第千九十五段 若き日よりも
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成三十一年一月
その男の懸想人の笑顔を思ひて更に
歌に詠みて曰く
老いたりと 自が身を知れど しばしのち
若き日よりも 今のまされる
と詠みけり。
なほ此の歌は古今集 雑上の903番 藤原敏行作の
「老いぬとて などかわが身を せめぎけむ
老いずはけふに あはましものか」
を本歌としたる本歌取りなり。
本歌の現代語訳としては
「年をとったといってどうしてわが身を
恨み嘆こうか。年を取らなかったならば
今日(のこの嬉しきこと)に出会ふことが
あっただろうか」
二句目と三句目の《Si》の音韻や如何に。