健康な女性の「卵子凍結」増加:NETニュース | 不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

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大阪府東大阪市にあるIVF大阪クリニックは不妊治療専門クリニックです。「心と身体を癒す医療」をテーマとしています。

 「健康な女性の「卵子凍結」増加、体外受精行う医療機関の3割で実施…自治体や企業の助成が後押し」とのNET記事が出ました。社会的卵子凍結が増加しています。とくに東京で増えています。

 

 記事の内容は以下のようなものです。(原文のまま)

 卵子凍結 将来の妊娠・出産に備えて健康な女性が卵子を保存しておく「卵子凍結」について、読売新聞が体外受精を行う医療機関を対象に調査したところ、3割が「実施している」と回答した。

 このうち半数近くが2020年以降に開始しており、自治体や企業による費用助成制度などで関心や需要が高まり、実施施設が増加したことがうかがえる。

 すぐに妊娠・出産する予定がない女性が、卵子の老化で妊娠しにくくなることを懸念して行う卵子凍結は、「社会的適応」の卵子凍結と呼ばれる。

 放射線や抗がん剤のがん治療で妊娠できなくなる恐れがある人などが行う「医学的適応」の卵子凍結とは区別される。

 いずれも公的医療保険は適用されない。

 読売新聞は、体外受精の実施施設として日本産科婦人科学会に登録された617施設に、1月時点の状況を尋ねた。

 卵子凍結については、188施設から回答を得た。

 社会的適応の卵子凍結を行っていたのは60施設(32%)、医学的適応のみを行っていたのは57施設(30%)だった。いずれも行っていなかったのは71施設(38%)だった。

 社会的適応の卵子凍結を行っている施設での開始年は、半数近い29施設が20年以降で、最多は21年と23年の各10施設だった。

 これまでの累計で、凍結は計8168件、使用されたのは857件、出産に至ったのは95件だった。

 以上の記事です。

 

 社会的卵子凍結(自費診療です、保険は使えません)は当院でも実施しています。やや増加傾向にはありますが、関東のように「採卵件数の何10%が社会的卵子凍結」というようには増えていません。

 東京都の助成金が、私に言わせれば無節操に卵子凍結を増加させている、と考えています。

 なぜ私が卵子凍結をあまり推奨しないかという理由は、記事の最後にもありますように、857件でその卵子が使われ出産に至ったのは95件(11%)だけなのです。卵子凍結した人の10人に1人しか出産できないのです。

 きっと、使われた方は比較的若い方だと思います。それでもこの成績です。

 卵子凍結では約15個の卵子で一人のお子さんが誕生すると言われています。ですから、ある程度以上の年齢になれば、そもそも成熟卵子15個以上を凍結すること自体が、かなり大変だと思われます。

 

 卵子凍結、医学的卵子凍結が必要な場合は仕方ありませんが、そうでなければできるだけ通常の妊娠、もしくは不妊治療での妊娠を目指されることをお薦めします。健康保険も使えますから。

 

 医学的卵子凍結(がん生殖と呼ばれる)は当院では無料でやっていますが、社会的卵子凍結は自費診療となりますから、どこでも100万円近いお金が掛かります。それでいて結果が約束されているわけではありません。