議会制民主主義の危機です。
防府市議会は直接請求により市長が提案した「防府市議会の議員の定数を定める条例中改正」、いわゆる“議員半減”の条例改正案を継続審議としたそうです。
夕方のニュースでは、その理由について「市民団体から議員半減に反対する請願も出されていて、理由などを聴取する必要もある」ことなどを挙げています。
昨年、制定された議会基本条例では、
『第9条 議会は、政策提言に反映させるため、懇談会など市民等との多様な意見交換の場を設けるものとします。
2 議会は、市民等から寄せられた請願や陳情を市民による政策提言と位置付け、その審議においては、これらの提案者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければなりません。
3 議会は、市民の意見及び知見を審査等に反映させるため、公聴会及び参考人の制度の活用に努めるものとします。』
2 議会は、市民等から寄せられた請願や陳情を市民による政策提言と位置付け、その審議においては、これらの提案者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければなりません。
3 議会は、市民の意見及び知見を審査等に反映させるため、公聴会及び参考人の制度の活用に努めるものとします。』
と定めています。
請願の提出者を招致して意見を聞くことは、当然のことです。
しかし、松浦市長はこの議会の決定に対し、「民意を弄んでいる」などとして、「住民投票を発議する」と発言しました。
松浦市長にとって、市民からの請願も気に入らなければ「民意」ではないようで、ご自分と同じ意見だけを「民意」と呼ぶようですね。
私が住民投票という制度自体に反対だということはこの際置いておきます。
その上で、市長の「住民投票に付す」という発言には大きく二つの問題があるのではないか。
まず1点。
議会軽視、若しくは議会無視であること。
議会はまだ結論を出していません。
市民団体らの意見を聞き、判断するために継続審査としたと言っているのです。
唯一の団体意思の決定機関である議会の決定を待たずに住民に直接判断を委ねるとは、議会制民主主義の否定です。
許せることではありません。
2点目。
そもそも住民投票に付すことが可能なのかということです。
防府市住民投票条例は、第1条でその目的について定めていますが、
『第一条 この条例は、地方自治の本旨に基づき、市政運営上の重要事項について、市民の意思を問う住民投票の制度を設け、これによって示された市民の意思を市政に反映し、もって市民の福祉の向上を図るとともに、市民と行政との協働によるまちづくりを推進することを目的とする。』
としています。
この“市政運営上の重要事項”とは何なのかは、第2条に定めてあり、
『第二条
この条例において「市政運営上の重要事項」とは、市及び市民全体に重大な影響を及ぼす事案であって、市民に直接その意思を問う必要があると認められるものをいう。ただし、次に掲げる事項を除く。 一 市の権限に属さない事項。ただし、市の意思として明確に表示しようとする場合は、この限りでない。
二 法令の規定に基づき住民投票を行うことができる事項
三 専ら特定の市民又は地域にのみ関係する事項
四 市の組織、人事又は財務に関する事項
五 前各号に掲げるもののほか、住民投票に付することが適当でないと明らかに認められる事項』
としています。
議会は『市の組織』にあたらないのでしょうか。
だとすると、これを住民投票に付すことは出来ないのではないか。
いずれにしても、市議会議員選挙は来年の11月。
まだ2年近くもあるのに、2ヶ月後の3月議会での議会の結論を待てないというのは、どういう理由なのでしょう。
邪推かもしれませんが、県議選に関係があるのではと勘繰ってしまいます。
住民投票条例では、成立要件について、
『一の事案について投票した者の総数が当該住民投票の投票日における投票資格者名簿に登録されている者の数の二分の一に満たないときは、成立しないものとする。この場合においては、開票作業その他の作業は行わない。』
としています。
今回の直接請求のための署名運動では、阿部会長は当初、『有権者の過半数の署名を集める』『5万人分の署名を集める』と豪語しておられたと記憶しています。
結果、集まったのは、とても過半数に満たない約3万5千人分でした。
少ないとは言えませんが、住民投票を行ったとして、有権者の過半数が投票に来られるかどうかは分かりません。
しかし、県議選と同時に行えばどうか。
県議選の投票率は約60%なので、十分過半数の投票が期待できます。
もし、私の“邪推”があたっているのならば、住民投票を成立させたいという都合によって、議会を無視し、更には請願を行った市民の意見もないがしろにすることになります。
住民の団体意思を決定する唯一の機関であり、市長の独裁・暴走を止める役目を担う議会を構成する議員の定数を政局に利用するなどあってはならないことです。
念のため、申し上げておきますが、私は既に市議会議員ではありませんし、来る選挙の結果がどうであれ、次回の市議会議員選挙には出馬しません。
ですから、これは一人の市民としての意見であり、議員の都合はまるで関係ない立場です。
更に言っておくと、おそらく防府市議会議員の中で、次に私が臨む選挙で私を支援する方はおられないでしょうから、自分の選挙の利害など全く関係ありません。
純粋に一市民として意見であります。
追記:この記事の投稿後にコメントチェックをしていたら、住民投票条例の規定について同様のご指摘があることに気が付きました。さすがです。
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