新編・伊勢物語 第千八十三段 友の声の如く虎落笛を聞く 星原二郎第千八十三段 友の声の如く虎落笛を聞く 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成三十年のみ冬づく寒中の或る夜 いと激しき風の音に目覚め 歌を 糸魚川の 友はかたへに 居るごとく 小夜更けひとり 虎落笛聞く と詠み 親しき友の亡くなりて 十年を経過せしと覚ゆれば 雪解けを待ち墓参へ行かむ と願ひけり。