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資金繰りの現実



解体事業を始めて10年。

ここまで紆余曲折がありながらも、なんとか毎日を過ごさせてもらっている。


ただ、現実には「事業のリアル」というものがある。


決算が終われば、当然のように消費税や法人税の支払いがやってくる。

さらに解体工事の業界特有の事情として、お客様の支払いが建築ローン扱いになるケースがある。

その場合、工事完了から半年後にしか振り込まれない。


今回はそれが複数重なり、事業として資金ショートが発生してしまった。


消費税に至っては、利益の倍以上の請求が来るという現実。

「どうにかしないといけない」──そう思いながら走っていた矢先に、奇跡のような出来事が起きた。





お客様からの一本の連絡



現在施工中の中規模解体工事のお客様から、

「工事中ではあるが、支払いをさせて欲しい」という連絡をいただいた。


このタイミングで、それも大きな現場。

本当にありがたく、心底助かるお話だった。


しかし、その後に続いた言葉に胸を打たれた。


「実は契約者である父が末期の癌で、支払いを先に済ませたくて…」


その瞬間、恐ろしいほどの涙があふれた。





感情の渦と“自責思考”



従業員、下請さん、業者さんへの支払いを滞りなく進められる。

事業としてはありがたいこと。


でも同時に、お世話になっているお客様が大変な状況にあるという現実が突き刺さった。


「こういう流れを作ってしまったのは自分の未熟さでもある」

そう思った瞬間、苛立ちや悔しさが込み上げ、涙が止まらなかった。


30代から徹底的に訓練してきた“自責思考”。

すべての結果は、自分の責任。

逃げずにそう受け止めることが、自分の選んだ生き方だ。





祈りと使命



お施主様が建て替えをして、

新しい家を見届けられることを心から祈る。


その祈りとともに、

自分にできる最低限のこと──

「工事を最後まで安全に進め、確実に納める」

それを果たすのが、今の自分の使命だと思う。


事業をやっていると、こういう奇跡のようなことが日々起きる。

そしてそのたびに、

人の想いの重さに触れ、仕事の意味を問い直される。


「自分は何のために解体をやっているのか」

「この仕事を通じて誰を守れるのか」


その答えは、まだ途上かもしれない。

でも、こうした瞬間があるからこそ、

この道を歩み続けようと決意できる。