第九百七十七段 我が家の祖先の化粧田
昔、男ありけり。今も男あり。
その男、平成三十年の晩夏
祖父より聞きたる昔話を思ひ出しけり。
そは 今はむかし 江戸時代のこと
三河の国は安城にて裕福なる庄屋を営みけり。
その家より娘ありて、嫁に出す折には
嫁入り道具の他に、田を一枚与へ
その田より獲れたるコメを売り
化粧品を買ふのが代々の習はしにて
いつの日か、その田を「化粧田」とぞ呼びたる
と聞きたる事を思ひ出し歌を
わが祖の 化粧田いづこ 安城の
平貴の里と 聞き及べども
と詠みけり。
さて時代は下り、明治維新を経て
昭和の時代も去り、平成の世なれば
その化粧田、安城の何処にありや
調べるすべを持たず
真相は定かならねども代々伝はる話なり。