2020年2月2日:テリー・ギリアムのドン・キホーテ | たっくう投げ釣りと日々

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大好きな投げ釣りと、日々の忘備録です。
最近物忘れが激しいのであります。

 

 

友達と大阪へ映画を観に行ってきましたよ。

 

作品はテリー・ギリアム監督の「THE MAN WHO KILLED DON QUIXOTE」です。邦題は「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」。。。身もふたもないタイトルです。配給会社は僕のようなギリアム監督のファン以外、ほとんど集客を諦めているのがよくわかる邦題です。公開はたったの二週間だし、僕たちが観に行った日は土曜だというのに(映画館に集客が見込める土曜日だからこそ、というべきか)、上映は朝8時55分からの一回きりでした。

 

 

それでも上映してくれるだけありがたいと思わなくてはなりません。ちなみに奈良でこの映画を上映している劇場はひとつもなくて、近畿二府四県のうち奈良県だけですよ、やってないのは。和歌山だって上映しているのに。。。。こういう時は特に猛烈なライバル意識を感じますよ、和歌山県には。

(・ω・)

 

主人公のトビー役は「スターウォーズ」でカイロ・レンを演じていたアダム・ドライバーです。

<カイロ・レン=アダム・ドライバー>

 

日本にも一定の女性ファンが居るはずなので、若い女の子も結構居るのかな?と予想していましたが、結局僕みたいなオタクっぽいおっさんが中心でした。朝も早いしね。

<アダム・ドライバー演じる主人公トビー>

 

もう一人の主人公、自分をドン・キホーテだと”思い込んでいる”靴職人のハビエルをジョナサン・プライスが演じています。それほど日本ではなじみのない人ですが、主役を務めた「未来世紀ブラジル」を始め、ギリアム作品ではおなじみの役者さんで、10年程前に大英帝国勲章(CBE)を授与されている名優です。

 

<スワン総督(パイレーツオブカリビアン)=ジョナサン・プライス>

 

この方もずいぶん年を取りましたね。僕は友達に教えてもらうまで彼だとは気付きませんでした。映画ではおじいさんの役なのでメイクのせいかな?とも思ったんですが、今年でもう73歳だそうです。お年は召されましたが、活舌の良いセリフ回しは健在です。

 


<ジョナサン・プライス=ハビエル=ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ>

 

この映画、ギリアムファンのあいだでは有名な「幻の名作」なんです。なんでマボロシかというと↓

 

 

と、パンフレットに書いてあるように、この映画は構想から30年、2000年に初めてクランクインしたものの、ロケ地が洪水に遭って機材が流されたり、主演だったジャン・ロシュフォール(当時70歳)が腰痛で撮影がとん挫したり、資金難で撮影が続けられなくなったりと、とにかくありとあらゆる災難がギリアム監督を襲い、もはや完成して日の目をみることはないだろう、とされてたんですね。

 

ドン・キホーテ役も、当初ジャン・ロシュフォールでクランクイン。その後ロバート・デュバルやモンティパイソンで同僚だったマイケル・ペイリン、そしてジョン・ハート(この人も癌に侵されていることが判り撮影中止)と変わっていきます。ドン・キホーテは老優の役どころですから、何年も中断してたら、そりゃみんな死んじゃいます。

 

 

これは2000年にクラインクインしたころの写真ですね。後ろにみえるドン・キホーテはジャン・ロシュフォールです。監督も若いな(^-^)

 

トビー役は当初ジョニー・デップでしたが、トラブル続きのこの企画に(多分)愛想をつかして降板してしまいました。

 

で、完成もしていない映画を「名作」なんて言っちゃうのはファンのファンたる所以で、一向に完成しないこの企画はいつしか「伝説」になっていました。その伝説がとうとう日の目を見た訳ですが、僕が観ての感想は「最初から最後まで安定のギリアム節」でしたね。

 

「賛否両論の問題作!」なんて大いに煽られていますが、この人の映画は現実世界とファンタジーを行ったり来たりするような描写が多いので、昔からわけがわからないと思う人も多いと思います。あと「このくだり、いらねーんじゃね?」、という本筋と関係ないエピソードがいきなりぶち込まれるのも特徴で、観てる方は「何かの伏線か?」と穿った見方をするんですが、結局最後までなんもなくてほったらかし。今回もいきなりムスリムの村が出てきて、アメリカ人のトビーはムスリムだというだけで、「テロリストの村だ!逃げなきゃ!」なんて無茶苦茶なセリフを吐いていて、そこでまたドタバタが起こる(笑)。感覚的にはモンティ・パイソン時代とあんまり変わっていません。

 

パイソンズの名作コント、「スペイン宗教裁判」のオマージュかと思われるシーンも少しありますよ。

 

<モンティ・パイソンの名コント、スペイン宗教裁判。右端がテリーギリアム、役名はファング枢機卿(笑)>

 

 

もともと他のメンバーとは違ってアニメーターが本業だった人ですので映像(コント)に登場する機会は少なかったけど、映画監督として高名となったいま、メンバーの中ではもっとも多忙な日々をおくっていることでしょうね。

 

 

1940年生まれといいますから今年80歳、うちのおふくろと同い年です。長年取り組んできたドン・キホーテが完成して、これからどうするんでしょうか。心配なのは、これを一区切りとして第一線からは退かれるんじゃないかということです。先日テリー・ジョーンズが亡くなって、健在なメンバーも4人になったしね。

 

 

50代で脚本を書き始め、60歳でクランクイン、幾多の失敗を繰り返しながら去年、79歳の時に完成し公開したわけですから、とんでもない情熱とエネルギーですよ。ドン・キホーテとはテリー・ギリアム本人のことなんじゃじゃないか?なんて今は思っています。