新編・伊勢物語 第1865段 コロナ禍を知らず逝きたる人 星原二郎第1865段 コロナ禍を知らず逝きたる人 昔、男ありけり。今も男あり。 その男 令和3年5月の中旬となり その男の惚れたる女人の母親 認知症を患ひて或る老人保健施設にゐしが 逝去の報に接し歌を コロナ禍の 日々にあれども 知らぬは幸 太平楽の 痴呆の母は と詠み、最晩年のこの一年間少々を 世間知らずに過ごせし事は 逆に良かりし事とぞ覚えけり。