新編・伊勢物語 第2999段 足の爪を切りつつ浮かぶ映画のシーン 星原二郎第2999段 足の爪を切りつつ浮かぶ映画のシーン 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、令和6年8月の中旬の或る日 暑さを避けてエアコンの効きたる自宅にて過ごし 歌を 足の爪 切りて調へ 鑢かけ ひまびとわれの 午後が過ぎ行く 足の爪切りといへば、小津安二郎の映画『東京物語』の ラストシーン近く、笠智衆が尾道の妻亡きあとの自宅にて 独り静かに切りゐる場面が印象深くあれば 監督の演出の意図を理解するに及びけり。