などで処理できない時は鍋状のスラグ貨車に注ぎ次工程へ運びます。


上の写真の右側には待機しているスラグ貨車が見えます。


不純物であるスラグを運ぶスラグ鍋車


(JFEウエストテクノロジー株式会社ホームページより)


スラグを放流する様子

もちろん自然環境に捨てている訳ではなく構内の処理する専用場に流し、冷却してから再利用します。

主に舗装の材料になるようです。

(ねとらぼ より)


また、トーピードカーの次の行き先である転炉においてもスラグが発生するので、同じように運搬されて処理します。


トーピードカー・鍋車とも炉体を回転させ中身を排出できる仕組みとなっており、ここが普通鉄道のタンク車等には無い特殊構造となっています。


また自重も車両により異なりますが100t〜300t程と桁違いの重量となり、溶銑も概ね同量入るため1両あたり600t近くになる事があります。

これを最大2両運搬する事ができるハイパワーの機関車で運搬しますが貨車にはブレーキが付いていません。よって機関車の自弁のみで減速させ、留置時は毎回歯止めを使用します。そのため速度は出せません。

貨車にブレーキが付いていないのは連結解放が頻繁に行われる事と、基本的な運行は1人のオペレーターで完結するためブレーキホースの付け外し作業を省略するためです。


概ねこの様な流れの中に鉄道が活用されています。高炉の下の工程へ流しています。



続いて鋼片ラインの説明ですが、ここは製鉄所ごとに違う形態が取られている事が多いと思います。鉄鋼メーカーもトーピードカーを広報対象としているため情報がほとんど出回りませんが、一般的には連続鋳造されたスラブ・ブルーム等を熱い状態のまま次の加工工場(熱延・厚板・線材)等へ運んだりスラブのまま貯蔵、出荷する施設への運搬に使われています。


スラブを輸送する様子

(日本製鉄YouTubeより)


次回は普通鉄道との技術的な違いについてお話できればと思います。


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