第2145段 命ある亀石の伝説
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、令和4年3月15日付けの
立春知立短歌会の季刊発行の歌誌『立春』275号に
【明日香の古代の石の物語】と題し
連作15首を発表し
評価を世に問ひけり。
その7首目の作は
亀石は 命あるらし 南より
西へ向く時 泥沼に化すと
この歌の心は明日香村のほぼ中央の甘樫丘遺跡に近くにある
摩訶不思議なる形の巨石遺構にて顔とも覚ゆる部分が
亀の顔に似てゐることから通称「亀石」と呼ばれる。
これまた不思議なる伝承によると、通常はこの亀石
南に向きて鎮座してゐるのだが、西に向きを変へる事が
あるのだと言ひ伝へられて、更には向きを変へた時には
必ず大雨が降りあたり一帯は泥濘の沼へと化すと。
亀だけに日照りが続けば沼の水が恋しくなるのであらうが
不思議なる伝承を慮り見続けけり。