第2851段 連作『近江の国にて』其の捌 琵琶湖の龍の化身
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、令和6年の早春
念願の近江の国へと行き
滞在したる折の連作を
令和6年4月10日発行の
その男の所属する「桃の会」の機関紙である
桃の会たよりの56号に
『近江の国にて』と題し連作15首を発表し
評価を世に問ひけり。
その捌首目の作は
琵琶湖のや 龍の化身の 女なれ
三橋節子の 遺ししものはや
この歌のモチーフとなりたるは
「昔、琵琶湖に住む龍王の娘を妻にしたる漁師は、泣き止まぬ
わが子に眼玉を与へ盲目となり琵琶湖へと帰りたる妻に無事を
知らせるために、毎夕鐘を衝いたといふ」
この伝説の民話を元に自身の癌による余命の少なさを
重ねて描きたる遺作の『三井の晩鐘』を鑑賞しての感慨の作なり。
眼の無き龍のいと哀れなり。