第千二百九十段 四万温泉の宿にて千葉産の浅蜊を誉める
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、令和元年八月の或る日
惚れたる女ありければ伴ひて
上州は四万温泉へと行きけり。
数ある四万温泉の宿の中でも
「やまぐち館」は料理の質の高さにて有名なり。
而して、二人して温泉を楽しみ
二人の夜を過ごし
朝食の時となり朝食会場へと行き
和食の朝食にてカレイの一夜干し
温泉玉子、納豆、サラダなどなどいただき
その中で味噌汁の浅蜊の美味なるに驚き
仲居を通し板前に産地を問ひ
歌を
四万に来て 千葉の浅蜊の 味噌汁の
美味なるを誉め 板前にいふ
と詠み 美味なるは誉め
美味ならざるは指摘することが
板前と客とのあるべき関係とぞ覚ゆ。
その男の住む三河も三河湾あり。
三河湾は浅蜊の産地にして幼少期より食せしが
縄文時代より産地の千葉も
三河に甲乙つけがたきとぞと知りけり。