第2066段 越前味真野 其の伍
昔、男ありけり。今も男あり。
その男 令和3年12月15日付けの
立春知立短歌会の季刊発行の歌誌『立春』274号に
【越前味真野】と題し
連作16首を発表し
評価を世に問ひけり。
その5首目の作は
宅守の 嘆かひの声 今もなほ
聴こえ来るがに 味真野の風
中臣宅守の罪とは何かを万葉集では語ってはいない。
その罪状には数々の説があれども
未だに原因究明には至っていない。
而して、中流であれば重罪ではないことは明らかにして
流刑地にありてもある程度の自由は保障されてゐて
黄昏時ともなれば恋しき狭野弟上娘子のことを想ひ
名を呼びつつ味真野の一帯をさまよひ歩いたであらうと
想像しての作なり。