英検1級を圧倒したこの一冊【30】Hillbily Elegy | ひとときのときのひと

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だいたい毎日。



まずは英語から。

 ここでは、英検1級1発合格術にこだわらず「ためになる英語」学習に関して、役立つ本を案内していきます。

 

 

 30冊目は「Hillbily Elegy」J.D.Vanceです。

 

 この本も、翻訳版(※本稿最終行に掲載)が出ていますが、英語版で読むことをおすすめします。

 

 もともとこの本が出版されたのは、2016年ごろでした。全米でベストセラーとなったのですが、それもなぜかと言えば、ここに米国の「ラスト・ベルト(さび付いた工業地帯)において置き去りにされた白人労働者ののすさんだ生活が詳細にノンフィクションとして描かれていたからです。

 

 そして、この置き去りにされた白人層の支持を集めて、予想を覆すような形でアメリカの新大統領(2024年のいまから見ると前大統領)が選ばれたわけなのです。

 

 自分自身としては、アメリカンドリームの対極ともいえる、そのすさんだ世界を一度覗いてみてみようという好奇心から、読んでみました。

 

 確かにこの本では、そんな暗く陰惨な世界がこれでもかこれでもかと言うほどに描かれてはいます。

 

 まず、著者の幼年時代に父と母は、実質離婚しています。看護師である母親の男関係のだらしなさは置くとしても、くすり関係に手を伸ばし、官憲から尿検査を要請されると、息子、つまり著者に尿を出させ、それを自分の代わりに提出しようとするとか、まわりの友達で高校をドロップアウトしない奴は殆どいないなどなど。

 

 ところが、実は、ここから先が予想外の展開。この著者も一緒に周りの世界とともにひたすら沈んでいくかと言うと、そうではないのです。むしろ逆なのです。

 

 祖父祖母の家でどうにか平穏な生活を送り、質素ではあるけれどもどうにか、高校までは卒業し、そして、そこからは志願して軍隊に入ります。このあたりの相当厳しい訓練については事細かに書いていません。

 

 が除隊の後には、志願兵に対する公的な支援をいかし、オハイオ州立大学を卒業。さらにイェール大学ロースクールを経て、投資コンサルタントまでになってしまうのです。

 

 つまりは、この本は、一見題名で連想させるような、貧乏な集落の哀しいうらみつらみといったところに集約されるのではなく、むしろそんな環境にあっても、どうにか這い上がり、食い下がり、社会の中に居場所を見つけ出すどころか、相当なやり手にまで成長してしまう、一種のアメリカンドリームが記されているのです。

 

 その意味で、ひとつ前に紹介した「Bait and switch」とは対照的と言ってもいいくらいの位置にある本と言えます。

 

 そして、そのあたりに、もっぱら自分の不遇を社会のせいにするのではなく、どうにか前進していく生きざまに本ブログ筆者は失職と再就職を重ねてきた身として、共感します。

 

 ちなみにこの本の著者は、こんな動画で非常にわかりやすい英語とロジックで自分の信ずるところを語っていますので、一度ご覧になることをおすすめします。

 

 この本自体も、TOEIC800くらい、英検準1級の語彙力があれば、ほとんど辞書を引かずに読み通すことができます。

 

 登場人物も著者の家族が中心で、固有名詞の数の多さにあたふたすることもありません。その意味では非常に安心して読むことができます。

 

 もっともところどころ、物騒なところや目を覆いたくなるようなところも、出てはきますが。

 

 ちなみにこの本の著者は、数年前に上院議員になっています。(2024年7月15日現在、共和党副大統領候補)

 

 以上、英語の参考書には載っていないかもしれませんが、あなたの英語学習の参考になれば幸いに思います。

 

 

※本書の邦訳版

 

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