戦国時代研究の第一人者として名高い小和田哲男氏の著作。


戦国時代に織田信長が安土城を築くまで、日本の城は土の城であった。戦国時代に大きく発展した日本の築城技術を追いながら、城の役割や性質、構造について解説している。


世界遺産にまでなった江戸の城とくらべて、地味で林やブッシュに覆われた、何も無い土で出来た戦国の城。その城が実は、ダイナミックな歴史の物語を語りかけてくれる。そんなフィールドワークの面白さを教えてくれる、そんな一冊である。

評価★★☆☆☆


警視庁捜査一課の姫川玲子警部補を中心に、猟奇殺人事件の真相を追う警察小説。


以前に『笑う警官』を読んだときにも思ったことだが、僕には警察小説は向かないようだ。

僕がよく読むのは新本格以降の推理作家が中心だが、それらの作家の作品は仕掛けを重視し、ときに非現実的な代物や考え方、状況、キャラクターが次から次へと現れる。それを楽しむ。

一方、警察小説というのは『警察』という強力な現実がバックにある分、非現実感に乏しい。だから驚かない。


驚きに乏しいにも関わらず、『警察』という犯罪を扱うセクションを題材にしている分、どうしてもミステリーとして期待してしまう。それがギャップを生み、いまいち面白いと思えないのである。


作品単体で言うと、シリーズの一作目ということもあってか、登場人物紹介のような印象を受ける。

衝撃的な真相と謳ってはいるものの、ミステリー慣れしているせいか、さほど衝撃を受けた覚えはない。

キャラクターにしても、やはり新本格派の個性を通り過ぎて非現実的な輩に比べると、やはりインパクトは薄い。


なんにしても、僕とは相性の悪い一冊であった。

この本は、ゲームのプレイレポートである。


プレイレポートというのは、シュミレーションゲームなどで、自分のプレイがどのような経過をたどったのかを文章や画像、動画などで他人にも見ることができるようにしたもののことであるが、この本では雑誌に連載された『ハーツオブアイアン2』というゲームのレポートを一冊の本にまとめている。


『ハーツオブアイアン2』というゲームは、北欧スウェーデンの会社が作ったコンピューター・ストラテジー・ゲームで、プレイヤーは世界百二十の国々の一つを操り、来るべき第二次世界大戦の荒波に挑んでいくという内容だ。ヨーロッパ版信長の野望とでも言おうか。


そして、このプレイレポート集には、その『ハーツオブアイアン2』を使って、トンでも歴史を作り出してしまおうとしたプレイ結果の数々が収められている。 例を上げれば、第二次世界大戦においてドイツ軍によって踏み潰されたポーランド。第二次世界大戦の始まりと同時に終わってしまったこの国が生き残る道は本当になかったのかを検証した、『ポーランドは滅びず、我らある限り』


‘ヘタリア’とまで酷評され、敵に「そのままにしておいたほうがいい」とまで言われてしまった国イタリアは本当に役に立つことは出来ないのかを検証した『世界は我々を軸にして回る』 など歴史好きなら思わずにやりとしてしまう内容が盛りだくさんである。


書き手の技量、そして何よりゲームそのものの面白さが相まって、読み終わったときにはゲーム屋へ走らざるを得ないだろう。 ゲームを知らない人にも、的確な注釈と洒落の聞いた文章で読み物としても面白い。


歴史好き、ゲーム好き必読の一冊である。

評価:★★★★☆


猫丸先輩シリーズの文庫化二作目。

日常の謎といわれる、一般には事件と呼ばれない、しかし生活のすぐ隣にある不思議を、憶測と状況証拠だけで解き明かしていく猫丸先輩の活躍を描く。


この作品の優れている所は、猫丸先輩のキャラクターとしっかりとした謎解きの二本柱である。


タイトルにも全面に押し出され、柔らかな表紙イラストにもあるように、猫丸先輩というキャラクターこそがこの作品の肝である。怪しく、優しく、親しみやすく、そして変。まさに名探偵のキャラクターとしては申し分ない。彼の時に丸々三ページにも及ぶ長口上も、不思議とすらすら読めてしまう。


しかし、そんなキャラクターに覆い隠されることなく、しっかりと存在感を示すのが事件の謎である。

シリアスなミステリーにも負けない、推理ロジック。物証が無いにもかかわらず、しっかりと説得力があり、「おおなるほど!」と思わせてしまうあたりはさすがである。


キャラ萌えするもよし、猫丸先輩との知恵比べを楽しむもよし。どんな風にも楽しめることこそが、この作品の魅力といえるだろう。

評価:★★★★☆


臨床犯罪学者火村英生が難事件に挑む国名シリーズの第七弾。

以前、『ペルシャ猫の謎』を紹介したが、こちらも同じく短編集である。


『ペルシャ猫~』では番外編的な話も含み、まさに短編集という内容であったが、今回は収録四編と少なく、逆に一作一作のボリュームが増して読み応えがある。

火村教授の活躍と、謎解きの醍醐味を存分に味わえる仕上がりだ。


一作目がダイイングメッセージ

二作目が首無し死体

三作目が密室

四作目が推理ロジック


どれも王道なテーマであり、それを直球勝負でぶつけてくるあたりに、作者の特徴が見て取れるだろう。

推理小説らしい、推理小説。普段本を読まない人でも、スッとイメージできる名探偵の活躍を、是非堪能してほしい。