第2008段 秋の菓の贈答歌
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、令和3年10月の或る日
奈良の明日香村へと行きけり。
帰りに奈良の特産品である柿を
道沿ひの直売所にて買ひ求めけり。
して同じマンションに住む友人へと届けけり。
然れども不在なれば玄関ドアに
柿を入れたる袋を置きて去りけり。
してlineにて次の歌を
玄関に 秋の菓のもの 置きててあり
悪戯好きの ゴンの仕業か
とのみ送りけり。
「ゴン」とは新美南吉の不朽の名作童話である
『ごんぎつね』の主人公のことなり。
而して数時間後、lineの返事に
玄関に 奈良の名物 柿あまた
好物にして 有り難く受く
と届きけり。
同じマンションの友人とはまた歌の仲間にて
贈答歌の粋なる関係とぞ覚えけり。