「デジタルは安い」という話を別項に書いていますが、このことは特にビジネスでは大きな意味を持ちます。原価が安いので価格を抑えられることや、同じ価格なら利益率を高くできることなどはすぐに思いつきます。しかしそれよりもっと大きな可能性があるのが、失敗するコストを下げられる、という観点です。

 ビジネスに限りませんが、新しいことに挑戦すると失敗することがあります。というより、成功より失敗のほうが多いのが現実でしょう。そのため、会社は新しいやり方や新事業に対して慎重になり、なかなかチャレンジできない(させてもらえない)という事態が発生してしまいます。
 例として、新事業として自社直販を始めるケースで考えてみましょう。これまでは問屋経由に頼っていた製造メーカーが、新たに自社直販にチャレンジするケースです。従来なら、お店を作り、カタログを印刷し、商品を陳列し、レジを置かなければならないでしょう。商品の種類によって違うでしょうが、どんなに切り詰めても数百万円規模の初期投資が必要になるはずです。デジタルなら、そのすべてをオンラインの電子商取引(EC)システムで構築することができ、既存のサービスを積極的に利用すれば、数万円の初期投資からでも始めることができるでしょう。何と百分の一のコストです。

 失敗するコストとは、その事業が失敗した場合に会社が被る損失のことで、それが安いということは失敗しても大した損失にならず、何回失敗しても従来型でやるリスクに比べれば問題にならないということです。このことは、特に新規ビジネスの局面で顕著に効いてきます。これを分かっている企業はどんどんチャレンジができる(やらせられる)ことになり、成功までのコストと時間を一気に短縮できることになります。
 この例で、オンラインだけでなくどうしても実店舗でやりたいなら、デジタルでの成功を一里塚として最終的に実店舗で実現させるという方法もあるでしょう。その場合のデジタルでの過程は、テストマーケティングと捉えることもできるでしょう。

 失敗するコストが安いことは、人材教育の面でも大きく貢献します。若い社員に新しいチャレンジをさせやすくなり、本人のスキルやキャリアパスおよび会社の人材資産の形成にとても有利です。なにより、失敗リスクを気にして停滞するのではなく、新しいチャレンジができることで社員のモチベーションが上がることでしょう。

 

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