山奥の屋敷に十年ぶりに現れた『二人の長男』。そこに居合わせた人物の詳細な記録を元に、進藤啓作は事件の真実を紡いでいく。
アンバランス。それがこの作品を読んだ第一印象である。
解説等々で触れられているが、この作品は横溝正史的であるらしい。私は横溝をほとんど読んだことが無いのでなんとも言いがたい。しかし、大仰でおどろおどろしい描写、今やどんな古風な家に言ってもお目にかかれないであろう言い回しなどは、横溝的時代とでも言うべき雰囲気をかもし出している。一方で、ノートパソコンや携帯電話が現れるなど、この作品は現代劇である。
また、そんな中で行われるトリックは、非常に大胆で見応えがある。一方で、トリックそのものがパズル的で、雰囲気からすこし浮いて見える。
この作品での描写は横溝作品で唯一読んだ『夜歩く』と比べても過剰なほどで、その中に突然現代の最新機器が登場するのだから、読んでいて面食らってしまう。解説では精一杯好意的に解釈していたが、解説で書かれたことが作者の意図だとすれば、失敗とは言わないがこれを成功とするには抵抗がある。
また、大胆なトリックではあるが、トリックメインであるならばもう少し伏線が欲しい。パズルのピースがはまっていくような、あの感覚が読んでいて少し乏しい。一方、幻想的というか雰囲気を重視するのであれば、仕掛けをもう少し一点に集約してしまったほうが良かった気がする。
これらの点から、やはり少しバランスが悪いというか、印象がややぼやけてしまった。しかし、内容はやはりかなり練りこまれていて、読み応えもある。次回作に期待というのが妥当な評価ではないか、というのが個人的な感想である。