「今の現場には人も足りていないし業務が非効率になっている。システム化することでこれが改善できるはずだからどうにかして欲しい」というような要望を受けることは未だによくあります。
未だにというのは、システム化をすれば状況が改善されて自分たちの仕事が格段に楽になるという状況を思い浮かべているということです。
しかし、実際には改善はされるかもしれませんが、自分たちの仕事が楽になるのかといったら必ずしもそうではなかったりします。
システム化すると自分たちの首を絞める現状
システム化ということに対して妙な期待感を抱くのもわかるのですが、必ずしもそうすることで幸せになるわけでもなかったりします。
ある申請の承認フローがアナログな紙の押印で回っていたとして、それが電子承認システムを入れたからといって実際のところ業務が効率化されるわけでも業務量が減るわけでもなかったりしますし、そこ実行コストに見合ったことができているのかといわれれば疑問がある点も多々出てきます。
紙がなくなるのでエコになる!とか、状況がリアルタイムに見れて便利!!とか、電子化ってカッコいい!!!ってレベルの話はあるのかもしれませんけどね。
が、紙のアナログな業務を見ていると「未だに紙で申請とかありえないよね」みたいな話がでるんですけど、システム化したところでやってることはむしろ退化してないか?って思ったりもするわけです。
例えば、紙の申請書に対してめくら判を押すのは昔からよくありますが、システム化された状況だと似たようなところで申請の一括承認機能なんてものがあったりして、それってボタン1つで行われる作業としてめくら判より酷いんじゃないかって思ったり、「LINEで既読無視されたー。ひどーい」とか言うのと「PCとイーモバ持って出張行ったのに申請の承認してくれなんてひどーい」って基本同義だとは思うんですよね。
話がいきなり飛んだわけですが、冒頭の会話に戻すとこういった幻想を抱く背景には、人手が足りない状況の中、今の業務の一部でも自動化することで自分たちの手を煩わせているものを取り除きたいという切実な想いがあるのでしょう。
しかし、よくよく考えたらわかるように単に今の業務をシステム化したところでその業務がなくなるわけではありません。
作業は効率化されるかもしれませんが、その仕事が根本的になくなるわけではないわけです。
むしろ手が空いたところで別の業務量が増えるかもしれませんし、サービスを始めることでよりよいものにブラッシュアップをしていく終わりなき運用が始まります。
冒頭での言葉の意味を深読みすると「自分たちの業務をシステム化してそれが全自動で回るように一緒に運用して欲しい」と聞こえてしまうわけで、それって単に自分たちの手を煩わせているものをシステム部門に押し付けたいという風にも受け取れてしまいます(卑屈に見えますけど)。
ビジネスプロセスの整備の一環でそれを受注することはあるかもしれませんが、システム部門にとっては厄介な運用が増えるだけですし、これをやりだすと全社の業務をシステム部門が担わなければならないわけで、本来はそういった目的の組織ではないでしょうから、しっかりとそのシステムの業務運用をしてもらう体制が必要になってきます。
ですから、システム化することで今の業務スタイルというものは大きく変わってきてそれは今までのアナログな世界から脱却させてくれ大きな進歩をもたらすかもしれませんが、そもそも仕事自体が無くなるわけではありませんし、その進歩ゆえに運用者を窮屈にすることもあるわけです。
実はアナログなシステム運用の裏側
システムが全てを解決してくれることもあります。
ただし、金があれば。
これだけIT化が進み、インフラの維持コストが低下している状況でそんなに金をかけなくてもできるはずだという意見は正しいのですが、それでもできることは限定されます。
全てが綺麗に片付くわけではないということです。
昔、テレビ録画で芸能人の名前を入れておけばその人が出てくる番組を自動で予約してくれるという機能があって凄いと思ったのですが、その裏側はセンターで何百人もの人が全ての番組をチェックしてデータを流し込んでいると聞いたことがあります。
これまた昔の知り合いから聞いたサービスで、人物の写真をメールに添付して送るとその人の似顔絵が返送されるシステムを作ったと聞いてすげー!って思ったんですが、実は送られてきた写真をインド人が高速で似顔絵を描いていると聞いて爆笑した記憶があります。
あるシステムにおいてデータの登録・修正など補正する機能があるにも関わらず、そのデータ量があまりに多いがためにシステム部門にどうにか一括で登録できないかという依頼を受けることはよくあります。
まぁ、何で一括登録や補正機能を付けていないんだという話もあるんですが、要件聞いていたらそんな機能は初期登録時ぐらいしか想定されなくて、そういったところはシステム部門で何とかデータを流し込んだりするので、作るだけ無駄と判断されるわけです。
そういったところを記憶していたのかどうかはわかりませんが、機能外である大量のデータ補正などをシステム部門に頼まれたところで、実は大して手間はかからなかったりもするのです。
1件、1件データをコピーしながら登録していく作業に変わって、システム部門の人間がInsert/Update文を作ってたりもして、それって担当者がやるべき仕事を押し付けられていることに変わりは無かったりするわけです。
まぁ、全てがそうではないでしょうけどやっぱり何でもかんでもシステム化というのは難しく、やろうとしても莫大なお金がかかったりするので、人がまかなえるところはまかなうしかないというのが現状なわけです。
「人を使うのが一番安い」って言うブラックな発言を聞いたこともありますが、時と場合によってはそれは正解にはなってしまいます。
システム化の提案書を作るときはよく、松竹梅の案を作ったりするわけですが、たいていの場合は松のプランなんて選ぼうともしなかったりして、「そこは運用でカバーします」と言われたりして自身で「人を使うのが一番安い(自分でどうにかします)」ってことを暗に認めていたりもします。
こういったことってどんなシステムであれ必ず発生しますので、冒頭の全自動で仕事が楽になって助かるぞーという思いは満たされなかったりするわけです。
まとめ
現状ある業務サービスがシステム化されていようといまいと、それを運用していくという工数は最低限降りかかってきます。
それがなくなる魔法を作るには、それなりの投資を経てなるだけ自動化された目的のシステムを作るか、これまたお金のかかる話ではありますがアウトソースをするか、それが難しければ受け入れるかさもなくばそのサービスを捨て去るという判断が必要です。
皮肉にも、今の非効率な業務が嫌だからシステム化しようとしても、それがなくなるわけではなくむしろ逆で真っ向とその業務と向き合わざるを得ない状況に追い込まれたりもします。
ですから、そのシステム化されたサービスを継続して運用していく覚悟が当然必要になってくるわけです。
結局のところシステム化という施策は単に自動化するかどうかという話ではなく、そのサービスの質をあげよりよいものに改善していくためにあります。
そういったところが話しの中で見えてこないと、システム部門の人間としても少し斜に構えて話を聞いてしまうわけです。