新編・伊勢物語 第千百十七段 人の世の川 星原二郎第千百十七段 人の世の川 昔、男ありけり。今も男あり。 その男 平成三十一年の二月 矢作川中流域にある笹戸温泉の 「とうふや」へと行き 湯につかりつつ矢作川の 流れを眺めて 歌を 人の世の 悲しみ集め 流れゆく 川といふもの 流れつつ澄む と詠み 冬なれば水量少なく 澄みゐたる矢作川に 鴨長明の名著の「方丈記」の冒頭の一節の 行く川の流れは絶えず しかももとの水にあらず…」 を思ひ出しけり。