子宮移植の臨床応用申請(慶応大学) | 不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

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 慶応大学の子宮移植チームが子宮移植の臨床応用を慶應義塾大学の倫理委員会に申請し、来年中には3例の実施を予定しているとのニュースがありました。

 私は子宮移植そのものには、もう既に世界で行われていますから、絶対反対という訳ではありません。ただ、日本で実施OKとするには反対です。子宮移植そのものにではなく、着床前診断にも未だに制限を掛けているのに、そのはるか先を行く技術にOKを出すのは整合性に欠けると思います。

 何故なら、現在PGT-Aは2回の体外受精失敗か、2回の流産がなければ実施できません。もし子宮移植が行われたとすれば、移植した子宮にPGT-Aをしていない胚を移植するのでしょうか。移植子宮に流産のリスクを高める訳にはいきません。子宮がない方に胚移植するのですから、流産歴や体外受精胚移植歴があるわけがないのです。貴重な患者様ですからPGT-A正常胚を移植するのが常識です。現在のPGT-Aの制限では子宮移植の患者様であってもPGT-Aはできないはずです。もし、例外ということで実施をOKとすれば、制限そのものの意味が問われることになります。子宮移植を受けていなくとも、患者様は全員貴重な症例なのですから。

 私が言いたいのは、子宮移植の可否を審議するなら、PGT-Aを先ず全面解禁にすべきです。そうしてから子宮移植を審議すべきです。慶應義塾大学の倫理委員会は着床前診断を承認しなかったのですから、もし子宮移植が承認されれば、倫理委員会の基準がいったい何なのか、そして倫理審査の必要性すら疑いたくなります。

 私は、ずっとPGT-Aの無条件実施、PGT-Mについてもその技術評価が可能な施設では無条件実施だと思っています。それは患者様の医療を受ける権利だからです。

 

 子宮移植には3回の手術が必要です。子宮提供者から子宮を取り出す手術、提供された子宮を移植する手術、そして出産後は移植した子宮を摘出する手術、が必要となります。もちろんPGT-Aは無条件に必須だと思います。

 これほど大変な技術をOKとするなら、その前提としてPGT-Aを無条件解放すべきだと思います。そしてPGT-Aを保険適用にすべきです。みなさまはどう思われるでしょうか。