第千百二十三段 餃子屋の看板
昔、男ありけり。今も男あり。
その男 平成三十一年の二月
或る街へと所要により出掛け
所要を無事に済ませて時計を見遣れば昼近く
空腹を覚え見渡せば近くに一軒の餃子屋の看板
目に入りて歌を
餃子屋が 営餃中とは 的を得て
面白しと思ひ 暖簾をくぐる
と詠み 久し振りに餃子を肴に昼間より
ビールを飲みけり。
而してその男の最上の誉め言葉である
「また来なむ」とは申さず
その男の普通の誉め言葉である「馳走であった」
と支払ひのレジにて 店員に伝へ
店を罷り出でけり。
さすればその店の【売り】の餃子の味は
推して知るべし。