新編・伊勢物語 第千八十二段 稀勢の里の心の奥 星原二郎第千八十二段 稀勢の里の心の奥 昔、男ありけり。今も男あり。 その男、平成三十年の大相撲の初場所の四日目の 十六日の記者会見を見て 歌を 怪我により 元の体に 戻れぬが 原因にして 悔い深からむ と詠み 発言の「相撲人生に一片の悔いもなし」 は本音にして、また逆をも言ひたると聞きけり。 胸の大怪我を負ひ出場し得たる二度目の優勝は その後の土俵人生を棒に振る覚悟にて臨み その代償の結果の引退とぞ覚ゆ。