新鮮胚移植の有用性 | 不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

大阪府東大阪市にあるIVF大阪クリニックは不妊治療専門クリニックです。「心と身体を癒す医療」をテーマとしています。

 生殖医療の世界では凍結胚移植が優位に立っています。

 クリニックによっては全症例(全胚凍結)について新鮮胚移植をおこなわないところもあります。

 何故、全症例について新鮮胚移植をおこなわないのか理由が分かりません。

 もちろん、日本産科婦人科学会の妊娠統計では、凍結胚移植の妊娠率が新鮮胚移植の妊娠率より10%以上高いということは知っています。でも、皆様にも知っていただきたいのは、凍結胚移植の妊娠率は胚移植当たりの妊娠率ですが、新鮮胚移植の場合は同じ妊娠率でも採卵当たりの妊娠率となります。当然、凍結胚移植の方が妊娠率は高くなります。

 

 例えを挙げてみます。

 凍結融解胚移植の場合は、何個かある凍結胚の中から良い胚を融解して胚移植に用います。

 ですから戻す胚も良好胚となります。ただ、この良い胚を得るために数回以上採卵している場合もあります。

 しかし、妊娠率は胚移植当たりですから、採卵を3回実施して得られた胚の中から1個を移植して妊娠すれば、胚移植1回に1回の妊娠ですから、妊娠率は100%となります。でも、3回の採卵で得られた胚からであれば、採卵当たりの妊娠率は33%(3回の採卵で1回の妊娠)となります。

 

 新鮮胚移植の場合は、採卵してできた胚を戻します。胚のグレードにかかわらず戻すことになります。

 また、妊娠率は胚移植当たりでもありますが、採卵当たりと同じになります。3回採卵を行い、3回目の胚移植で妊娠した場合、妊娠率は33%となります。もし、この3回分を凍結しておき、1回の胚移植で妊娠すれば凍結胚移植では1回の移植なので胚移植当たりの妊娠率は100%となります。

(採卵当たり妊娠率は33%、凍結しておいて1個戻せば移植当たりの妊娠率は100%となります)

 

 このように、計算上はどうしても凍結胚移植の妊娠率が高くなります。

 

 胚の凍結は、もともと胚移植の後に残った胚を保存するために開発された技術です。食べ物と同じです。

 食べた後に残れば、もったいないので凍結をして次回に使おう、ということです。

 新鮮で使えるのに、わざわざ、最初から凍結する必要はないと思います。いくら凍結の害は小さいとは言え、新鮮には及びません。

 

 現実的な治療法として大切なのは、患者様の病態に応じて、新鮮胚移植と凍結胚移植の使い分けだと思っています。

 私は、治療の基本は新鮮胚移植と考えています。とくに、胚の質があまり良くない患者様には、新鮮胚移植が必要です。

 

 不妊治療、みんな同じではなく、患者様の病態に応じた個別化が必要です。