第千四百八十七段 鳥の歌【小鳥の一羽】
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、令和二年三月十五日発行の
立春知立短歌会の季刊誌の第270号に
『鳥の歌』と題して連作十九首を発表し
評価を世に問ひけり。
其の一首目の作は
己ひとり 満足に世話 出来ぬゆゑ
小鳥の一羽 飼へるはずなし
歌の心
演歌歌手の森進一氏はヒット曲に恵まれて
押しも押されぬ地位を築き上げたる後の
或るインタビューに応へて曰く
「また売れない不遇の時代が来るのではと
想像すると、怖くて猫の子一匹 飼ふことが出来ない」
と言ひたること、記憶に在りての作なり。
猫の子一匹か 小鳥の一羽の違ひはあれど
通底する想ひありて
その男に即し、うまれたる作なり。