昨年のクリスマスの日。東京都江東区の集合住宅で高齢男性2人の遺体が発見された。亡くなったのは72歳と66歳の兄弟だった。兄の体重が30キロ台、弟20キロ台しかなかったそうだ。
料金滞納で電気・ガスが止められ、水道も止められる寸前だった。兄弟とも無年金で無職で無収入だった。にも拘らず、この2人が江東区の福祉事務所に生活保護の相談に行かなかったこと、を宇都宮氏は問題視する。
この問題が発覚したとき、江東区生活保護・福祉担当の職員が「江東区に手落ちはなかった」とコメントしている。宇都宮氏は「このコメントは非常に今の行政のあり方を示している」と語る。「自分たちが命を守らなきゃいけない区の住民が亡くなったことについて、手を指し延べられなかったことが残念だ、とかいう言葉が聞けるかと思ったら、そうじゃなかった。」
「今、孤独死も問題になっているが、誰の支援もなくて亡くなっていくというのが日本の社会なんですね。こういう冷たい行政では都民の命を守れないですね。」
「今、日本で生活保護を利用している人は(保護を必要とする人)10人のうち2人か3人くらいだが、生活保護水準の人であればだれでも利用する権利があります。憲法25条の生存権を具体化したのが生活保護だが、生活保護について十分な教育を与えられていない、十分な情報も与えられていない、それに日本では(受給者への)バッシングがあり偏見が横行している。それで困窮していも(生活保護に)辿り着かない人がいます。」
それ故、行政は福祉を受け身ではなく、日本国民としての権利である生活保護を誰でも使えるよう積極的に働き掛けることが都知事の使命、と宇都宮氏は考えている。
●新型コロナ禍と日本の福祉政策を問う
では、宇都宮氏は新型コロナ禍の下での日本政府、東京都の福祉政策をどう捉えているのだろう。
「日本社会も東京都も、貧困や格差が非常に拡大しているなかで、非正規労働者やワーキングプア―の人たちが新型コロナの直撃を受けている。だからコロナ禍のほかに経済的しわ寄せを受けて住まいを失ったり、自ら命を失うことが発生している。」
「直接には感染症対策だが、背景的には貧困と格差の問題にしっかり取り組まなくてはいけない。国も都も検査体制(の遅れ)、病院や保健所を減らしてきたことが問われなければいけない。マスクや防護服の不足など日本の医療体制はドイツなどと比べて貧弱ですね。」
こうした基本認識に立って、大胆な予算組み換えの意向を示す。
「福祉や都民の生活や暮らしに予算をこれまで以上にシフトするという意味では今がチャンスではないかと思う。国の予算の使い方も、保健所が減らされたり病院が統廃合されたり、日本は福祉予算が物凄く少ない国なんですね。これを機に、国の在り方、社会のあり方が問い直されないといけない。」
宇都宮氏は、国の方から「新しい日常」で国民の在り方を変えろと言っている点について、「それはあんた等の方だろう。国の方こそ変わらなければいけないと、私は思っている」と語った。(この時、会場から拍手が起こった。)