英検1級を圧倒したこの一冊【27】レンブラントの帽子 | ひとときのときのひと

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まずは英語から。

 ここでは、英検1級1発合格術にこだわらず「ためになる英語」学習に関して、役立つ本を案内していきます。

 

 

 

 

 「レンブラントの帽子」(バーナード・マラマッド)です。

 

 翻訳ものの小説なのに、なぜこの一冊が「英語学習」に役立つのか。

 

 その理由を一言で言えば、「人をきちんと見る目」を持つことがいかに困難かを教えてくれるから、ということになります。

 

 この短編小説には、最近はやりの「繊細さん」と「好人物であろうとしているようで、実は、少し鈍感な人」といった二人の中年男の間に起きる「コップの中の嵐」が描かれています。

 

 登場人物は、最初から最後までほぼこの二人だけ。幾人か「脇役」がいますが、さほど重要な働きかけをする形では出てきません。

 

 物語は、後者の「好人物であろうとして実は、少し鈍感な人」の視点で描かれているので、最後まで読んでも「繊細さん」のココロの中までは、はっきりと見えてきません。

 

 とはいえ、この二人のアメリカ人の間に起こるドラマを読み進めるうちに、読者のこのじぶんこそ、「繊細さんとは程遠い」相当の「鈍感人」ではないかと言う気がしてきてしまいます。

 

 そして、その思いの先をたどっていくと、そして英語学習に思いをはせると、たぶんこういうことになる。

 

 つまり、日本の英語学習コンテンツにありがちな、あの「自分が好人物として外国人の相手に当たれば、相手もそれなりに好反応を示してくれる」という発想が結構「鈍感な心構え」ではないかと思わせられてくるのです。

 

 たとえば「英語で外国人に道案内」と言えば「善行」と疑わないような、お人よしと言えば聞こえばいいものの、おせっかいをおせっかいと疑わない、残念な人になってしまう可能性。

 

 あるいはTOEICや英検の試験tでも(最近は変わったかもしれませんが)、助けを求めている人も助ける人も、みないい人ばかりではありませんか。

 

 「コピー機の紙が無くっている」とつぶやけば、どこからか「総務のジェーンに聞いてみて」と答えてくれる人が必ず出てくる。しかし、現実世界はそうとは限らないではありませんか。

 

 あるいは、現実世界では、道案内をしても礼も言わず立ち去る外国人に出会うことがあるのに、そういうのは「英語学習」コンテンツには、まず出てこない。

 

 そこで、このあたりの曇りがちなご自身の目を本書を読んで一度洗い流してみてはいかがでしょうかと提案している次第です。

 

 また、既にお気づきかもしれませんが、アメリカ人と言うと、日本人よりも豪放磊落(らいらく)とかあけっぴろげとかフレンドリーとかという、よくある見方も、とんでもない偏見かもしれないと思い直した方がいいかもしれないのです。それも、この小説を読めば、かなえられます。

 

 ちなみに、似たような小説としては、「うらなり」(小林信彦)があるので、こちらも紹介しておきます。

 

 

 夏目漱石作「坊ちゃん」の後日談と言った体裁の作品で、これも読んでいるうちに、やはり人に対する見方や思い込みで走りがちなコミュニケーションについて深く考えさせられます。

 

 ちなみに夏目漱石も小林信彦も英語に関しては、日本人作家の中で群を抜いて長けている(いた)ことも付け加えておきます。

 

 以上、英語の参考書には載っていないかもしれませんが、あなたの英語学習の参考になれば幸いに思います。

 

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