英検1級を圧倒したこの一冊【29】Bait and Switch | ひとときのときのひと

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そんな人間が、ためになる言葉を発信します。
だいたい毎日。



まずは英語から。

 ここでは、英検1級1発合格術にこだわらず「ためになる英語」学習に関して、役立つ本を案内していきます。

 

 

 29冊目は「Bait and Switch」Barbara Eharenrehch

です。

 

 この本は、翻訳版(※本稿最終行に掲載)が出ていますが、英語版で読むことをおすすめします。

 

 

 書かれているのは、アメリカのと言っても20年から30年ほど前ですが、ホワイトカラーの失業から再就職まで、外側からではなく、内側からノンフィクションスタイルで描いてみようとした力作です。

 

 「描いてみよう」とわざわざ断ったには、訳があります。

 

 というのも、もともと著者のBarbara Eharenrehch(女性です)は、別の作品でアメリカのブルーカラーをとりまく過酷な状況を描いています。

 

 しかし、次作となったこの本では、自分が知名度の高い作家であることから、わざわざ(形式的にですが)離婚までしてつまり姓名若干も変えたうえで、一般企業の「広報」部員として採用されるかされないか、試していくという企てをしているからです。

 

 そして、その出だしから延々といかに自分が「再就職業界」の「カモ」として扱われているか、具体的には再就職コンサルタントからカラーコーディネーターから、教会関係者に至るまで、本当は窮地から救ってくれるはずなのに、まともな扱いをされず、いかに金づるにされたか、いかになめられた扱いをされたかを暴露していきます。

 

 そして、それがゆえに「Bait and Switch」(おとり商法)を本著書の題名にしているのです。

 

 本ブログ筆者は、この失業そして再就職を何回か経験しています。「カモ」扱いとまではいいませんが、非常に理解に苦しむ扱いを受けた苦い記憶は、少なからずあります。

 

 そんなことは、再就職をしてしまった後には、忘れてしまえばいいのです。しかし、この本が手元にあり、時折読み返す度に、憤怒とも言っていいような感情が沸き起こるのをおさえるのに苦労します。

 

 と言った意味で、この本は、まさに「圧倒する」パワーに満ちた本ではありました。

 

 以下、おすすめのポイントを箇条書きにしてみます。

 

1.著者の突拍子もない行動が、再就職の大変さや苦痛を中和してくれる。

 

 本作の著者Barbara Eharenrehchは、多くの企業に自薦のメールや履歴書を送付したり、就職のための行動を続けていきますが、面接にすらたどり着けません。

 

 そんなとき、一計を案じます。

 

 すなわち再就職の相談に乗ってくれた(とは言っても当然有料ですが)コンサルタントの事務所に押しかけていきます。いま、はやりの凸です。

 

 そして、自分をこの零細個人コンサルタント事務所の「広報」担当として雇ってくれないか直談判をするわけです。

 

 その結果がどうなったかについては、ここにご紹介するのは勿体なさすぎるので、本書でぜひ確かめていただきたいと思います。それまでの暗い筆致をつかのま遠くに追いやるような、とぼけたストーリーになっていることは、請け合います。

 

2.格調高い単語で綴られているので、語彙力向上に役立つ。

 本の筋そのものは、上記に記した形ですすんでいくので、複雑な背景知識は、全く必要ありません。

 

 それよりも、単語のひとつひとつに注意を向けてほしいと思います。

 

 たとえば、freedom とするようなところを、leewayとかnausea(吐き気、英検1級以上) を、さらにレベルの高いqueasinessを使ったりしているので、語彙力の強化にもなります。

 

 なお、本ブログ筆者は、この「圧倒」してくれた1冊の著者の姿勢に対して全面的に肯定的な賛辞を贈るつもりはありません。そのことも付記しておきたいと思います。

 

 社会の歪み告発するのは、たしかにこういった学者なり作家の仕事なのかもしれません。

 

 しかし、失業したものは失業したなりに、「運」であろうが、「偶然」であろうが、いい意味の「誤解」であろうが、それらを利用してでも、生活の糧を得るために生きながらえるほかありません。

 

 少なくとも本ブログ筆者はそうしてきましたし、こういった学者の「告発」や「啓発」にうんうんとうなづくだけで終わり、「政治が悪いんだ、政治が、社会が悪いんだ、社会が」では、終わらせるべきではないと考えます

 

 今ある社会に対する改革や改善は一旦置いておいて、働き手は自分でなんとかしていくしかないのです。そこは、揺るがせたくはありません。

 

 以上、英語の参考書には載っていないかもしれませんが、あなたの英語学習の参考になれば幸いに思います。

 

 

※本書の邦訳版

 

 

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