新編・伊勢物語 第千四百五十五段 慣用句の歌【俎板の上の鯉】 星原二郎第千四百五十五段 慣用句の歌【俎板の上の鯉】 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、令和二年の或る月の或る日 数年前の交通事故での怪我により入院 手術の時の心境を思ひ出し 歌を 俎板の 上なる鯉の 心地して 今は静かに 手術待ちをり と詠みけり。 而して、「俎板の鯉」の比喩 「都会のオアシス」「ビルの谷間」 などなどと同じく言ひ古されて 手垢の付きたる言ひ方とも思ひしが かかる彼の日の状況に於いては 共感いただけるにやとぞ覚えけり。