- 悩む力 (集英社新書 444C)/姜尚中
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人は考える生き物だとはよく言いますが、その考えるゆえに悩みというのもまた人に付きまとう問題です。
私自身はかなり楽観的な考え方で、大きな問題があっても寝たら忘れる(またはある程度気分が落ち着く)ような都合のいい性格をしているのですが、それでも悩みがないかというとそうではありませんし、将来に対しては常に漠然とした不安を抱いて生きていたりもします。
この本は、悩み多き現代において、その悩みの本質と対処を文豪の夏目漱石と社会学者のマックス・ウェーバーの著書を手がかりに考察しています。
著者は明治維新のころを生きた2人の時代と、現代とが似たような状況にあり、その2人のおかれた立場と考えを元に現代の悩みを紐解こうとしていて、例えば有名な夏目漱石の「ぼっちゃん」などの物語の奥底に秘められた心情を、現代の状況と対比させていて面白く読めました。
目次
序章 「いまを生きる」悩み 第一章 「私」とは何者か 第二章 世の中全て「金」なのか 第三章 「知ってるつもり」じゃないか 第四章 「青春」は美しいか 第五章 「信じる者」は救われるか 第六章 何のために「働く」のか 第七章 「変わらぬ愛」はあるか 第八章 なぜ死んではいけないのか 終章 老いて「最強」たれ
こう見ると悩みと一口に言ってもいろんな種類の悩みがあるものだと改めて感じさせられたのですが、どの章でも悩みの意義を考えさせられます。
「第三章 「知ってるつもり」じゃないか」では、インターネットなどにより簡単に情報が引き出せる世の中で、うわべだけの知識を身に付けて本質を知らない人が多いという筆者の喚起には、自分も胸が痛くなりました。
私たちは、簡単に情報を引き出せ、そのうわべだけの知識を身に付けることで、考えることを放棄してしまい、悩んだときの対処法というのを知らずに生きているのかもしれません。
また、高度に効率化する現代においては、人が仕事をする意味さえも奪われていきます。
マニュアル化された仕事は、それが自分でなくともできる状況になっていたり、職場で自分がそこにいる理由を見つけられないという人も多いのかもしれません。
悩む意味というのは人それぞれですから、そこに答えを見つけるのは本人しかないと思います。
ただ、悩むことというのは誰しもあることだが、意味のないことのように捉えられがちの考え方を変えさせてくれる本です。
少なくとも悩むことは当然のことであり、その悩むことの意義を見つけ出してくれる一冊だと感じました。