私が一年間に紹介した本を、勝手に表彰してしまおうというこの企画。


あくまでも読んだ本についてであり、その年に出版されたというわけではないのであしからず。


では早速。



インパクト賞:『御手洗潔対シャーロック・ホームズ』

タイトルを見た瞬間の破壊力は圧巻。それでいて内容もタイトル負けしていない面白さ。


トリック賞:『星降り山荘の殺人』

「解らない」というより「騙された」という感じ。解らなかった作品はほとんどすべてだが、騙されたと感じたのはこれだけだった。


期待はずれ賞:『神様のパズル』

この小説の求める理解は俺には無理。




年間最優秀賞:『撓田村事件~iの遠近法的倒錯~』

全体を通した読み応えと、総合力は断トツ。誰にでも自信を持ってお勧めできる一冊。


山奥の屋敷に十年ぶりに現れた『二人の長男』。そこに居合わせた人物の詳細な記録を元に、進藤啓作は事件の真実を紡いでいく。


アンバランス。それがこの作品を読んだ第一印象である。


解説等々で触れられているが、この作品は横溝正史的であるらしい。私は横溝をほとんど読んだことが無いのでなんとも言いがたい。しかし、大仰でおどろおどろしい描写、今やどんな古風な家に言ってもお目にかかれないであろう言い回しなどは、横溝的時代とでも言うべき雰囲気をかもし出している。一方で、ノートパソコンや携帯電話が現れるなど、この作品は現代劇である。

また、そんな中で行われるトリックは、非常に大胆で見応えがある。一方で、トリックそのものがパズル的で、雰囲気からすこし浮いて見える。

この作品での描写は横溝作品で唯一読んだ『夜歩く』と比べても過剰なほどで、その中に突然現代の最新機器が登場するのだから、読んでいて面食らってしまう。解説では精一杯好意的に解釈していたが、解説で書かれたことが作者の意図だとすれば、失敗とは言わないがこれを成功とするには抵抗がある。

また、大胆なトリックではあるが、トリックメインであるならばもう少し伏線が欲しい。パズルのピースがはまっていくような、あの感覚が読んでいて少し乏しい。一方、幻想的というか雰囲気を重視するのであれば、仕掛けをもう少し一点に集約してしまったほうが良かった気がする。


これらの点から、やはり少しバランスが悪いというか、印象がややぼやけてしまった。しかし、内容はやはりかなり練りこまれていて、読み応えもある。次回作に期待というのが妥当な評価ではないか、というのが個人的な感想である。

フェアリィと呼ばれる惑星で未知の地球外生命ジャムと戦うフェアリィ空軍。そこに所属する高性能戦闘機『雪風』とそのパイロット深井零を中心に、人間性や機械と人間の関係を問うSF短編集。


SFはありふれてはいるが難しい分野である。
この作品では、敢えて表に出る設定を主題に関わる部分以外曖昧にすることで、より作品の主題に視点が収束し、非常に読みやすい作品に仕上がっていると思う。
考えること、理解しなければいけないことを出来る限り少なくしながら、主題そのものは大きくはっきりと読者へ訴えてくる。その点で、非常に印象的な作品だといえるだろう。

一方で、主題から外れる部分の設定が甘い=物語全体は描ききられていないということであり、やや物足りない印象を受けるかもしれない。

多彩な伏線であっと驚くラストを演出する伊坂作品の中では、このチルドレンはやや大人しめの作品であるかもしれない。


しかし、それは短編一つ一つを読んだ場合であって、全編通したときにはやはり伊坂氏らしい物語構成である。


作者本人が「短編集のフリをした長編」というように、短編一つ一つを読んでも面白いが、やはり全編通して読んだときこそ、この作品の真価が発揮されるとおもう。是非、全編一気に読んでいただきたい。




どこかホッとする事件の詰め合わせである。

評価:★★★☆☆


日本の競馬場でもお馴染みのフランス人ジョッキー、オリビエ・ペリエ氏の自叙伝。


やや挑戦的なタイトルにも思えるが、中身は明るいペリエ騎手の性格を反映してか、とてもサービス精神に富んでいて、読んでいて飽きない。


ペリエ氏の出生からジョッキーとしての考え方、日本の競馬に対する鋭い指摘まで、多岐にわたる内容のそれぞれにペリエ騎手の性格というかそういったものがにじみ出ていて、非常に面白かった。


翻訳もペリエ騎手の専属マネージャーさんがやっていて、柔らかく噛み砕かれた表現はお互いの信頼関係が無ければ出来なかったんじゃなかろうかとも思う。


なんにせよ、読んでそんはしない。ただ、競馬を知っている人向けに書かれているところもあり、まったく競馬に縁の無い人が読むには、少し難しいかも。